フランスといえば、ヨーロッパ最大級の日本文化消費国。その好奇心の対象は浮世絵などのアートから文学、柔道などの武道から盆栽までと際限ないが、中でも注目すべきはやはり「オタクカルチャー」。ネットの進歩によって日本人とフランス人がリアルタイムで同じ作品を楽しみ、感想を共有するような時代である。


そのフランス・パリで1大オタクカルチャーイベント『パリ マンガSFショー』なるイベントが開催され、もちろん筆者はこれに参加してきた。これがまたとんでもないカオスだったのだ。

例えば、トップ画像のジュウレンジャー。「何故今ジュウレンジャー!?」「何やってんの?」等様々な疑問が湧くが、このようなフランス人が会場に大挙して押し寄せていたのだ。想像の斜め上を行くフランス人のオタクカルチャー受容具合にド肝を抜かれてきたので、その一部始終をレポートしていきたい。



パリ マンガ&SFショー(Paris Manga &Sci-Fi Show)

開催日 2017年3月25・26日

開催場所 パリ ポルト・ド・ヴェルサイユ(メトロ12番線)

チケット代 当日14ユーロ(2日券は27ユーロ) 


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会場は何でもござれなカオス空間



会場となったのはパリのコンベンションセンターの一角。広さ的には東京ビッグサイトの東ホールの1つを半分にしたくらいの規模で、そこまで大きくはなかった。しかし入場者の数はかなりのもので、一時はコミックマーケット時の東西連絡通路ほど混雑する様子も見られた。


会場では小売、人作家の小さいブース無数に軒を連ねており、その他大型ステージやゲーム試遊コーナーが配置されていた。


例えば小売ブースでは、模造刀や剣が販売されており多くの客を集めていた。日本ではあまり見かけない光景だが、ポン刀を抜き身にして吟味するフランス人は非常に絵になる。日本に関連するものであれば何でも売っていたと言っても過言ではなく、「うまい棒」などの駄菓子、スカジャンや浴衣などを販売するアパレル、ガンプラにフィギュア、そして後述するマンガやゲーム作品など、秋葉原によくあるタイプの商品は一通り揃っていた。まるでパリの「リトル・アキハバラ」にでも来たかのようだ。




中にはこのような怪しげな店も数多く出店。呪詛のように「カワイイ 兎 日本 原宿」のフレーズが壁一面に敷き詰められているが、販売されているのは至って普通の小物やTシャツなど。




勿論、参加者の気合の入り方も半端ではない。「一狩り行ってくる」と背中が語っているような猛者から、子供連れの家族、どう考えてもシャンゼリゼ通りにいるような美男美女カップルなど、誰でも気軽に訪れている印象だった。




さらに企業のプロモーション活動も盛ん。ハリウッド映画『ニンジャタートルズ2』の等身大フィギュアや、ハリウッド版『パワーレンジャー』の宣伝もされていた。




外に出れば、エアリスとレノがラムネでお茶してる微笑ましい光景も。フランス人はファイナルファンタジーのキャラクターが本当によく似合うと感動。このコンベンションセンターはモダンでフランスらしくオシャレなので、野外でも写真撮影が盛んに行われた。自然光を求めて外に出る辺りは、日本のコミケと大体同じ。


マンガ&アニメのチョイスが通好みなフランス




『lain』『Ergo Proxy』『Noir』etc…アニメソフト販売コーナーではやたらとディープなラインナップが目立つ。ニッチ過ぎるアニメが猛プッシュされており、少しに笑いそうになってしまったが、フランス人が好むアニメが何なのかを知る良い機会にもなった。ちなみに、DVD-BOXで10ユーロという破格の値段にも注目。



続いてマンガ。少年向けや青年コミック販売も多数あったが、特に目立っていたのが女性向けのBLマンガ。マンガ販売業者の半分くらいは女性向けで、とても美しいフランス美女たちがこぞってBLマンガを漁る様子はなかなか貴重な光景だった。



さらに。

さすがフランスといったところか、成人向けコミックも堂々と販売されており、それなりに盛況の模様。性にオープンなフランスですが、こういう場所でもそれはあまり変わらないようです。



その他、タペストリーなどの商品も充実。気になる価格は1枚で20ユーロ(約2400円)、2枚買うと30ユーロのディスカウントだ。



勿論日本のマンガだけではない。フランスのコミック様式・バンドデシネ作家さんのサイン会も。フランスでは、作品購入などでカラーでかなりガッツリとイラストを書いてもらえる。


ゲーム



お次はゲームに関する展示の紹介。フランスではマンガ・アニメと並んで勿論日本のゲームも大人気だ。特に発売されたばかりのニンテンドーSwitchの試遊コーナーは大盛況で、数多くの人々が興味深げに体験していた。

任天堂は会場内に広いブースを持っており、様々なタイプの試遊台を設置していた。PS4よりも多くの試遊台があり、フランス市場に対する任天堂の力の入れ具合を感じさせた。



任天堂の「マリオ」や「ゼルダ」といったアイコニックなタイトルも人気だったが、「萌」を全面に打ち出したタイトルも好評だった。

例えばPS4版『ぎゃる☆がん』もプレイアブル可能。傍らにいる少年は固唾を呑んで見守っていた。将来有望です。


突如として16bitサウンドが・・・



そんな感じでゲームエリアをフラフラ歩いていると、どこからともなく妙に耳心地の良い音楽が聞こえてきた。

吸い込まれるように音の先に行ってみると、昔の16bitゲームBGMを使ったDJが行われていた。アフリカ系DJの織りなす16bitプレイは最高だ。どうやらこのエリアは「MO5.COM」というゲームを保存・継承するフランスの団体が運営しており、様々なレトロゲームを展示して実際に触れる事が可能となっていた。



その脇ではゲームキューブの『スマブラDX』という、誰もが一度は熱中したゲームが遊ばれており感動。ゲームキューブももはやレトロゲームの仲間入りなのだ。



横に目を転じると、ドリームキャストの名作パズルゲーム『チューチューロケット!』がプレイされていた。恐らく学生時代にプレイしたであろうお父さんとその子供が仲良くプレイする様は、何とも微笑ましいものである。



しかし、懐かしむにはまだ早い。

この黒い物体を目にした時、つい「時代が求めた16bit!!」と思わず声に出してしまう。メガドライブだ。東京・羽田大鳥居から遥か約1万キロ離れた場所で、父娘がメガドライブに興じている姿はまさに感動モノ。しかもプレイしているのは名作『Streets of Rage』(和名『ベア・ナックル』)。実に渋いチョイスである。



さらには『Master System II』もプレイ可能で、なんだかんだ言ってフランスでもセガが脈々と受け継がれて行く様子を見て安心した筆者だった。


ステージイベント



以上、会場内の目ぼしい展示を見てきたが、やはり一番盛り上がるのはステージイベント。ステージは会場内に大小数カ所設置されており、SFドラマの出演者トークショー、日本のアニメクリエイターの講演会、バンドのライブなどが行なわれていた。


筆者が特に注目したのは、日本で2014年に放送された所沢(とその他日本各地)を舞台にしたアニメ『ローリング・ガールズ』の脚本家むとうやすゆき氏のトークショー。所沢市に住んでいた筆者的には無視出来ないイベントだったのだ。Q&Aコーナーでは、熱心なフランス人達の質問にも丁寧に答えていたむとう氏。最後にじゃんけん大会で新作『戦国重機甲アラガネ』の台本が勝者に贈呈されるとう一面も。まさに、日本で行われているアニメイベントと何ら変わらない一幕だった。 




小さいステージでは、冒頭に紹介したジュウレンジャー達が舞台に登場し狂ったように「パワーレンジャーダンス」を披露していた。これはニコニコ超会議などでも見られる光景だ。



日本の”絶叫系鋼鉄女子バンド”こと『G∀LMET(ギャルメット)』のライブも行われており、こちらも大盛況。凄まじい人気だった。


以上、駆け足であるがパリの『マンガSFショー』の一部始終をお伝えした。個人的には、コミケとニコニコ超会議の中間のようなイベント内容だった感じたが、規模が圧倒的に小さい分、異様に濃密な空間と時間を堪能することができた。パリでは7月に世界最大級の日本イベント『ジャパン・エキスポ』を控えており、パリいる限り日本の「アニメ・マンガ・ゲーム」が恋しくなることはないだろうな、と悟った次第である。


情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 「アキバをそのままパリに」 オタクカオスが凝縮された『パリ・マンガSFショー』体験記レポ