- 週間ランキング
「骨伝導」という名前、ひょっとしたらどこかで耳にしたことがあるかもしれません。
骨伝導とは頭蓋骨などに振動を伝えて、鼓膜ではなくその奥の音を感じる器官に直接、“音”を伝える技術なのです。
骨伝導は鼓膜に頼らず、その奥の聴覚器官に直接振動を伝えるため、「人ごみの中でも声が聞き取りやすい」などのメリットがあります。
その一方、骨伝導は空気の振動とは異なる音の伝わり方をするため、一般には中・低域の音が強調された「くぐもった」ような音質になりがちといわれていました。
クラウドファンディング『GREENFUNDING by T-SITE』で支援展開中のプロジェクト『EarsOpen(EO)』も、骨伝導イヤホンです。
しかし、『EarsOpen』は「世界初、ハイレゾ級骨伝導CLIP型イヤホン」とのふれこみ。骨伝導イヤホンでありながら、オーディオ的な音質にまで気を配っているということでしょうか。
今回ガジェット通信では、BoCo株式会社の協力を得て『EarsOpen』の試作品を試させてもらいました。一体、どんな音がするんだろう……。
まだ開発中の『EarsOpen』、コアとなるドライバの調整などは大方済んでいるそうです。装着は耳たぶ辺りにクリップで挟む形になるのですが、人の耳の形状は千差万別のため、クリップ部分の最大公約数化に尽力している模様。
耳たぶのちょっと上、くぼんだ部分に『EarsOpen』をセット。通常のイヤホンと違って外耳の部分はふさがれていないので環境音は普通に聞こえます。
そこで曲がスタートすると……うわわわ!“頭の中心”から、音楽が聴こえてくる!僕の頭の中心で安室奈美恵さんの『CAN YOU CELEBRATE?』が響き渡ってます。
そして、『EarsOpen』の特徴である“ハイレゾ級の音質”にも納得です。
これまでの骨伝導型は「ああ、骨伝導の音だよね」という感覚。いわゆる、「普段聴いている音」とは区別された音質でした。しかし『EarsOpen』で鳴らされている楽曲は、鼓膜を通じて入ってくる「普段聴いている音」に極めて近い波形を持っています。
高音域は角がピンと立ちつつ、ボーカルのみずみずしさと低域のボリューム感たっぷりです。高い帯域から低い帯域まで、なだらかな稜線を描いているかのような、自然な音作りです。楽器やボーカル各々の解像感も高いため、臨場感があります。
さらにびっくりしたのは、つむじに『EarsOpen』を押し付けても、先ほどと同じように楽曲が高音質で聴こえたこと。要は耳近辺でなくとも、頭部のどこかに『EarsOpen』が密着していれば、音を感じることができるのです。
言うなれば「………聞こえ…ます…か…今……あなたの頭に…直接話しかけています…」って感じの、リアルにテレパシー状態です。テレパシー受信したことありませんけどね。
それにしても、これには本当驚きました。
骨伝導でありながら、なぜこのような高音質にできたのかBoCo株式会社の磯部さん、中谷さんに伺ってみました。
ドライバユニット(音を出す部分)は10年以上かけて開発されたもので、再生帯域はなんと4Hz~40KHz。通常のヘッドフォンの再生帯域が15Hz~20KHzくらいであることを考えると、音の出せる範囲が非常に広いことがわかります。
※ちなみに人間の耳が聴こえる範囲は先の15Hz~20kHz位だと言われています。ならば聞こえないほど高い音や低い音をカヴァーしても意味ないだろう、と思われるかもしれませんが、可聴範囲外の音も「意識していないだけで実際に音の感じ方に影響を及ぼしている」とも言われています。
また、骨伝導には特有の波形があり、300Hzから3KHz(人の話し声くらい)が強く伝わるという性質があります。
一方、人間が感じやすい音域は50Hz近辺、そして12kHz近辺にあるとのこと。これらの複雑な要素を分析し、『EarsOpen』では最終的に自然な音の波形に感じられるよう補正するイコライジング機能を備えています。
この波形補正テクノロジーには、国内トップクラスの音楽メーカーの技術が使用されています。そして、実際、この調整技術と高性能ドライバの両方が合体して初めて、“ハイレゾ級骨伝導”が成立するのです。
耳をふさがないため、音楽を楽しむ一方で、周囲の音もしっかりと聞くことができます。また、音漏れもほとんどありません。
・ 移動中も安心して音楽を楽しむ
・ 音楽を聴きながら会話する
・ オフィスで仕事をしながら音楽を聴く
・ 音楽を聴きながら安全にランニングする
生活におけるBGMが、文字通り違った聴こえ方になりそうです。
『EarsOpen』の技術はもともと、難聴の人のために補聴器の開発をしていた際に培ったものでした。
「聞こえればいい」というところに「高音質で」という条件を加えたことにより、難聴の人だけでなく健常者にも同じリスニングスタイルをもたらしました。
実はこれってすごいことなんです。
健聴者も難聴者も、同じデザインの『EarsOpen』を付けることができるので、難聴者の人にとっては補聴器を付けている風ではなくなります。
難聴になると「声をかけられるのが怖い」と考え、家にこもりがちになる人が多いと言われています。加えて、娯楽であるテレビも、聞こえないがゆえにボリュームばかりが大きくなって家族とのあつれきが生じ、孤独になるパターンもあるそうです。
これまで「何となくハードルが高い」と感じていた補聴器ですが、『EarsOpen』はその垣根をより低くすることに役立ちそうです。
「健聴者、難聴者に関わらず、骨電導技術で幸せになって欲しい」と磯部さんは締めくくりました。
『EarsOpen』は『GREENFUNDING by T-SITE』で支援募集中ですが、残り60日にして現在、3,800万円以上の支援を得ています。目標金額100万円に対し、なんと3800%!
4月後半には東京渋谷の『TSUTAYA』にて、体感スペースの設置も予定されています。
様々な可能性を秘めた『EarsOpen』、実際に使えるようになるまであとわずか。その登場を楽しみに待ちたいところです。
世界初、ハイレゾ級骨伝導CLIP型イヤホン「EarsOpen(EO)」 | GREEN FUNDING by T-SITE
https://greenfunding.jp/lab/projects/1848?planner_id=39422
※記事中の製品写真は試作品です
※サイト画像は『GREEN FUNDING by T-SITE』より引用