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「アイドル楽曲とは思えない超絶ロックチューン!」「アイドル現場とは思えないモッシュやダイブの嵐!」とか書くとアイドルライブに通じてる人たちに「何をいまさら」と言われまくるほど、今のアイドルにおける音楽性の多彩さはハンパありません。ジャンルでいえばパンクにファンクにニューウェーブ、シューゲイザーにヒップホップに演歌にサイケトランスなどなど、あらためてアイドルというジャンルの雑食性に感心させられます。
ただアイドルとの食合せとして「それアリ?」という音楽ジャンルはまだまだあるもので。そのひとつが「プログレ」。ELPにキングクリムゾン、イエスなど代表的なグループ名は知られてはいますが、ひとことで「こういう曲」とは言いづらいのもあって難解なイメージがあるジャンルではないでしょうか。しかし、ちゃんと「プログレアイドル」もいるからアイドル界は広い。それも代表曲の長さが11分18秒!そんなプログレアイドルの名前はxoxo(Kiss&Hug) EXTREME(通称キスエク)。
見た目はいたって普通のアイドルですが、その11分越えの代表曲『悪魔の子守唄』を聞けば、その怒涛の曲展開と緩急に驚かされます。そして歌詞の中に「ヘンリー8世」「墓碑銘」「アルマジロ」とプログレ好きならひっかかるキーワードがありつつ、「ところでこの曲いつまで続くの?」とセルフツッコミも入ったりと、楽曲だけでなくストーリーも縦横無尽の11分トリップ!薄暗いステージで見せるパフォーマンスはその楽曲の重厚さもあって、アンダーグラウンドなテント小屋演劇ぽさというか独特の空気を醸し出します。
ライブ動画『悪魔の子守唄』https://youtu.be/9ZEPi6svnMg
現在メンバーは楠芽瑠、一色(ひいろ)萌、小日向まお(研修生)の3人(写真は4人ですが、取材後新條ひかりが卒業)。もともとxoxo(Kiss&Hug) 名義で活動するも一度活動休止、メンバーを総入れ替えして再始動したのが現在のxoxo(Kiss&Hug) EXTREME。これまでグループ名変更や卒業などたびたびありましたが、メンバーの移り変わりが多いのもプログレあるあるですから!
ちなみにアイドルの曲で10分超えは決して珍しくなく、過去にゆるめるモ!の「Sweet Escape」(10分9秒)や夢幻レジーナ「地獄より」(11分14秒)、吉川友「花」(17分25秒)などがあります。ただ、どのアイドルも持ち曲ではあるものの長いのもあってワンマンやごくたまにしかライブで演らないのに対し、キスエクは毎回『悪魔の子守歌』を演る。だからライブ時間は最低15分は必要、しかもそれでやるのは一曲が限界。効率がいいのか悪いのかわからない!
キスエクのメンバーマネージメントから楽曲プロデュースまで勤める大嶋プロデューサーになぜプログレアイドルを始めようと思ったのかを聞いてみました。
大嶋 今までもプログレアイドルを作ろうと思った人はいたと思うんですよ、メタルアイドルもいるくらいなので。でも、そこで二の足を踏んでいて。たぶんそれは「プログレファンはややこしいんじゃないか」というのがあったと思うんです。
--「プログレとアイドルとかねえだろ!」とか言われそうだと。
大嶋 ただ、ある時「意外とプログレファンってややこしくない」と確信持てたんですね。ややこしい人もいるんですけど(笑)、いろんな音楽聴いた結果プログレファン、って人が多いんで意外とどんなジャンルも受け入れてくれるんですね。あと単純に曲を作れる人がいないというのもあったんですけど、自分の周りにはさいわい曲を作れる人もいたんで、いけるんじゃないかなと。それも中途半端にやるより貫いていった方がバズれるんじゃないかと思って、もう「プログレアイドル」名乗ってやりたい事やろうと。
--現時点での手応えは?
大嶋 もっと高みを見たいんですけど、業界自体がやや下火気味なのもあって思うようにはいってないんですけど、いろんなものが噛み合えばいけるという確信はあります。
--キスエクとしての現在の目標は?
大嶋 ちゃんとした音楽ファンに認知していただくってことですかね。ステージもそうですし、生バンドとの共演もやったりして、プログレファンが聴いた時に「いいじゃんすげえじゃん」って面白がってもらえるエンターテイメントになれば、かなり深いところにいけるんじゃないかなと思ってます。
ではメンバーは「プログレアイドル」についてどう思ってるのだろうか。そもそもどこまでわかって加入したのだろうか?メンバーの一色萌さんに話をうかがいました。
--最初に『悪魔の子守歌』とかキスエクの曲聴いた時どう思いました?
一色 変な曲ですよね!でもわたし元々がアイドルオタクで、いろんなアイドル見た中で音楽にも耐性がついちゃって、「こういうのもありかなー」って思ったんです。ゆるめるモ!さんとかベルハー(BELLRING少女ハート)さんとか、最初「なんだこりゃ?」って思ったけど、聴いてるうちにクセになってくるし、何でもありかなって。
--キスエクは募集の時点で「プログレアイドル」って名乗ってたんですか?
一色 そうですね。正直よくわかんないなと思ってたんですけど、よくわかんない方がいいかなって。わたし子供の頃ハロプロに憧れてたんですけど、なれない時点で正統派は諦めたんです。その後、BiS(激しいサウンドとフロアの盛り上がりで多くのフォロワーを生んだロック系アイドル)さん好きになって、どっちかというとそっち系のアイドルがいいかなと思って、重点的に受けて決まったのがプログレアイドルで。わたし、それまで40くらいアイドルのオーディション受けてたんです。
--オーディション40回!
一色 もともと父がハロプロ(ハロー!プロジェクトの略。モーニング娘。・℃-ute・アンジュルムなど)オタクで、生まれた時からもうハロプロ好き以外の選択肢がない状態だったんですね。それでモーニング娘。にわたしも入りたかったんですけど、オーディションのチャンスを狙ってるうちにうっかり芸能活動出来ない進学校に入ってしまって。それでも光井愛佳さんが受かった8期オーディションを受けようとしたんですけど、ネット応募の最終日に「応募」の送信ボタンを押すかどうか迷ってる間に母親から「いつまで寝てるの!」と怒られて、そのうちに日付が変わってわたしは娘。になれないことが決定して。そこでアイドルになる道は諦めたんですよ。
--それがなぜアイドルの道に戻ってきた?
一色 それから歌手のオーディションとかは受けてたんですけど、結果を残せないまま大学受験の時期になって、もうそっちの道は諦めたんです。それで青山学院大学に通い始めて。「仏像が好きです」って自己推薦で。
--アイドル諦めて青学ならそれで正解な気しますよ!
一色 でも青学も渋谷に行きたくて選んだんです(笑)。それでたまたまでんぱ組.incのライブを渋谷のライブハウスで見たんですよ。そしたらライブも見れて、CD1枚買ったら全員と握手とか、あとオタクの人も普通のおにいさんおねえさんって感じでそんな人たちが熱狂してて。ハロプロに関しては父が在宅派(ライブは行かず、テレビやCD・DVDなどあくまで自宅で楽しむ人たち)だったんでコンサートは一回しか行ったことなくて、現場(ライブ会場や握手会など)を知らなかったんですね。それからすぐネットで調べてハマりまくって。
--それであらためてアイドルオタクに。青学ならもうちょっとリア充な生活もあったでしょうに…。
--では、アイドルオタクの一色さんがそこから自らアイドルになろうと思ったのは?
一色 BiSさんが追加メンバーオーディションやるって知って「そこに行けばメンバーと会える!」と思ったんですよ。その時は落ちたんですけど、それから面接に行けば運営さんやアイドルさんに会えるって思ったんです。もうアイドルになるという欲はモー娘。になりそこねたことで消化されてたんですけど、アイドルの世界を覗きたい!と思ったんですね。そして地下アイドルの世界って、顔も見た目年齢関係なく女の子であればアイドルになれる状態ってことに気づいてしまって。それを知ってやりたくなっちゃったんですよ!それでメジャーから地下まで受けまくって。
--それで40グループも。正直、そこまで受けるってもう何でもいい状態ですよね。キスエク受ける時「なぜうち受けるの?」とか聞かれなかった?
一色 聞かれたかな?たぶん聞かれなかったですね。それ聞かれたら詰まったと思います(笑)。面接の時言ったことで覚えてるのが、「辞める気持ちが知りたい」って言ったんです。
----「敗北を知りたい」と言った漫画『バキ』のドリアンみたいだ…。
一色 わたしのモチベーションは「アイドルになってチヤホヤされたい」とか「キラキラしてるアイドルの世界に憧れて」とかじゃないんですよ。キラキラしてないアイドルを見てきた上で、自分でもそれを体験したいと思ってつらい思いをしにきてるんです。つらいのは上等です!
--アイドル志望者でこんな子も出る時代なんですね!
一色 オーディションで友達になった子がアイドルになったりしてるんですよ。わたしは落ちてるんですけど(笑)。それでアイドルの子って、どんなにやる気があっても半年すると「つらい、やめたい」って言い出すんです。なぜか聞いたら「わかんない」って言うんですよ。「わかんないけど辞めたい」って。なぜというと漠然とつらいみたいで。具体的な答えがわからないから、ますます気になっちゃって。それで面接で「辞めたい気持ちが知りたいです」って言って。大嶋さんもよく取りましたね(笑)。
--ちなみに一色さんはそろそろ加入半年ですけど、やめたいと思ってますか?
一色 一度もやめたいと思ったことないです!どうしましょう(笑)。
--すくすく楽しめるグループなんですね、キスエクは。ちなみにハロヲタのお父さんは娘がアイドルやってるのはご存知なんですか?
一色 言ってないです!母には言わないと活動できないと思ったから言ったんですけど、父は出張が多くて家にいない事が多いのと、生活のリズムが朝昼真逆で一週間顔合わせないとか普通なんですよね。それに言うと過剰に期待させちゃうかなって。
--お父さんは今もアイドルは見てるんですか。
一色 見てますね。今はめっちゃ現場行ってて○○○○のオタクです(笑)。あと○○○○とか○○○○とかパフォーマンス重視です。いつバレるかなー。いつかそこと対バンして、父がステージ上のわたしを見てバレるのが理想ですね(笑)。
◆
プログレ云々の話より、一色さんの身の上が濃すぎてそっちがメインになってしまいました。ちなみに一色さんからは「父が通ってるグループ名も明かしていいですよ!」とおっしゃっていただきましたが、載せた結果ネット経由でバレるのももったいない!と思い、自主規制させていただきました。これ読んだ方でお父さんのこと知っててもナイショでひとつ。ちなみにお母さんはゴールデンボンバーが大好きだそうです。
ということでメンバーのプログレ好き度は推して知るべしですが、こんな濃い音楽に濃いメンバーが揃ったキスエク、一色さんが最初思い描いていたアイドル界の王道にいけるかはおいといて、唯一無二の花を開かせるグループになりそうです。2017年の地下に妖しく壮麗に咲くプログレ花、でもプログレだからってメンバーチェンジや解散復活は無い方向で頑張っていただきたい!
◆xoxo(Kiss&Hug) EXTREME公式サイト
https://www.xoxo-ex.com/
◆xoxo(Kiss&Hug) EXTREME公式ツイッター
https://twitter.com/xoxo_extreme
◆楠芽瑠公式ツイッター
https://twitter.com/kusunoki_meru
◆一色萌公式ツイッター
https://twitter.com/hiiro_moe
◆小日向まお公式ツイッター
https://twitter.com/kohinata_mao
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(執筆者: 大坪ケムタ) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか