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長い歴史と豊かな文化を持ち、住環境にも観光資源にもめぐまれている滋賀県。
しかし琵琶湖やベッドタウンとしてのイメージが先行しすぎるのか、対外的にはいまひとつその魅力が伝えきれていないきらいがある。
たまにテレビで取り上げられても“琵琶湖の水止めたろか”論争や、車のナンバープレートが他県から“ゲジゲジナンバー”と呼ばれる問題など哀しいネタばかり。
おまけに近年好調だった観光面でも近隣の大阪や京都がホテルを増やしたあおりを受け、宿泊者が減少してしまっているらしい。
そりゃああんまりじゃないか……ということで滋賀の地域風土を愛してやまない僕、中将タカノリがその魅力の神髄を紹介すべく現地取材を試みた。
今回、重点的に巡ったのは滋賀県の中でも特に歴史的な地域である湖西。
まずは世界文化遺産にも登録されている天台宗総本山『比叡山延暦寺』を訪れた。
比叡山は滋賀と京都の県境に位置し、その標高は848m。ふもとからバスで山道を登ると近江盆地が一望に見渡せる。
“伝教大師”最澄によって開山したのは788年。以来、織田信長による焼き討ちなど度重なる困難を乗り越え、今なお日本仏教の母山として広い信仰をあつめている。
今この比叡山の国宝殿で“伝教大師1200年大遠忌記念”と銘打って至宝展を開催している。
信長の焼き討ちを逃れた西塔瑠璃堂の本尊薬師如来像をはじめ、ふだんは非公開の国宝、重要文化財をふくむ貴重な仏像、仏画を数多く鑑賞することができるのだ。
時代ごとの最高の名手によってなされ、幾百年の祈りを浴びてきたそれらはいずれも何とも言えない重厚さと肉感があり、かつおごそかな風格が充ち満ちている。
また単にモノを並べただけの展示会とは違い、その作品が持つ意味や美しさが最大限に引き出せるよう心を砕かれているので、仏教美術に興味がないという人にも見ごたえのある空間になっている。
この機会を逃したらもう生きているうちには見られないものが多くあるだろう。この機会にぜひ訪れてほしい。
至宝展も今だけだが、改修中の国宝・根本中堂が見られるのも今だけだ。
根本中堂とは延暦寺における総本堂。788年の開山の際に建立された一乗止観院が発展し、幾度かの焼亡と再建を経て桁行11間(37.57m)、梁間6間(23.63m)という威容を現在に伝えている。
最後に大規模な改修をおこなったのは1955年なので、今回は約60年ぶりの改修となる。
突貫でやればもっと早い期間で終えられるが、工事中も参拝とお寺としての行事を滞りなくおこなえるよう、あえて手間と時間をかけ2016年から10年間の予定で改修工事がおこなわれているということだ。
全容は見渡せないが、工事のために組まれた足場からいろんな角度で建築の細部を見ることが出来るので面白い。これまで訪れたことがある方もあらためてその魅力を感じられるのではないだろうか。
国宝殿から根本中堂と山道を歩き疲れた僕は延暦寺会館1階にある『喫茶れいほう』で一休み。
れいほうでいただいたのは飲む人の干支を梵字をあしらったその名も『梵字ラテ』
干支を僕はねずみ年なので『子』の字を抹茶ラテに書いていただいた。
抹茶のほどよい苦みがラテの優しい甘みに絶妙にマッチしてほっとする味わいだ。
ラテの種類は他にもカフェラテ、キャラメルラテがあるので、お好みの味で比叡山ならではの穏やかなひと時を満喫してほしい。
『比叡山延暦寺 伝教大師1200年大遠忌記念 至宝展』
【所在地】
滋賀県大津市坂本本町4220国宝殿
【開催日】
2018年12月2日まで
【入館料】
大人500円(400円)・中高生300円(200円)・小学生100円
※延暦寺諸堂巡拝料が別途必要となります。
大人700円(600円)・中高生500円(400円)・小学生300円
※カッコ内は20名以上の団体料金
【公式サイト】
https://www.hieizan.or.jp/
『喫茶れいほう』
【所在地】
滋賀県大津市坂本本町4220延暦寺会館1F
【営業時間】
7:00~20:00
【定休日】
年中無休
【公式サイト】
http://syukubo.jp/
駆け足で比叡山を巡ったら昼時になったので、ふもとの坂本で名物のそば屋『本家鶴喜そば』に入った。
こちらの創業はなんと享保年間。三百年間の長きにわたってここ坂本で営業し、断食修行を終えて体の弱った修行僧たちのために蕎麦を調理したりと延暦寺とも深い関わりを持つお店だ。
そばは小麦粉2割、蕎麦粉8割の二八そばで手打ち。出汁はサバ、うるめ、めじか、鰹の厚削りに1年以上寝かせた利尻昆布をあわせて上品に仕上げられており、かえしは創業以来の継ぎ足しだという。
僕がいただいたのは天ぷら、大根おろし、3種類のトッピングが楽しめる『近江結味(むすび)そば』。
爽やかな香りのそばと丁寧に調理されたトッピングの組み合わせは色とりどりの楽しい味わいだ。
薬味として当店オリジナルの『元祖ゆず七味』も絶妙なマッチングで、ボリュームのわりにあっと言う間に完食してしまった。
こちらのそばは深みがあるが一部のマニアしかわからないタイプではなく、大人から子供まで共通して好きになる一品(三品?)だと思う。坂本を訪れた方はぜひ訪れて味わってみて欲しい。
『本家鶴㐂そば』
【所在地】
滋賀県大津市坂本4-11-40
【営業時間】
10:00~18:00(L.O.17:30)
【定休日】
第3金曜日・元旦
※1月、6月は第3木・金曜日休み、8月、11月は無休
※売切れ次第 閉店
【公式サイト】
http://www.tsurukisoba.com/
坂本から琵琶湖沿いに国道161号を北上し高島市に入ると湖に浮かぶ大鳥居が目に入る。
ここは延命長寿、子授けなどのご利益ある神様として地元で絶大な信仰を集める『白鬚(しらひげ)神社』。
675年に猿田彦命(さるたひこのみこと)を祀るために建立されて以来、1300年以上この地に鎮座しているということだ。
大鳥居がいつからあるかはよくわかっていないそうだが、湖上交通や漁業が盛んだった滋賀ならではの信仰のシンボルとして人々の心のより所となってきたのではないだろうか。
現在はカメラ好きやサイクリングファンも多く訪れるスポットになっているらしい。
湖西北部を訪れる方はぜひ足をとめてこの絶景をご覧いただきたい。
『白鬚神社』
【所在地】
滋賀県高島市鵜川215番地
【公式サイト】
http://shirahigejinja.com/
高島市の北部、マキノ町には関西のスキースポットとして有名なマキノ高原スキー場ともう一つ人気の観光スポットがある。
それは『マキノピックランド』。
季節によってさまざまな果物狩りができる観光果樹園で、施設そばに設けられた全長2.4kmのメタセコイア並木もデートスポットとして多くの人が訪れる。
今回、僕はこちらでリンゴ狩りを体験させていただいた。
リンゴ園にはふじ、陸奥、ニュージョナゴールドなど「こんなに種類あったんだ!」と驚くほど多くの種類のリンゴが栽培されており、係の人にそれぞれの味のタイプを訊きながら気に入った形のものを摘んでゆく。
いくつかの種類を試食させていただいたが、一概にリンゴと言ってもたしかに味わいは多種多様。全部美味しいのでこれはもはや好みの問題だろう。
青いリンゴを見つけたので野口五郎さん気取りで自撮りしてみたけど……若い人にはわからないだろうなこのネタ。
摘んだリンゴは持って帰るのもいいが、アップルパイ作り体験に使うこともできる。
焼きあがったものは帰宅後の翌日に食べたのだが、自分で作ったという気持ちも相まってとっても美味しくいただくことができた。
『高島市マキノ農業公園 マキノピックランド』
【所在地】
滋賀県高島市マキノ町寺久保835-1
【営業時間】
センターハウスは
9:00~18:00(4月1日~10月30日)
9:00~17:00(11月1日~3月31日)
各施設によって営業時間は異なります
【定休日】
ホームページをご確認ください
【公式サイト】
http://マキノピックランド.com/
マキノピックランドを楽しみつくしたところでいい時間になったので、湖西の旅を終える前にお土産を買うために『たかしま・まるごと百貨店』立ち寄った。
たかしま・まるごと百貨店はマキノから少し南下した市街地の新旭町にある。新旭という駅の前なので場所もわかりやすい。
館内には高島市で盛んなちりめんの織物、扇子の扇骨など伝統的軽工業の品々や鮒ずし、鮎の山椒煮など滋賀ならではの珍味がずらり。
オーソドックスなものばかりではなく、近年開発されてじわじわと人気が高まっているらしい『チーズふなずし』なんてものまである。
鮒ずしのお腹にチーズを詰めて薄くスライスしたもので、通常の鮒ずしより食べやすく色んなお酒にもマッチし、しかもお安いという逸品だ。
また高島市内には6軒もの酒蔵がある酒造業の盛んな土地なのだが、こちらではそれぞれの酒蔵から選りすぐった銘柄を入手できる。
日本酒マニアの僕はここぞとばかりにお土産酒を手に取ったが、帰って一服して飲んだ時の美味しさときたら!
“酒は地酒”と言うが、美味しいお酒を醸す土地にはやはりその背景となる美味しい文化や自然の恵みがある。
美味しいじゃないか湖西。
『たかしま・まるごと百貨店』
【所在地】
滋賀県高島市新旭町旭1丁目10-1高島市観光物産プラザ1F
【営業時間】
10:00~18:00
【定休日】
火曜日、年末年始
【公式サイト】
http://takashima-marugoto.jp/
わずか一日でバタバタ駆け抜けた湖西の旅だったが、それでも僕はいくつかの忘れられない風景、モノ、味に出会うことが出来た。
滋賀、特に湖西は観光する者にとって非常にバランスのいい地域だと思う。
交通は便利だし、名所、名物には事欠かず、街もあれば田舎もある。
遠方の方だと「京都観光のついでに……」と思いがちかもしれないが、ここ一本だけでも十分な、他にない満足を得られるはず。
ぜひゆっくりと訪れていただきたいおススメのエリアだ。
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(執筆者: 中将タカノリ) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか