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米田仁士、という人物をご存じでしょうか?
「ソーサリアン」「ミネルバトンサーガ」「ファンタシースター」「ザナドゥⅡ」
といったゲーム黎明期に名作とよばれる作品のイラストデザインを手がけたのが米田仁士さんです。
古参ゲームファンなら1度は米田氏デザインのゲームのパッケージを手に取ったことがあるかと思います。
印象深く幻想的なタッチの絵はファンタジーRPGとも相性がよく、当時小学生だった筆者は「ミネルバトンサーガ」のパッケージ絵に魅入られてしまいました。
「米田仁士ワールド」のような独特の世界観があり、見ればすぐ「ああ、米田さんの画だ」とわかるでしょう。
個人的ですが、米田仁士、 山田章博、末弥純を「日本ファンタジー絵師御三家」と勝手に定義しております。
ライトノベルや海外のファンタジー小説のイラストも幅広く手掛けて、日本のみならず海外でも、多くのファンがいると聞きます。
今回、米田仁士さんにメールで会話をする機会をもうけましたので、この不思議なイラストレーターについていくつか質問をしてみました
――最初にイラストレーターになろうとしたのはいつ頃?目指していた人や影響を受けたものは?
米田 小学生の頃、藤子不二雄先生が好きで漫画家になろうと思ってました。高校生くらいの頃には芸大を受験するために本格的に絵を習い始めました。
芸大生の頃アルバイトをやってみて、こういう普通の仕事は自分には向いていないなと痛感して2日で止めました。芸大を中退してから、雑誌の漫画賞の応募原稿でデビューしたんですが、絵にこだわる方で、漫画の一齣一齣に高い完成度を追い求めると大変な作業になってしまって、一枚絵のイラストの方に行ってしまったんです。
絵的に大きな影響を受けたアーティストはフランク・フラゼッタ、ロジャー・ディーン、メビウス、アルフォンス・ミュシャ、シュールレアリスムや象徴派やラファエロ前派の画家、アラン・リー、H.R.ギーガー、ベクシンスキーなどです。あと子供の頃に見た東宝怪獣映画や東映長編アニメにも影響を受けていますね。
――ファンタジーものが多いですが、ファンタジー画のほうが描きやすいのでしょうか?他にSFや現代物など描くこともありますか?
米田 元々神話やファンタジー小説が好きで、フラゼッタみたいな絵を描いてみたいなぁ、とずっと思ってたんです。ファミコンが発売されてからドラクエなどのゲームが人気になり、ファンタジーというものが世間に認知されてきて、ファンタジー関係の絵の仕事を貰えるようになってきたんで嬉しかったです。でもホラーやSF、スチームパンクなどの小説や映画も好きで、仕事でもよく描かせてもらってますよ。
――これまでで一番うまく描けたと思えるものは?他に苦労したことは?
米田 黒澤明監督の「私の代表作は次回作です」という言葉が好きで、自分も絵を描く時は「今までで一番凄い絵を描こう」という意気込みで描いているので、多分次の仕事で描く絵が一番うまく描けるはずです。もちろん人間ですから、そういいう気持ちで取り組んでも出来不出来はどうしても出てくるんですが、精一杯やった結果なら、それはそれで仕方がありません。
苦労するのは人物の顔やデッサンでしょうか。描いている過程で失敗することもあります。CGではなくアナログ水彩画で描くことが多いので修復するのが大変です。でも長く絵描きをやってると、誤魔化すテクニックも色々編み出しますね。
実は、絵を描き終えてクライアントさんに納品してホッとした後で、リテイクが出た時が一番苦労するかもしれませんね。時間的にも〆切に余裕がなかったり、精神的にもドカンと落ち込みますから。
――仕事の息抜きにはどんなことをしているのでしょうか?
米田 本を読んだり、映画を見たり、ネットのニュースや記事を漠然と読んでいたりします。Twitterでどうでもいいようなことをツイートするのも楽しいですね。他に米朝師匠や枝雀師匠の落語を聞いたり…落語を聴きながら絵を描いていることも多いですよ、元々お笑いが好きなもので。
――これからイラストレーターを目指す人たちへ、なにか伝えたいことがあればどうぞ
米田 絵で食べてゆくというのは収入も不安定ですし、正直言って大変なことです。それなりの覚悟と絵に対する情熱、努力、営業、それと多少の運がないと、続けてゆくのは難しいと思います。ただ自分の好きな事を仕事に出来るという喜びは大きいです。頑張ってください。
――ありがとうございました!
トレカの仕事が多いのですが、最近、FT書房さんから刊行されている『TtTマガジン』というB5サイズの雑誌のカバー絵を担当させて戴いています。書店やゲームショップで見かけたら、是非手に取って御覧ください。
TtTマガジンカバー絵
――お忙しい中ありがとうございました!
長い期間、独自のファンタジーイラストを描き続け、若者から高齢者までファンの多い米田仁士氏。ファンタジー画が好きな方、どうぞ米田さんの世界を覗いてみてはいかがでしょうか?
(画像 米田仁士 文責 マツダ草介)
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(執筆者: マツダ草介) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか