今回はKEI ISHIKAWAさんのブログ『バイリンガルニュース』からご寄稿いただきました。


日本にスパイ防止法がない理由とは?スパイ防止法に反対する勢力は要観察!(バイリンガルニュース)


こんにちは、トロントでフリーランスマーケターをしてますKEI(@kishikawa1126)です。

https://twitter.com/kishikawa1126


「スパイ防止法という言葉自体は聞いたことあるけど、日本には無いって本当?」


はい、その通りです。日本にはいまだスパイ防止法はありません。


国家の安全保障を脅かすスパイを取り締まる法律はどこの国でも一般的です。

何か起きてから動くのではなく、未然に取り締まることこそ国民が望むことであり、当然のことなのです。

それにも関わらず日本にはスパイ罪すらなく、スパイ行為を取り締まることができないのです。



「スパイ」の定義

このブログではスパイを下記の通り定義して進めていきます。外国のために、非公然または非合法に行われる各種の情報収集、工作活動を「スパイ活動」と称し、そうした活動に従事する者を「スパイ」と定義する。


世界でのスパイ防止法


まず、国連憲章を見てみましょう。

国連憲章51条では、「自衛権」について記載しています。



第51条〔自衛権〕

この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。


自衛権とは、国際法で認められた独立国固有の権利であることが分かります。

なので、各国では防諜機関をしっかりと設け、取り締まっています。


・アメリカ:CIA・FBI

・ロシア:KGB・GRU

・イギリス:MI5・MI6 など


さらには、スパイ罪の最高刑には、死刑や無期懲役などが課せられるんです。


国家の安全を脅かすのですから、当然ですよね。


ではなぜ日本には未だにスパイ防止法が無いのでしょうか?


なぜ日本にはスパイ防止法がないの?


実は遡ること1985年に自由民主党から立案されるも廃案になった経緯があります。


この時の法案は「公務員」の守秘義務を定め、第三者へ漏洩する行為防止を目的としたものでした。


既遂行為はもちろん、未遂行為や機密事項の探知・収集、機密書類の紛失などによる漏洩なども罰則の対象に含まれました。

最高刑は他国同様に死刑または無期懲役としています。


しかし、憲法が保障する表現の自由に抵触する!として、マスコミなどから批判の対象とされたのです。

当時の野党(日本社会党・公明党・民社党・日本共産党・社会民主連合など)も猛反対。徹底して審議拒否を貫き、国会閉会に伴い廃案になってしまったのです。


しかし、前述した通り、スパイ防止法を定めているその他の国々で表現の自由、言論の自由が制約されている国があるでしょうか?

アメリカやイギリスなど、いずれもスパイ防止法が制定されていますが、同時に言論の自由も保障されています。


ここは法案内に盛り込むことで対応できるのではないでしょうか?

(法律の適用にあたっては、表現の自由~・・を侵害してはならない_等)

※ちなみに当時の原案には、その点も盛り込まれていたようです。


特定秘密保護法との違いは?


2013年、第2次安倍政権下で「特定秘密保護法」が可決されました。(2014年12月10日施行)

この時もいろいろな問題点が指摘され、結局は強行採決となった経緯があります。



特定秘密保護法とは


日本の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものを「特定秘密」として指定し、取扱者の適性評価の実施や漏えいした場合の罰則などを定めた日本の法律である

出典:ウィキペディア(特定秘密の保護に関する法律)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E5%AE%9A%E7%A7%98%E5%AF%86%E3%81%AE%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%B3%95%E5%BE%8B


平たく言えば、「特定秘密の漏洩を防ぐための法律」です。


主に「特定機密」を取り扱う公務員を処罰の対象としていますが、公務員以外でも「特定秘密」であることを知っていたうえで、不当に、または不正に取得(既遂)、取得しようとした(未遂)の場合にも処罰の対象となります。


 

「この時に反対派に回っていた党や政治家、マスメディアは要観察だと思います。


企業ですら「企業秘密」はあり、社員には「守秘義務」があるんです。

企業秘密を守らなければ、企業は存続できず、新技術も新製品すらも出すことができないですよね。


これと同じ論理で、国であっても国家機密は必ずあるべきで、それを漏洩するようなことがあれば罰せられて当然ではないでしょうか?」


 

もちろん懸念点がないわけではありません。


本来であれば国民に開示すべき重要な情報が隠蔽される可能性や、本来は機密でもない情報を機密とすることもできてしまいかねない点は否定できませんが、少なくとも国家機密は存在し、それは全国民に開示すべき情報ではないものがあるのは事実です。


こういった国家機密が漏洩されることを防止する法律に対して反対する勢力は、スパイなのか?と疑われてしまっても仕方ないと思います。

当時の反対意見も論点がぶっ飛んでズレていたり(事実無根の内容で国民の不安を煽るなど)と、議論の余地もない感じでしたね…。


また、この法律は特定秘密を「保護」することしかできないので、「スパイ行為」自体を取り締まることができる「スパイ防止法」の制定も必要とされています。


スパイ行為とは?


国家公務員でないとしても、他国の工作員にスパイにされるケースは想定できます。


2001年の同時多発テロが起きるまで、日本の原発は民間の警備員(もちろん武装なんてありません)が警戒するだけでした。


「あの原発ですよ!民間警備って(*_*)」


同時多発テロの後、警備強化となり、原子力関連施設警戒隊が設置されます。

こうしてようやく武装した警戒隊が配置されるようになるのです。


現状は民間警備ではないので、強行突破でリスクを犯してまで原発を狙ってくることは無いと思いますが、時間をかけて職員につけ込んでくることは大いに考えられます。


原発職員に限らず、新幹線、飛行機、電力会社、通信会社、なんでもいいんです。

ちょっと整備をいじれば、または設定をいじれば大惨事になりかねない、そういったところで働く人は工作員が目をつけてきます。他人事ではまったくないのです。


ちなみに、こんな事件↓もありましたが、日本では取り締まることができませんでした。

海外からは「スパイ王国」と揶揄されるのが現在の日本なのです。



ボガチョンコフ事件

ロシア連邦の情報機関であるロシア連邦軍参謀本部情報部(GRU)の工作官が、日本の海上自衛隊三佐に対してスパイ活動を行った事件


出典:ウィキペディア(ボガチョンコフ事件)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%82%AC%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%95%E4%BA%8B%E4%BB%B6


 


スパイ防止法がない今、何が問題?


自分とは無縁~なんて思われがちですが、そうでもありません。

スパイ防止法が無いが故に国益が損なわれてるとしても、他人事でしょうか?


例えば、北朝鮮を巡る今日の情勢の中、アメリカが軍事オプションを取るとします。


隣国の日本とは協力を図る必要がありますよね。

なので、トランプ大統領は作戦を日本と共有したいはずです。


ですが、日本にはスパイ防止法がない!そんなリスクを犯してまで情報開示はできん!_となってしまいかねません。

日本(または政府内)に北朝鮮の工作員がいた場合、軍事作戦が筒抜けになってしまいますからね。


つまり、国と国との信頼関係にまで波及してしまいかねないんですね。


まとめ&K’s view


あらゆる犯罪も事前に規定を決めておかなければ取り締まることはできません。

法に書いてない=合法と見なされても仕方ないのです。

それが故に「スパイ天国」などと揶揄される始末になっているんです。


スパイ防止法が日本に無いのは、的はずれな反対意見を持つマスメディアと特定の政党(政治家)が居るからでしょう。

なんなら、その中にスパイが居るからじゃないかとすら思ってしまう…


安全保障の次なる課題はスパイ防止法の早期制定ではないでしょうか。


的はずれな反対意見が出ないことを祈りつつ、国民の意識次第では議論再燃もあり得ると思います。


(©︎ 2018 KEI ISHIKAWA)


 

執筆: この記事はKEI ISHIKAWAさんのブログ『バイリンガルニュース』からご寄稿いただきました。


寄稿いただいた記事は2018年12月26日時点のものです。


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情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 日本にスパイ防止法がない理由とは?スパイ防止法に反対する勢力は要観察!(バイリンガルニュース)