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6月上旬。梅雨入りしたというのに、連日晴れ間がのぞく日もある日本列島。早くも夏到来かと、仕事終わりにビールで喉を潤している方も多いのではないだろうか。最近ではクラフトビールやビアフェスなど、さまざまな形でビールを楽しむ機会は増えており、筆者も美味しいビールをもとめて出かけることもしばしば。今回は、あるクラフトビールメーカーが奥多摩の先に醸造所を作ったと聞いて、大人の遠足とばかりに、早速現地に足を運んでみた。
新宿から約2時間をかけて、JR東日本青梅線の終点である奥多摩駅に到着。駅の近辺は山登りを楽しむ中高年や若いカップルで賑わう。さっそく駅の目の前にある西東京バスのバス停から“小菅の湯”行きのバスに乗車。
ほどなくして現れる奥多摩湖。バスはしばらく湖の周囲をなぞるように走る。湖面は日光に照らされてキラキラと輝き、空気もきれいで、ここが東京都とは思えないほどの大自然に囲まれた道を進む。
40分ほど乗車して、東京都と山梨県の県境を越え“池之尻”停留所で降車。今回お目当ての醸造所は、バス停からだいたい徒歩3~4分のところにある。 美味しいビールへの期待に喉が鳴る。
やってきたのは山梨県・小菅村にあるFar Yeast Brewing初の自社醸造所“源流醸造所”。この春に稼働を開始したばかりで、この日は一般初公開となる“ブルワリーオープンデイ”。醸造所内を見学できるツアーと、こちらで初仕込みされたクラフトビールが飲める貴重な機会。Far Yeast Brewingという社名にピンとこなくても、飲食店やイベントなどで、同社が出している『馨和 KAGUA』や『東京ホワイト』『東京ブロンド』などのクラフトビールを見かけたことがある方もいるのではないだろうか。
『馨和 KAGUA』はベルギーで製造されて日本へ輸入、『東京ホワイト』など『Far Yeastシリーズ』は国内の他醸造所で委託製造されていたが、今年創業5年目にして初の醸造所が完成し、このたびついに自社製造のクラフトビールが誕生した。
醸造所の入り口で見学ツアー料金と引き換えにクラフトビール試飲券を受け取り中に入ると、そこには真新しい醸造設備が並んでいて、奥ではできたてのクラフトビールがサーブされていた。
「プハーッ!」
待ちに待ったと言わんばかりに、さっそく代表格の『東京ホワイト』の樽生をいただく。こちらはセゾンといわれるベルギー発祥のビールスタイルで、小麦を使用し、ホップの華やかな香りとシャープな飲み口が特徴だ。
ここまで東京から3時間近くかけて電車とバスを乗り継いできただけに、喉はもうカラカラ。『東京ホワイト』を瞬く間に飲み干し、お次は『東京IPA』をいただく。こちらはキレのある味わいの“ベルジャンIPA”だ。ホップが華やかに香り、飲み口もとてもいい。やはりできたてはこうも美味いものか、と思わず唸る味わいである。
ほどなくすると、醸造所見学ツアーが開始されるというアナウンスがあり、ビールの醸造工程を描いた壁の前に集合。同社代表取締役の山田司朗社長自らによる、ビールの作り方の解説と同設備についての見学ツアーが始まった。
麦汁を作るタンクや発酵タンクをまわりながら、ビールを作る工程を山田司朗社長が丁寧に説明する。設備中央にはアーティスト/スケートボーダーのDISKAH氏による壁画が描かれ、機械が並ぶ中でも手作り感を感じさせる、同社ならではのこだわりが垣間見える。
“源流醸造所”開設にいたる想いについて、山田司朗社長に聞いてみた。
「これまでも自分たちの設備でビールを作りたいという想いはあった。『馨和 KAGUA』などの販路も広がり、ようやく設備投資ができる環境が整ったことで今回実現した。山梨県小菅村は東京の水源である多摩川の源流にあたる場所。東京のクラフトビールをうたうブランドとして、東京の水源をたどったこの地に醸造所をつくった。ここは冷涼な気候で空気もきれい。ビール作りには最適な環境だった」
この日のオープンデイには、地元小菅村の村民も含め100人ほどの来場者が詰めかけて、できたてのクラフトビールを味わった。当日披露されたのは定番の『Far Yeastシリーズ』の『東京ホワイト』『東京ブロンド』『東京IPA』に加え、初回限定で製造された『TAPECUT IIPA』の4種。この『TAPECUT IIPA』はセンテニアルという銘柄のホップを中心にアメリカンホップをふんだんに使用した、しっかりとしたボディのインペリアルIPAというスタイル。アルコール度数は8.0%あるものの、モルトの風味とホップの香りがきいた味わい深い一品。初回限定のため、今後製造される予定はないという貴重なものだ。
大手メーカーが多く展開するピルスナーと違って、個性あふれる味や、小規模ロットによる限定生産などもクラフトビールの魅力のひとつだ。同醸造所では一回の仕込みで約3000リットル、330mlの小瓶サイズにして約8000本の製造が可能とのこと。この日は同醸造所で仕込まれた4種類のFar Yeastシリーズの瓶も販売。お土産として手にする人も多くいた。筆者ももれなく4種類を購入し持ち帰った。これで家飲みの楽しみがまた増える。
※今後もブルワリーオープンデーは開催する予定とのことで、詳しいスケジュールは同社ウェブサイトをご覧いただきたい。
http://faryeast.com/
今年の7月下旬には直営店舗として『Far Yeast Tokyo ~Craft Beer &Bao』が東京・渋谷にオープンするとのこと。同店舗では、現在世界13カ国で販売されている『馨和 KAGUA』シリーズと、『Far Yeast 東京』シリーズが常時樽生で飲めるほか、中華蒸しパンのような生地に様々な具を挟んだ『Bao』と呼ばれるフードメニューも提供されるそうで、クラフトビールのあらたな楽しみ方にチャレンジしようとしている。Far Yeast社の今後の動きからますます目が離せない。
“源流醸造所”詳細情報
Far Yeast Brewing 源流醸造所(山梨県北都留郡小菅村4341-1)
JR東日本青梅線奥多摩駅、またはJR中央線大月駅から車で約30分。
※オープンデー以外の通常時は、醸造所での試飲販売等は行っておりません。
(執筆:イシカワトモヒコ)
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