今回はブログ『すくらむ』より井上伸さんの記事からご寄稿いただきました。


ZOZO前澤社長は年収100万円の貧困層より税・社会保険料が軽いのに田端氏が富裕層課税強化を批判(すくらむ)


 ZOZOの前澤友作社長のツイートです。





2016年度77億円、2017年度34億円、2018年度70億円(予定)。個人での国内における所得税や住民税などの納税額です。買い物もするけど、税金もしっかり納めております。これからももっと稼いでいっぱい買い物して、いっぱい納税します!


上記のツイートに対する藤田孝典さんのツイートです。





ついに資本家が収入総額と比較したら、課税額など大した金額でもないのに、あたかも「いっぱい納税している」と明示して社会貢献を語るようになってきた。末端の労働者はどれだけ所得が低く苦しんでいるか、少し想像してくれる人が増えるとありがたいな。


 そして、前澤社長に呼応しての田端信太郎氏(ZOZOのコミュニケーションデザイン室長)のツイートです。





貧困層のために富裕層への課税強化を!!って言うばかりの人は、発想が貧困。


 私は藤田さんと同じ意見なのですが、その理由を少し具体的に紹介しておきます。


 田端氏は課税強化を批判しているわけですが、そもそも富裕層の負担はどうなっているでしょうか? 見てみましょう。


 以下のグラフは所得税の負担率です。年所得が1億円を超えると所得税が軽くなることが分かります。なぜ年所得1億円以上になると所得税が軽くなるかというと、年所得1億円以上の人は株の売買で儲ける比率が高くなることに加えて日本は配当課税と株式譲渡益課税が分離課税で20%と主要国と比べても低いからです(※2018年1月現在でイギリス38.1%、フランス30%、ドイツ26.375%)。日本は額に汗して働くと所得税は30%近くまでになるのに、額に汗しない株による不労所得を得ると税金が安くなっていくという富裕層優遇国なのです。



 次に消費税です。以下のグラフにあるように、年収に占める消費税負担割合は、200万円未満は7.2%に対して、1,500万円以上は1.6%です。前澤社長と田端氏よりも200万円未満の貧困層が4.5倍も消費税を収めているのが客観的事実です。



 以下は消費税・所得税・社会保険料・住民税の税・社会保険料負担率を折れ線グラフにしてみたものです。



上記の折れ線グラフを積み上げグラフにしてみたものが以下です。



 上記のグラフにあるように、年所得100億円超の税・社会保険料負担率は24.0%に対して、年所得70万円~100万円以下は27.6%です。ZOZO前澤社長は100万円以下の貧困層より税・社会保険料を負担していないというのが客観的な事実です。


 それから、前澤社長はこんなツイートもしています。




この飛行機で世界中飛び回って、いろんな国のいろんな人たちに商品やサービスを提供して喜んで幸せになってもらいたいです。その結果、会社に利益が出て、それを従業員や株主やお客様とシェアして、みんなで楽しくやりたいです!


 ところが、東洋経済ONLINEの「社員と役員の年収格差が大きいトップ500社*1 」によると、ZOZO(2018年9月まではスタートトゥデイ)もしっかりランクインしていて、社員と役員の年収格差は7倍とのことです。


「東洋経済ONLINEの「社員と役員の年収格差が大きいトップ500社」2018年9月17日『東洋経済ONLINE』

https://toyokeizai.net/articles/-/237734?page=10



また、前澤社長の無邪気なツイートです。




どんでもないモノ買って、みんなでシェアしたい理由。それを見たり触ったりした人が「すげーなこれ、作る人カッコいい!」って、生産者が憧れになって、特に子供たちが「いつか僕も私もこんなの作ってみたい」って思ってくれると素敵だから。大人が「成金趣味だよ」の一言で子供たちの夢壊さないでね。


 子どもたちの夢を壊しているのは貧困であることは、繰り返し解説してきました。加えて先進主要国クラブのOECDでさえ、貧困と格差が日本経済をダメにしていると断言している*2 のです。そして、今の日本は「子どもたちが夢を見る」どころか、子どもが普通に存在すること自体が以下のように困難になっているのです。


*2:「駅前トイレで寝泊まりするトリプルワークの女子高生、100円ショップの薬用オブラートで空腹まぎらわす子ども、深刻な6人に1人の子どもの貧困を深刻化させ経済成長も損なう安倍政権」2015年8月18日『editor』

http://editor.fem.jp/blog/?p=308


◆子どもの数も割合も過去最少、教育と暮らしの貧困で「結婚・子育て」そのものが困難な日本

2018年05月05日『BLOGOS』

https://blogos.com/article/295048/?p=1


◆子どもの貧困放置は日本経済に50兆円の損失をもたらす

2016年10月5日『editor』

http://editor.fem.jp/blog/?p=2903


◆駅前トイレで寝泊まりするトリプルワークの女子高生、100円ショップの薬用オブラートで空腹まぎらわす子ども、深刻な6人に1人の子どもの貧困を深刻化させ経済成長も損なう安倍政権

2015年8月18日『editor』

http://editor.fem.jp/blog/?p=308


◆自販機の裏で暖を取り眠る子ども、車上生活のすえ座席でミイラ化し消えた子どもの声が届かない日本社会

2015年8月4日『editor』

http://editor.fem.jp/blog/?p=50


 この間のアベノミクスで貧困と格差はさらに広がっています。以下のグラフの富裕層40人の中に前澤社長も入っていますが、富裕層上位40人の金融資産は2倍増になる中で、貯蓄ゼロ世帯は401.2万世帯も増えているのです。そして前澤社長を含み富裕層上位40人の金融資産は日本の全世帯の52%(2,607万世帯)の資産と同じになっているのです。



 また、以下のように年齢階層別に見てもすべての年齢層において貧困が広がっています。



 ZOZOの前澤社長も田端氏も「貧困は自業自得*3 」などと揶揄し「貧困を自己責任」にして、子どもの夢を壊した上に日本経済そのものもダメにすることはやめてほしいと思います。そして、少なくとも貧困層や中間層と同等の税・社会保険料をきちんと負担するようにしてもらいたいと思います。(井上伸)


「田端@田端大学塾長である!さんのTweet」2017年7月27日『Twitter』

https://twitter.com/tabbata/status/890354807373873152


「井上伸」『Twitter』

https://twitter.com/inoueshin0


 

執筆: この記事はブログ『すくらむ』より井上伸さんの記事からご寄稿いただきました。


寄稿いただいた記事は2018年11月26日時点のものです。


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情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 ZOZO前澤社長は年収100万円の貧困層より税・社会保険料が軽いのに田端氏が富裕層課税強化を批判(すくらむ)