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両親が離婚し、離れて暮らす父と隔週の週末に一緒に過ごす少年ジュリアン。それがあんな恐ろしいことになるなんて……。
フランスで40万人を動員したサスペンスの傑作『ジュリアン』をご紹介します。
離婚調停から始まるこの物語。母も父も11歳の息子・ジュリアンの親権を手放したくないようです。しかし、ジュリアンの陳述書が読み上げられると、そこには「あの男(父親)にはもう二度と会いたくない」という衝撃的な言葉が並んでいたのでした……。
離婚に際して感情的になっている母が何かを吹き込んだのか、あるいは本当に“もう二度と会いたくない”ような父なのか? 調停委員にも観客の我々にも判断がつきません。結果として親権は共同となり、ジュリアンは隔週の週末に父親と過ごすことになるのです。
父のこの表情よ。
この写真でお察しでしょうか、父は決して感心な親ではなかったようです。ジュリアンが父と過ごす時間のヒリヒリとした緊張感が映し出されるとき、嫌な予感は徐々に確信へと変わっていきます。疑ってごめんよジュリアン、本当に会いたくなかったんだね……。しかし父にはわが子と会う正式な権利があり、その時間は一週間おきに必ずやってくるのです。別れた夫と会うことを拒む母。ジュリアンを利用して妻と接触しようとする父。ジュリアンは母を守るために決死の嘘をつき――。
本作を手掛けたのは、これが長編初監督となるグザヴィエ・ルグラン。言葉での説明を最小限に抑え、場の空気感を生々しく切り取ることで言葉以上の情報量を描き出す手腕が見事。派手な演出は一切ないのに、並々ならぬ緊張感からスクリーンに釘付けになってしまうことでしょう。
ラストには観客の心臓を試すかのような衝撃の展開が待ち受けています。物語に幕が下りるとき、このリアリティ溢れる恐怖は自分の身近にも潜んでいるのでは?とまた背筋がぞっとするのです。いやほんと、並のホラー映画より怖いって……。
濃密なドラマを支えるのは出演陣の名演。特にジュリアンを演じた子役トーマス・ジオリアは、表情だけで複雑な感情の奥行きを表現するベテランレベルの演技を見せています。本作が映画初出演というんだからその才能が恐ろしい……。監督もお気に入りだというパーティーのシーンでは、唯一あどけない笑顔を見せているのでそちらにもぜひご注目を。めちゃくちゃかわいいですよ!
『ジュリアン』
1/25(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
監督・脚本:グザヴィエ・ルグラン
製作:アレクサンドル・ガヴラス
撮影:ナタリー・デュラン
出演:レア・ドリュッケール ドゥニ・メノーシェ トーマス・ジオリア マティルド・オネヴ
2017 年/フランス/93 分/原題:Jusqu’a la garde/カラー/5.1ch/2.39:1/日本語字幕:小路真由子
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
配給:アンプラグド
Julien-movie.com
(C) 2016 –KG Productions – France 3 Cinéma