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電気グルーヴのピエール瀧が12日、麻薬及び向精神薬取締法違反の容疑で逮捕された。コカインを使用したと見られており、尿検査で陽性反応が出たという。本人は容疑を認めている。
このニュースに際し、一部の訓練された電気ファンたちは意外な反応を見せている。
瀧は静岡県出身の51歳。1991年に石野卓球、CMJK(脱退後に砂原良徳が加入)との3人組テクノユニット・電気グルーヴとしてメジャーデビューを果たす(砂原は99年脱退)。瀧の担当パートは「MC」や「DJ」などではなく、「瀧」としか言いようのない独自の方向性を確立。ステージでは自転車をこいだりカレーを食べるなどのパフォーマンスを披露し、圧倒的な異物感と存在感で人気を博した。石野や砂原の生み出すハイセンスな楽曲群のクオリティだけではなく、そのキャラクター性も大きな魅力のひとつとなっている。
その電気グルーヴは、今年がちょうど結成30周年に当たるメモリアルイヤー。イメージとは裏腹に周年イベントをきっちりこなす彼らは、1月にベストアルバムをリリースし、さらに電気グルーヴでの活動における瀧の芸名を今年限定で「ウルトラの瀧」に変更するなど、30周年を盛大に盛り上げるべく精力的に動いていた。
2000年ごろより俳優としても活動し始めた瀧は、電気グルーヴでのサブカル的側面ではなく個性派俳優としての実力が認められ、お茶の間の人気者に。映画やドラマのみならず、CMやバラエティ番組などでも活躍し、幅広い世代から愛される名バイプレイヤーとして認知されていった。現在はNHK大河ドラマ『いだてん』にも出演中だ。
その結果、一般層の認識では瀧は「俳優」ということになっている。電気ファンですら彼を「ミュージシャン」と呼ぶことには抵抗があるほどで、これは致し方ないところだろう。しかし、実際にテレビやネットなどで「俳優のピエール瀧が逮捕」といった表現が使われることに違和感を覚えたファンは少なくなかったようだ。
さらに、芸能人の逮捕劇に際してファンが発するコメントというのは「ショックです」や「まさかあの人が」といったものに終始するのが普通だ。しかし瀧のファンともなれば、これがひと味もふた味も違ってくる。
「“ウルトラの瀧”画数悪かったんじゃないの」「“帰ってきたウルトラの瀧”あると思います」「朝のワイドショーで“瀧容疑者の30年来の友人に電話で話を聞くことができました”って出てきたのが日出郎だったの、壮大なコントのようだ」といったコメントが相次ぎ、さながら大喜利大会の様相を呈している。
これまでの電気グルーヴのスタンスは、それこそ薬物で捕まる芸能人を鼻で笑うようなものだった。そういった彼らのアティテュードに触れ続けてきたファンたちも、しっかりその遺伝子を受け継いでいるのだ。
さらには、「瀧の仕事量に改めて驚かされる。これコカインのひとつでもやってないとこなせる量じゃないだろ」「逮捕されたっていうことよりも、記者会見で“申し訳ありませんでした”と頭を下げるようなダサい瀧を見るのが嫌だ」といった意見も。
通例、不祥事を起こした芸能人がいた場合、その人物の関わった作品の販売や公開、放映などは自粛される。瀧の件でもそうなった場合、超がつくほどの売れっ子だけに、その影響範囲は甚大だ。
実際、ネット上にも「『アナ雪』とか『いだてん』どうなっちゃうの?」「『しょんないTV』は?」といった心配の声が多数上がっており、静岡朝日テレビは早くも『ピエール瀧のしょんないTV』の放送休止を決断した。また今週末(3月15、16日)に開催を予定していた電気グルーヴの全国ツアー「電気グルーヴ30周年“ウルトラのツアー”」Zepp Tokyo公演の中止も発表された。
こういった処分を当然のことととらえる人も多いだろうが、疑問を投げかける層も決して少なくない。「悪いことは悪いし罰せられるべき。でも作品には関係ないだろ」という声も多く、「ピエール瀧逮捕の件、売れっ子だけにあちこちの方面で大騒ぎになってるが、これが出演者の犯罪と出演作を切り分けて扱うきっかけになってくれないものだろうか」と切実に訴えかけるコメントも見受けられた。
出演者の逮捕によって、その人物の出演作が自動的に排除される世の中は、果たして文化的に成熟していると言えるだろうか。
【関連リンク】
電気グルーヴ オフィシャルサイト
https://www.denkigroove.com/
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