ミステリの女王アガサ・クリスティー。ミステリファンならずとも、誰でも一度はその名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。世界中で愛される彼女の作品の数々は、時代を超え、そうそうたるクリエイターたちに映像化されてきました。そしてその最新作が、現在公開中のアメリカ映画『オリエント急行殺人事件』です! 


『アクロイド殺し』、『そして誰もいなくなった』、と並んで、クリスティーの代表作である『オリエント急行殺人事件』ですが、実はどれも読んだことがなくて…というそこのあなた!  おめでとうございます!!! あなたには、これからこの映画、そして原作を思う存分楽しむことができます!! まちがっても「知らないんじゃ恥ずかしい」とか、結末をググッたりしないように!


実は『オリエント急行殺人事件』は、原作も、本作を含めたどの映像化作品も、読者に対してとってもフェアな作りになっています。どういうことかというと、原作では文中に、映画ではしっかりセリフを聞いて(又は字幕を読んで)いれば、ちゃんと犯人がわかるんですよ!!! ウソじゃありません!! もしわからなくても、ラストで主人公の名探偵ポアロが謎解きをしてくれた時、「ああ、そういえばそうだった!」と、腑に落ちること間違いなしです! なので、幸せなことにまだ結末を知らない方、ポアロとどちらが早く真相に気がつくか、ぜひトライしてみてはいかがでしょう。自分で解いた時の満足感はこたえられないものがありますよ!


では「オチを知っている」人は楽しめないのでしょうか? いえいえ全然そんなことはありません! まず今回の見所はそのスケールの大きさ! 実際に走らせた列車のゴージャスさはもちろんのこと、世界各地でのロケ、今までの映像化では見られなかった大スペクタクルな雪崩のシーン、そしてポアロ史上最大のヒゲ!(笑) お正月大作にふさわしい豪華絢爛な出演者たちは、日本でもファンの多い海外ミステリ小説と縁が深い面々が勢ぞろい!


まずは監督兼主人公ポアロを演じるケネス・ブラナーは、ヘニング・マンケル原作のTVシリーズ『刑事ヴァランダー』でご存知の方も多いのでは。被害者のラチェット役のジョニー・デップは、キリル・ボンフィリオリ原作『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』でコミカルな探偵を。そして容疑者となる乗客たちが出演したミステリ作品の一部はというと、


ペネロペ・クルス/クライヴ・カッスラー原作のダーク・ピットシリーズ『サハラ 死の砂漠を脱出せよ』

ウィレム・デフォー/ジョン・ル・カレ原作『誰よりも狙われた男』

ジュディ・デンチ/イアン・フレミング原作の新生007シリーズ、M役

デレク・ジャコビ/エリス・ピーターズ原作TVシリーズ『修道士カドフェル』

ミシェル・ファイファー/トニーノ・ブナキスタ原作『マラヴィータ』(原題『隣のマフィア』)


などなど、ミステリファンにはおなじみの顔ぶれとなっています。原作はありませんが、傑作ドラマ『ブロードチャーチ~殺意の街~』のオリヴィア・コールマンも重要な役柄で出演。“乗客全員が容疑者”の本作ですが、むしろ“乗客全員が探偵”でもおかしくないほどの豪華キャストです。他にも、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のデイジー・リドリー、そして世界的ダンサーのセルゲイ・ポルーニンは華麗な○○○を見せてくれます。


原作はもちろん、74年のシドニー・ルメット監督映画、2010年のデヴィッド・スーシェ版ポアロのドラマ、2015年の三谷幸喜脚本ドラマと比べてみるのも一興です。雪に閉ざされた豪華列車の殺人劇、ぜひ大画面でご堪能下さい。



▲ポアロ史上最大のヒゲ! ぜひご注目を。


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【プロフィール】♪akira

翻訳ミステリー・映画ライター。ウェブマガジン「柳下毅一郎の皆殺し映画通信」、翻訳ミステリー大賞シンジケートHP、月刊誌「本の雑誌」、「映画秘宝」等で執筆しています。


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情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 映画レビュー:セリフをしっかり聞いていれば“ちゃんと”謎解き出来る『オリエント急行殺人事件』