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今回は知久太郎さんのブログ『障害者の支援情報』からご寄稿いただきました。
先日、NHKの番組「あさイチ」にて“ヘルプマーク”が特集として取り上げられました。徐々に一般にも認知されてきているヘルプマークですが、一体どんな人がどんな時に使うのか、どこで入手するのか、といった詳しいことについてはまだまだ説明できる人は限られていると思います。
そこで、今回は最近話題になりつつあるヘルプマークについてまとめてみました。
ヘルプマークの発祥は、2011年の東京都議会において、「助けが必要だが外見からは分かりづらい人達に対して、何らかの支援が必要ではないか」という提案がされたことから始まります。
その後、2012年度に東京都がヘルプマークを策定し、以降、全国的な普及・啓発が進んでいます。
東京都のホームページによると、ヘルプマークとは『義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、外見から分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう、作成したマーク』とされています。
なお、2018年7月の執筆時点では、次の都道府県において導入が確認されています。北海道、青森県、秋田県、富山県、栃木県、埼玉県、東京都、神奈川県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、滋賀県、三重県、京都府、奈良県、大阪府、和歌山県、兵庫県、鳥取県、島根県、広島県、香川県、徳島県、愛媛県、高知県、宮崎県、佐賀県、長崎県(全29都道府県、順不同)
ヘルプマークの対象者としては、
・義足や人工関節を使用している方
・内部障害や難病の方
・妊娠初期の方
など、援助や配慮を必要としていて、配布を希望する方々が想定されています。だからといって、身体機能等に特に基準が設けられている訳ではありません。
在庫の状況などの特別な事情がない限り、どの自治体や団体も基本的には必要とする方の申し出によってお渡しすることとしているみたいですね。
ヘルプマークの活用場面・方法について、以下では利用者の実例などを交えて紹介したいと思います。
私は多発性硬化症という難病を患っています。見た目は何も異常がありません。だから、一見して病気を理解してもらうことはできません。ヘルプマークの存在を知ったのは、自分が難病になってからでした。これがあれば、優先座席に座る罪悪感が少しは無くなるのになぁと思っていました。その頃はまだ、私が住んでいたところではヘルプマークは配布されていませんでした。
私は、しんどくない時もあります。そんな時はヘルプマークをカバンにしまっています。しんどくて優先座席に座っている時だけ、ヘルプマークをつけています。お年寄りの方とかに譲れないのが申し訳ないので。
ヘルプマークは、カバンにしまっているだけでも安心感があります。私に何かあった時、これを見てもらえば、「この人、普通に見えるけど何かあるんだな」と救急隊員の人には思ってもらえるかも、という安心感です。
見た目で病気をわかってもらえない人の拠り所になるよう、ヘルプマークが、ずっと、もっと、普及することを願います。
出典:東京都福祉保健局「ヘルプマーク・ヘルプカードエピソード集」
見た目だけでは分からない障害を抱えた人たちにとって、自身の状態をさりげなく周囲に伝えるためにはとても有用なツールですね。また、着脱が容易なものにすることによって、体の具合が良い時と悪い時に波があるような障害・病気を抱えた人にも使いやすいようになっています。
そして、こうした障害のある人たちがより困ってしまう場面が、特に災害時の避難所においてです。2年前に熊本で震度7の地震に襲われた発達障害の当事者グループによると、「集団が苦手で避難所に入れない」「行列に並んで食事をもらうことができない」など、周囲からは理解されにくい困り事や苦労があったとのことです。
メンバーの一人、自閉スペクトラム症で「聴覚過敏」がある宮田麻美さんがいちばん苦しんだのは、避難所の音。100人近い人が身を寄せていたため、宮田さんにとって耐えがたい音があふれていました。静かな場所で落ち着きたいと思いましたが、わがままに聞こえるのではないかと思い、つらさを訴えることはできなかったと言います。
出典:NHK「あさイチ~知っておきたい!ヘルプマークと見えない障害~(2018.7.11)」
災害時において、見えない障害や辛さについて伝える方法がなければ、生死につながる問題にも発展しかねません。このような場面においても積極的にヘルプマークを活用していくことについて、よりいっそう行政等の啓発が必要ですね。
ヘルプマークを導入している自治体では、各都府県の配布場所でストラップタイプの「ヘルプマーク」を無料で配布しています。
ヘルプマークの受取りを希望するためには、お住まいの都府県の配布場所を直接訪れて申し出る必要があります。ただし原則として、郵便等による送付は行われていないようです。
この時、書類の記入や、障害手帳の提示などの特別の申請は必要なく、マタニティマークと同様に、ご家族等の代理人による受取りも可能とする自治体がほとんどです。
また、お住まいの自治体では導入されておらず、入手が困難な方には「自作」という方法があります。
ただし、ヘルプマークの使用に関しての誤解を防止し、適切に作成・活用ができるよう、東京都が「ヘルプマーク作成・活用ガイドライン*1 」を策定していますので、こちらを参照して作成に取り組んでください。
*1:「ヘルプマーク作成・活用ガイドライン」『東京都福祉保健局』
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/helpmarkforcompany/images/download/guideline5_Ver.5.pdf
しかしながら、本格的にこのガイドラインに沿って作成するとなると、かなりの手間がかかり、余計な負担がかかってしまうとも思われます。
そこで、ヘルプマークの目的をより簡易かつ効果的に満たすことのできる、『ヘルプカード』についても紹介したいと思います。
※あわせて知りたいヘルプカード
ヘルプカードとは、ヘルプマークの入った緊急連絡先や必要な支援内容などが記載されたカードで、障害のある方などが災害時や日常生活の中で困った時に、周囲に自己の障害への理解や支援を求めるためのものです。
このヘルプカードについては、「全国ヘルプマーク普及ネットワーク」という団体が様式を掲載していて、ホームページ上に動画まで公開しているため、とても分かりやすく、手間もかからず作ることができます。以下のリンクからアクセスできます。
「各種ダウンロード」『全国ヘルプマーク普及ネットワーク・全国ヘルプマーク オリパラプロジェクト』
https://www.skart-tokyo.com/p/23/
目が不自由な方、耳が不自由な方、筆談が必要な方をはじめ、認知症行方不明対策や迷子対策など、様々な場面やハンデに応じた様式が掲載されています。
ヘルプマークは、これまで周囲に自分の情報を伝えきれなかった方々とっては、とてもメリットが多いように思えます。しかしながら、少なからず批判的な意見や問題視する声もあります。
目に見えない精神病は理解が少ないから付けたら反対にからかわれたり仮病だと言われるのがこわい…。
外見からは分からない分、若い人であったり、体格の良い男性などが付けていたら、周囲にこうした印象を与えてしまうのかも知れません。ヘルプマーク自体の啓発によって、解決が期待される問題ですね。
メルカリでヘルプマークが販売されているのを見る度に腑煮え繰り返るくらい怒りが湧いてきます。
原則、どの自治体も郵送配布していないことから生じた問題でもあります。配布する自治体と物理的な距離がある方にとっては、一つの入手方法かも知れませんが、無料のものを金儲けの道具にすることは許され難いことです。
今までヘルプマーク付けていたけど、付けるのやめる。あんなにアナウンサーに「誰でも付けていいんです!!」って強調されたら、本当に困った時に、本当に助けが必要な時に手を差し伸べてもらえないと思う。
冒頭のNHKの番組において、「ちょっと体調が悪いようなときでも、障害や病気の有無に関わらず誰でも活用できる」といった趣旨の発言があり、それを受けての声です。
番組での発言の趣旨や気持ちは分かる部分もありますが、この「誰でも」という考え方については、批判的な声も散見されるのが事実です。
最近、ヘルプマークについてはインターネットやテレビなどの各種メディアで取り上げられることが多くなってきました。
また、障害の分野においては、障害者差別解消法のさらなる取組や、障害者の就労・スポーツ・芸術活動、大人の発達障害など、社会的に認知が進み始めている問題が多くあります。
一つの問題の解決に対し、何か一つの物事を作成したり、立ち上げたりするだけで事が済むというケースはほとんどありません。
ヘルプカードについても、今のカタチが万能というわけではなく、今後も当事者や支援者、一般の方々など幅広い考え方を集約しつつ、改善を重ねながらより良いものにしていくという姿勢が大切だと思います。
執筆: この記事は知久太郎さんのブログ『障害者の支援情報』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2019年4月1日時点のものです。