全編PC画面で展開されるユニークな映画『Search/サーチ』(日本公開10/26)が世界的なヒットを成し遂げている。



今作は、突如姿を消した高校生の娘の行方を、父親が彼女のPCやSNSをヒントに探し出そうとするサスペンス・スリラー。主演は韓国系アメリカ人のジョン・チョー、監督は今作が初長編となる弱冠27歳のインド系アメリカ人、アニーシュ・チャガンティだ。


同じくアジア系クリエイターによる『クレイジー・リッチ!』がこの夏異例の大ヒット。アジア系クリエイターがハリウッドでは活躍しにくいという現実を見事に打ち破った。同作のジョン・M・チュウ監督と主演のヘンリー・ゴールディングは、そのヒットを『Search/サーチ』にもつなげるべく、上映チケットを買い占め観客に開放するなどの大プッシュを行ったという。


彼らがそういった後押しをしたのは、アジア系という同胞意識からだけではないだろう。『Search/サーチ』は全編PC画面で展開する作品とは思えぬほどスリリングでダイナミック、そして世代や国を超えて人の心を揺さぶる普遍性を持った家族の物語。若い無名監督の作品だからとスルーされてしまうのは勿体無い傑作なのだ。


『MEG ザ・モンスター』『ミッション・インポッシブル/フォールアウト』など公開規模が段違いの大作が上位を占める中、『Search/サーチ』は$5,700,000の興収をあげ堂々のNo.5へとランクイン。以降、米国外でも記録的なヒットとなっている。


新人の無名監督だったチャガンティ監督は、一躍ハリウッドの大ヒット監督となった。そんな熱狂の渦中にあるチャガンティ監督にお話を伺った。



チャガンティ監督「『Search/サーチ』の大ヒットについては、もう言葉に尽くせないほど驚いています! 僕はもともとハリウッドの人間じゃないし、こういう映画を作る機会をもらったことすらも奇跡的だったのです。ある朝起きて、『クレイジー・リッチ!』のジョンとヘンリーが僕の作品を後押ししてくれているというニュースを知ったときも、本当に驚いたし本当に嬉しかった。自分の人生の中でも指折りの大きなできごとですよ」


今作の導入も印象的だ。物語は、主人公一家が初めてパソコンに触れるところから始まる。彼らの家にパソコンがやってきたのは、いずれ行方不明となる娘がまだ幼い頃だった。家族の予定を記したカレンダー、思い出を記録した動画の編集……パソコンはあっという間に一家の生活に浸透していく。やがて娘は大きくなり、自分専用のパソコンを持つようになる――。テクノロジーを通して描かれる家族の歴史はあまりにもエモーショナルで、観客はたちまちこの物語にのめり込んでしまう。


監督「まず映画の最初でインパクトを与えたかったんです。“全編PC画面の映画”と聞いても、“ワオ!それって最高!”なんてなかなか思わないでしょう(笑)? なので最初で観客を物語の世界へ引き込むことが大事だと考えたんです。人間のあらゆる感情を見せられるようなオープニングにしたかった。それでいて、主人公一家のこれまでの歴史を描けるようなね」



監督が最初に注目されることとなったのは、2014年に手掛けた短編『Seeds』だった。全編Google Glassで撮影された一人称視点のその作品は、アメリカで暮らす主人公が故郷のインドへと向かう旅路を追体験するもの。そこには思いもよらぬ感動の結末が待っている。テクノロジーを駆使しながら人間の感情を描く作風は、『Search/サーチ』にも通じるものだ。


監督「意識してやっていることはないんですよね。僕にはもともとテクニカルなバックグラウンドがあるんですが、映像作品を撮るにあたって、これまでにない何か新しいものがなければ負けてしまうのじゃないかと思ったんです。そういった想いで作った『Seeds』が世界的に話題となったので、“いけるぞ!”と手応えを感じましたね。その後、googleに勤めることになり、多数の映像作品を作って、本当にたくさんのことを学びました。そこでテクノロジーを通して感情を描くというスキルが磨かれていったのだと思います」


27歳という若さのチャガンティ監督は、インターネットとともに育ってきた世代だ。ネットがなくてはならない世代だからこそ、監督はその描写のリアルさにこだわった。


監督「僕はこの映画で、みなさんの経験した環境を再現したいなと思いました。今までのハリウッド映画に登場するパソコンやコンピュータシステム、インターネットやウェブサイトって、明らかに作り物と分かるものですよね。この映画ではとにかくみんなが見慣れているFacebookやInstagramにtumblr、そういったものを使いながら、観たことのない映画を作りたかったんです」



主人公は、娘の行方のヒントを探すべく、彼女のパソコンやSNSへログインを試みる。そこで彼は、明るい娘の思いもよらぬ一面を垣間見る。何かひとつヒントを得るたびに父は感情的になり、翻弄され、真実になかなかたどり着くことができない。SNSは人の意見や感情を可視化するが、そのごく一部分に注目が集まることによって、全貌が見えないまま非難され、炎上することは日常茶飯事だ。一部分だけが可視化されることで全貌が捉えづらくなる、今作はそういったSNSの性質を皮肉っているようにも思える。しかし、監督はテクノロジーの悪い面を描きたいわけではないという。


監督「もちろん、SNSに関しての問題提起の意味合いがないわけではありません。ただ、映画のなかで新しいテクノロジーやインターネットは悪いもののように扱われていることが多かったように思います。僕が描きたかったのはありのままのテクノロジーの姿です。いい面もあれば悪い面もある。すべては使い方次第、ということなんです


作品概要


『Search/サーチ』

10月26日(金)全国ロードショー


<ストーリー>

忽然と姿を消した16歳の女子高生マーゴット。行方不明事件として捜査が始まる。家出なのか、誘拐なのかわからないまま37時間が経過。

娘の無事を信じる父デビッド(ジョン・チョー)は、彼女のPCにログインしSNSにアクセスを試みる。インスタグラム、フェイスブック、ツイッター・・・。

そこに映し出されたのは、いつも明るく活発だったはずのマーゴットとはまるで別人の、自分の知らない娘の姿があった――。


2018年/アメリカ映画/原題:Searching 全米公開 8月24日限定公開 8月31日拡大公開


監督:アニーシュ・チャガンティ

製作:ティムール・ベクマンベトフ (『ウォンテッド』監督・『アンフレンデッド』製作)

脚本:アニーシュ・チャガンティ&セブ・オハニアン

出演:ジョン・チョー(『スター・トレック』シリーズ)/デブラ・メッシング(「SMASH」「ウィル&グレイス」)/ジョセフ・リー/ミシェル・ラー

公式サイト search-movie.jp #全編PC画面



―― 会いたい人に会いに行こう、見たいものを見に行こう『ガジェット通信(GetNews)』
情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 27歳新鋭監督のSNSスリラーが世界的ヒット 映画『Search/サーチ』インタビュー 「ネットはいい面も悪い面もある」