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恐竜パニックSF小説に登場する科学者のこんなセリフを思い出した。
「進化の歴史とは、生物が障壁の外へ出ようとする行為のくりかえしにほかならない。生物は必ずその障壁を打ち破る。そして、新しいテリトリーへ進出していく。それはつらい過程だろう。危険すらともなう過程だろう。だが、生物は必ず道を見つけだす」(数学者 イアン・マルカム/マイケル・クライトン著『ジュラシック・パーク』(早川書房刊)より)
長年、肉や象牙目当てでヒトに狩られ続けてきたアフリカゾウが、象牙を持たない方向に進化しようとしているかもしれないという調査結果が明らかになった。
数十年前、アフリカ・モザンビークのゴロンゴーザ国立公園にはおよそ4000頭のアフリカゾウが生息していた。しかし、1977年に始まった内戦でその数は激減。戦闘員が肉と象牙を得るために乱獲したせいで、内戦が終了した1992年にはその生息数は3桁にまで減少したとみられる。
15年に及ぶ内戦を生き延びたゾウたちを調べた研究者はあることに気付いた。通常、牙のないアフリカゾウは2~4%しか発生しないが、この地域の25才以上のメスのゾウの51%には牙がなく(正確には、口の外に飛び出すほどには発達しない)、戦後生まれの若いメスのゾウのうち、約3分の1が牙のないゾウだったのだ。
同様の傾向は南アフリカで特に顕著だ。2000年代初頭のアドゥ・エレファント国立公園では、174頭のメスのうち98%に牙がなかった。また、南ケニアにおける調査によると、2005年から2013年の間に捕獲されたゾウの牙と、密猟が深刻だった1966年から1968年に間に捕獲されたゾウの牙を比べると、その大きさはオスで約5分の1、メスで3分の1以上に小さくなっていることがわかった。
密猟者たちはより立派な象牙を持つオスだけでなく、大きな牙を持つ高齢のメスも狩猟対象とした。一方、牙を持たないメスの多くは密猟を免れ、その特性が子孫に受け継がれたと考えられる。
ゾウにとっての牙は欠かすことのできない多目的な道具である。水を得るために木や土を掘り起こしたり、樹皮を剥いで食糧とするために使ったり、外敵から身を守る武器として、またオス同士の闘争にも使われる。裏を返せば、牙を持たないゾウはハンディキャップを負っていることになる。
このハンディキャップを上回る狩猟圧力がはたらき続けた結果のひとつが、アジアゾウかもしれない。古代からヒトとの関わりがより密接で、歴史的に象牙狩りの対象とされてきたアジアゾウでは、メスにはまったく牙が見られず、オスも9割が象牙を持たない。
世界的に象牙取引が禁止される中、日本は象牙産業を守るために国内取引の継続を主張し、中国などへの違法輸出が横行しているという報告もある。陸上最大の哺乳類としてほとんど天敵もなく超然と生きているように見えるゾウさんに、実はハンディキャップを負う道を選択させてしまっていたと知り、人間の業の深さを思わずにはいられない。もっとも、それをハンディキャップと見ることも近視眼的で傲慢かもしれないが。
画像とソース引用:
『ナショナルジオグラフィック』
https://www.nationalgeographic.com/animals/2018/11/wildlife-watch-news-tuskless-elephants-behavior-change/?utm_source=reddit.com[リンク]
『pixabay.com』
https://pixabay.com/ja/%E8%B1%A1-%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB-%E3%83%8A%E3%83%9F%E3%83%93%E3%82%A2-%E8%87%AA%E7%84%B6-%E4%B9%BE%E7%87%A5-%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E5%85%AC%E5%9C%92-%E5%8B%95%E7%89%A9-1170108/[リンク]
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