- 週間ランキング
2月28日より3月5日の間、フランス・パリで『Salon international de l’agriculture』(パリ農業国際見本市)が開催されました。世界最大級の農業見本市と知られ第54回目となる今回、実際に筆者が参加してみたのでその様子をレポートいたします。美食大国であると同時に農業大国でもあるフランス各地の名産品を一度に体験できるという、食通には堪らないイベントだったので、グルメの方必見です!
ヨーロッパ最大の耕地面積を誇るフランス。その首都パリで行われる世界最大級の農業見本市が『パリ国際農業見本市』です。約1週間に渡って約4000頭の牛、馬、羊、ヤギ、豚などが集結し、品評会が開かれたり関連産業の最新商品の展示が行われるなどします。会場内に農業の現場をそのまま都会に持ち込んだかのような再現度の高さが特徴で、パリに居ながらも田舎の農業を体験出来ると合って親子連れにも大人気の本イベント。
さらにフランス全土の食品生産者が一堂に会し、ワイン・チーズ・ハムといった郷土の特産品のコンクールも多数開催。参加者は数千人にも及び、その多くが実際にブースで試食したり購入したりすることが可能です。
会場は巨大で、畜産・加工食品・農作物・そして農業サービスという4テーマの下に、7つのパビリオンで盛大に行われます。またこの見本市ではフランス政界の重要人物が必ず訪れることでも有名で、一種の政治パフォーマンスが繰り広げられる舞台にもなり連日フランスメディアで取り上げられるほどの注目度。今回は数か月後に大統領を控えているため、候補者がこぞって訪れていました。
公式サイト:
https://en.salon-agriculture.com/[リンク]
食料自給率が高いフランスでは、農作物に対する真剣度が日本と比べ半端で無いことを良く感じます。特に有機野菜、いわゆる「bio」野菜はとても人気で、パリ中のいたるところにビオ野菜専門のスーパーがあったりします。そんなこんなで、農作物パビリオンではなんと会場内に土を敷き、本物の野菜を植え込みフランスの畑を完全再現していました。およそスーパーで目にするであろうほぼ全ての野菜が紹介されており、季節外れのヒマワリも何故か満開という徹底ぶり。信じられないほど瑞々しい野菜は思わず食べたくなってしまうほどでした。
さらに、その場で焼きあがったばかりの有機パンを購入できるブーランジェリー(パン屋さん)も出店。小麦の畑の前で、焼き上がったパンを食べるという非常にありがたみが伝わってくる展示でした。
他にもビオビールの醸造過程が再現されビールを試飲したり、果物の展示エリアでは有機栽培のリンゴが配布されていたりと、舌でも農業を体験できる仕組みになっています。
そしてその麦畑にはなんと超巨大なコンバインが展示され、小麦収穫のまさにその瞬間を体験できるという大掛かりなセットは子供達に大人気。農業がパリにいながら身近に感じる事ができる、フランス農業に対する情熱を感じた瞬間でした。
この見本市の目玉と言っても過言ではないのが、この畜産パビリオンです。この会場に入るなり漂ってくるのは、どこか懐かしい感じがするあのにおい!そう、動物園のおが屑のにおいです!
ご覧の通り、非常に広い建物内は動物の種類ごとに区画別けされており、それぞれの場所に大量の動物が展示されていました。柵ごとにその動物の生産者情報が記載されており、産地による違いが一目瞭然です。
さらに、このパビリオンには品評会用の砂地が何箇所も設置されており、それぞれの動物が観衆の前でその優劣を競っていました。それにしても、羊たちは皆とても大人しかったのには驚きです。
牛エリアに行くと、やはり大きな動物の方が人気なのか子供たちが牛に触ったりして楽しんでいました。こちらも、生産者によって全く異なる牛が展示されており、とても勉強になります。ちなみににおいはさほど気にならず、ひたすら餌を食べ続ける牛の糞も、かなり頻繁に掃除され衛生面にも気をつけている様子でした。
驚くべきことに搾乳マシンも完全再現されており、初めて見る搾乳の様子には少し感動してしまいました。もちろん、この搾乳機まで牛はお客さんと同じ通路を通るので、会場の通路には常に牛が歩いているというクスリとくる光景も。
ウシの品評会も、ボーッと見ているだけで癒されてしまう独特の雰囲気があります。
規模は小さいですが、家禽類のエリアも盛況でした。面白かった展示としては、卵からヒナがかえる当にその瞬間を公開するというものがあり、目の前で卵を破ってヒナが生まれてくる様子は感動モノです。子供に鳥が生まれる瞬間を見せようとする親御さん達が多く駆けつけていたのが印象的です。
寝てばっかりの子豚も、子供たちには大人気。
なお、会場内には当然のように各動物の生肉やチーズが販売されていました。改めて、我々の食卓に並ぶ動物のありがたみを感じるとともに、「どうやってハンバーガーが出来るの?」ということを子供たちに直に伝える絶好の機会でもあるのでした。
農業・畜産パビリオンを見学した後は、いよいよ『食』のパビリオンへと進みます。
食に関するエリアは主に「フランス国内」と「フランス国外」と分かれており、フランス地域圏ごとの特色がにじむ展示がされています。ここで何よりも重要なのが、「試食・試飲」です。これ抜きにはこの農業見本市を語ることは出来ない!というほど、とにかくそこら中でハム・チーズ・カキ・フォアグラの試食やワイン・ビールの試飲をすることができます。筆者も行く前まではにわかに信じ難かったのですが、実際に行ってみると試食だけで満腹になるほどでした。
さらに、その試食も著名なシェフによる実演作品だったりと、フランスの本気を感じさせるとても美味なものばかり。
シェフの実演を見ていたら配布されたローストビーフ。とても美味しかったです。
食品の配布は非常に頻繁に行われており、通路を歩いているだけでフランス中のグルメを堪能できるというまさに夢のような空間です。そしてそのどれもが絶品。各地方の生産者が地元の味をアピールするためか、とにかく新鮮で選りすぐりの食材を提供しているんだなあと感じました。
「ノルマンディー」「ブルターニュ」「アルザス・ロレーヌ」といった風に地域圏ごとに会場が分割されており、様々な種類の食品を各ブースで試し、購入するというシステムです。中でも角打ちスタイルのブースが多く、カキやフォアグラをワインとともに立ちながら楽しむという光景が至る所で見られました。
中でも海がある地域圏では、カキがとにかく人気なのは流石フランス。コルス地域圏(コルシカ島)のエリアでは大きなオイスターバーカフェが盛況でした。
そして勿論そこら中でチーズが競うように販売されており、フランス各地のチーズを食べ比べる最高の機会でもあります。すぐ近くには大量のワイン業者が軒を連ねており、試飲だけで酩酊寸前までいきました。
ワインは多すぎるので、あえてビールを多くテイスティングしてみました。
フランスではドイツ側のエリアで盛んにビールが生産されており、ローカルなブリュワリーが非常に多い事で有名です。出展されていたビールはほとんどすべて見たことも無い銘柄でしたが、どれも個性的で美味しいビールばかり。パリに居ながらして地方のローカルな逸品を発見する楽しみもあります。
ノルマンディー地域圏の紋章にもある、レオパード(ヒョウ)のノルマンディー君(筆者命名)が来ていました。ノルマンディー地方のブースは特に気前が良く、カキやシードル、焼き菓子などが沢山無料配布されており、ノルマンディーの高感度が非常に上がりました。ノルマンディーの人の温かみも嬉しかったです。
国外パビリオンではモロッコ、セネガル、コートジボワールなど、フランスと特に関係の深い国々のブースも多数出展されており、国際色豊かなカオス空間を演出。とても1日で全て見て回ることは不可能なほど、多様性に富む展示には脱帽。
そしてパティシエ大国フランス、もちろんスイーツなしには語れません。
会場の至る所にジェラート・ショコラ・ケーキ・ボンボンなどが山のように積まれています。そしてあるわ、あるわ。大量のマカロン……。
日本でも見られるような高級スイーツ然とした風ではなく、庶民的な菓子という感じの佇まいが新鮮です。
まだあります。
水産パビリオンでは、有名シェフによるアンコウ捌きの実演ショーなどが行われていました。フランスでもここまで魚の人気があったのか! と驚くほど多種多様な水産物が展示されていました。
子供向け魚捌きのワークショップも行われており、フランス流食育の現場を目撃してしまった気分です。なお親子連れの数は本当に多く、子供も大人も本気で楽しめる展示や催しの数には圧巻。
会場は7つのパビリオンからなっているのは先述したとおり。メインの建物以外には何が展示されているのかな?ということで、まずはその中でも最小の“Canins(イヌ)”パビリオンに行ってみました。
「イヌ?農業と関係ないじゃん!」と思われるかも知れませんが、この見本市では日常生活に関わる動物は全てと言っても過言ではない程網羅しているのです。今回は牛、豚、羊、ヤギ、馬、ロバ、ポニー、鶏などの家禽、犬、猫、ウサギなどの合計3850匹もの動物が集められたそうです。
“イヌ”パビリオンでは、およそイヌに関連するあらゆる商品、ドッグフード・首輪やリード・イヌの服などが各企業から展示されており、ドッグフードの試供品も配布。また一歩奥へ進むと、ピンクのカーペットの上に上品なイヌが整然と並びドッグショーが開催されていて、おフランスなワンちゃんに観客の目も釘付け。さらにその奥ではブリーダーによる子犬の展示が行われており、数では劣りますがネコも多数展示されていました。
イヌパビリオンを出ると、突然大勢の馬車が通り過ぎていきます。その行く先には、より大きな規模の“ウマ”パビリオンがにぎわっていました。
乗馬文化が日本とは比較にならないほど栄えているフランス。そのフランス全土から選りすぐりの優秀なウマが集められ、コンテストが開催されていたのです。また鞍やアブミといった乗馬道具の新商品も展示販売されています。老若男女がウマと触れ合う、日本では全く馴染みのない光景だなあとしみじみ感動してしまいました。
会場の片隅にはなぜかアルパカが!
さらに、他のパビリオンに行ってみるとなぜか大量のウサギが展示されていたりと、まさに動物づくしだった『パリ国際農業見本市』。美酒に酔いしれ食い倒れたい人にも、動物が大好きな人にも超オススメなイベントです。2月末から3月頭にパリに滞在するなら、絶対行くべきと自信を持ってお勧めできます!
※画像は筆者撮影