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1997年に誕生し、「家庭でも飲める手軽な本格エールビール」をコンセプトに掲げてきた『よなよなエール』。「地ビールブーム」、「冬の時代」、「クラフトビールブーム」と激動の20年間を駆け抜けてきたヤッホーブルーイングのフラッグシップがこの秋、レシピを大幅刷新するという。
そんなわけで、自宅にビールサーバーを置くくらい極度のビール好きライター、矢野(@beeressayist)が新旧の飲み比べをしてみた。
まずは外観から比べてみる。左が旧缶で右が新缶である。
もはや間違い探しレベルの違いしかない。
パッと気が付くところは下のタグライン的なところ。旧缶は「香りのエールビール」で、新缶は「クラフトビール」となっている。ここ、定義やポジショニングにも関わる部分だから結構重要である。よなよなは香りに特徴があるとか、エールなんだ(ラガーではなく)とかよりも「よなよなエール=クラフトビール」を打ち出した背景には、大手もエールを出すようになった現状がある。かつては「エールである」「香りが強い」というだけで容易に差別化できたけれど、それだともはや埋没してしまう。大手が言う「クラフトビール」がまだいまいち信用されていない中で、「クラフトビール」を文字通り前面に出すのは正しい戦略だ。
ビールファンならば「クラフトビール?当たり前じゃん」と感じるのだけど、この変更から「大手メーカーとコンビニで戦っていくぜ」という気概が垣間見える。ちなみに、月の黄色と麦畑の緑色も明るく鮮やかに変更したようであるが、ここから読み取れることは特になさそうだ。
表はそんなに変わらないパッケージだが、裏は結構変わっている。左が旧缶で右が新缶である。
旧缶には香りを感じる極意が書かれており、ゆっくり読むとその内容の薄さに膝から崩れ落ちそうになる。一方、新缶にはぐるぐると何やら書かれており、ゆっくりぐるぐる回しながら読むと思わせぶりながらもこれまた薄い内容に「この労力を返してくれ」と叫びだしたくなる(この辺の“人を食う”感じはヤッホーの真骨頂であり、個人的には大好物である)。
さて、外観について色々書いてきたが、問題は中身である。
ぷしゅ よなよなエールにお世話になりますといった具合に開栓。左が旧缶で右が新缶である。
液色はほとんど変わらないが、香りは明らかに新缶の方が強い。
まずは旧缶を実飲!
…うん、『よなよなエール』。比較的普段から飲んでいるので「これこれ」としか思わない。
続いて、期待を抱きながら新缶を実飲!
…食い気味に苦い!差はそこまで大きくないけど確かに変わってる!
飲んでみてもホップの違いが一番わかりやすい。今回、柑橘類を思わせる香りを最大限引き出すため、アロマホップの「カスケード」を増量した模様。さらに、「カスケード」以外のホップも「カスケード」を引き立てるために特別にブレンドしているのだとか。ものすごいカスケード愛である。マスカットのようなグレープフルーツのような恍惚としてしまう香りが結構長く続く。新缶はグラスに口を付けた瞬間から心地よい苦みを感じるので、そのぶんずっとホップを感じるというか、余韻が長く感じる理由はここにもあるのかもしれない。
ただ、新旧を交互に飲み続けていると正直、「あれ?これはどっちだっけ?」と思ってしまう瞬間もあった。「1997年の発売以来、初めてレシピを大幅刷新!」と聞くと、先日のキリン『一番搾り』のようにガラッと変わったのではないか?と思いがちだけど、実際のところ「よなよなはよなよな」である。
ビールだけだとよくわからなくなってくるので、燻製したソーセージなんかをアテに飲み比べをした。
ビールだけで飲んでも美味しいし、食事に合わせても楽しめる。これは旧缶のときもそうだったけど、リニューアルしてさらに単品で飲んでもペアリングしても楽しめるという個性が際立った印象だ。
今回、「よなよなエールがリニューアルする」と聞いて、「苦みを弱くして、よりたくさんの人に飲んでもらう“一般受け”方向に舵を切るのではないか。まあ、苦みや個性を求める層にはインドの青鬼とか他にも色々あるしな…」と勝手に想像していたのだけど見事に、いい意味で裏切られた。脱帽である。
むしろ、よなよなは鈍化どころか純化していた。
何を隠そう鳥取県の片田舎に住む著者の私、これからも手軽に買えるクラフトビールとして『よなよなエール』はファーストチョイスになり続けそうである。
※詳細は公式サイトで
http://yohobrewing.com/20170822newyona/ [LINK]
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