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本作の一番の見所と言えば、危険な指令に「やめときゃいいのに」挑んでいく若者達の狂騒と緊迫。なぜ彼らはやってしまうのか? そして、このゲームはいつか現実世界に登場するのか? 今回は「2ちゃんねる」開設者で現在「4chan」管理人、「ニコニコ動画」など様々なウェブサービスを生み出してきた西村博之(ひろゆき)氏に映画や若者のネット文化について聞いてみました。
―ひろゆきさんは既にパリにて本作をご覧になっているとのことですが、率直な感想はいかがですか?
西村博之氏(以下、ひろゆき):オシャレな映画だなって思いましたね。あと女の子が可愛い。この主人公の女の子(ヴィー)って引っ込み思案で目立たない女子だっていう設定ですけど、十分可愛いですよね。日本だとブサイクな子の役はちゃんと芸人さんとかがやるのに、アメリカって女の子は美人しか出てこないのがなんでだろうっていつも思います。
▲引っ込み思案で地味な女子という設定のヴィー。「地味じゃない、可愛いじゃん!」とひろゆき氏。
―あはは、確かにヴィーは観客側からすると全く“目立たない女子”では無いですよね。
ひろゆき:内容に関しては「いまの世の中こういうの起きるよね」という内容やネタがたくさん盛り込まれているので、今観た方が絶対面白いと思いますね。“今ドキ”感を上手い形で抽出しているなと思いました。今YouTubeで「ドッキリ」をやり続けているユーザー/チャンネルってたくさんいますけど、ドッキリで人をおどかして、その動画が100万再生くらいいけば、20、30万円の収入が得られるわけで、ある意味「人に迷惑をかけてお金を稼ぐ」という、『NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム』みたいな土壌はもうあるんですよね。なので、そういった生配信事情に詳しく無い方が映画を観ると、近未来SFの様に感じるかと思うのですが、僕は「あるある」って観させてもらいました。『世にも奇妙な物語』の様に今と少しだけズレた現実世界のお話が好きなのでこれもそうだなと思いました。ドキュメンタリーにちょっと脚色しています、といったテイストの作品で。
―なるほど、リアルにあり得る、いやもうここまで世界は来ているぞ、と。
ひろゆき:ノエル君っていう、浅草の三社祭等でドローンを飛ばして逮捕された子も「アフリカTV」でリスナーからお金をもらって食っていたので。「お金儲かるんだったら何やってもいい」って、DeNAみたいな大企業がやっちゃってるので、大きな資本が「NERVE/ナーヴ」の様な仕組みをどーんと作って始めるというのは近い将来あるのかもしれないな、と。昔からある「ライブチャット」という文化だって、画面の向こうで女の子が脱いでお金を稼ぐという「NERVE/ナーヴ」に近いものも感じます。「法律的にはセーフだけど倫理的にはアウト」という行動を大企業が「view数が稼げるから」と良しとした時に、この「NERVE/ナーヴ」の世界が出来上がると。おかしな事をすればするほど儲かるという。
―注目されれば何でもいいのだ! 的な行動ですよね。映画に登場する指令の中で、ひろゆきさんがやりたくないのってどれですか?
ひろゆき:目隠ししてバイクで96km/時速は死ぬから嫌、タトゥーも痛いから嫌、後は大丈夫かな。
―10m高さをはしごで渡るのも、タワークレーンに片手でぶらさがるのも?
ひろゆき:全然いけますね。高い所って高いだけで、難易度が高いわけでは無いので。
―線路に伏せて電車が自分の上を通過するのはどうですか?
ひろゆき:絶対に電車が自分の体にかすらないのなら出来ますよ。このチャレンジってYouTubeでも結構見かける気がします。ロシア人とか。ロシア人は本当にバカですよ。命を懸けて危険な事をするっていう動画は大体ロシア人がやってます。「めちゃくちゃ高い場所でセルフィー」とかも、ロシア人はそこヤバいだろって場所に行きますしね。
―過激なロシア人……。イメージですがなぜか納得出来ます(笑)。こうやって、危険な事や過激な事をやってview数を稼ぎお金儲けをするという流れって、何年くらい前から始まったのでしょうね。
ひろゆき:広告がちゃんと入る様になってからですよね。「ニコニコ動画」がはじまって10年で、10年前には無かった仕組みなので、5年前くらいですかねえ。昔はアドセンスの権利を持っている人だけお金を稼げて、その審査が厳しかったけれど、今はYouTubeアカウントを開設したらすぐ出来ますからね。後は、スマホで動画を撮るのが当り前になった時代、Android携帯の価格が安くなったタイミングでも増えたと思います。
それで、過激な事をする人がユーザーに増えれば、観る人も増えてサービスは盛り上がるわけですが、過激すぎると広告クライアントはつきづらくなる。そんなの関係無くview数を稼げば良いというビジネスモデルもあるのですが、日本だと費用対効果が悪いと思うんですよね。なので、尖った事をやっているのは「ニコニコ動画」よりも「アフリカTV」とかの方が盛り上がっていますね。
▲ひろゆき氏も「死ぬからイヤ」という“目隠し”バイクチャレンジ。
―今ではすっかり認知度を得たYouTuberですが、YouTuber的な人々が出ててきた時、ひろゆきさん的には「これは伸びる!」と思いましたか?
ひろゆき:僕はずっと「2ちゃんねる」というテキストサイトをやっていたので、文章を書くのってそれなりにコツがいるし、能力がいる中、動画が簡単に撮れればやる人は増えるだろうなと思いました。あと動画には「一定時間同じ人を見続けると、勝手に親近感沸くの法則」があると思っていて。テレビに出ている人も同じ人を見続けているから勝手に親しく思ってしまうわけで。なので、YouTuberでも生主でも、顔もカッコ良く無くて何も面白くない人が大人気だったりするじゃないですか、毎日毎日観てたらやっぱり応援したくなっちゃうんですよね。
―映画でも、ヴィーは挑戦を次々にクリアしてどんどんリスナーの人気を得ていきますよね。ひろゆきさんが最近観たYouTuberや生主で「これは危険だ」と驚いた人はいますか?
ひろゆき:アメリカ人のCoyote Petersonという人なのですが、「色々な虫の毒を実際にくらってみよう」の人ですかね。マンガ『テラフォーマーズ』にも出て来る毒を持っている「バレットアント」という蟻に刺されてのたうち回っている姿とか、ヒルに吸われて血が止まらない絵とかを、その人は生物学的知識も豊富なので「今自分の中で毒がこうまわってきている」と説明しながら映しているのは、すげえなあと思います(笑)。
【参照動画】STUNG by a BULLET ANT!
https://www.youtube.com/watch?v=tXjHb5QmDV0 [リンク]
―また、映画の中では顔の見えない匿名リスナーが挑戦者を“煽る”というシーンも見られます。ひろゆきさんは現在「4chan」の管理人をしていますが、アメリカの“匿名事情”ってどうなんですか?
ひろゆき:アメリカに比べて日本はまあゆるいと思いますね。アメリカで、12月の頭にワシントンD.C.のピザ屋にショットガンを持った男が押し入って逮捕された事件があったのですが、あれって4chanに流れた「そこのピザ屋で児童売買が行われている」というデマを信じて、男が動いちゃったんですよ。「子供達を助けなきゃ!」って。日本の嫌がらせって住所特定して高価な出前を頼むとかそんなレベルだと思うんですけど、アメリカ人は動いちゃうので。僕の友達の4chanでボランティアをしてくれている人も、「あいつの家に白い粉があるぞ」ってデマ流されて、実際に粉を送りつけられて、朝起きたら家にFBIがドドドドって来たらしいですからね。
―凄すぎます(笑)。熱狂しやすい匿名性に注目を集められるなら危険も厭わないという姿勢に、本当に来年あたり「NERVE/ナーヴ」の世界が現実になるのでは無いかと思ってきました。
ひろゆき:アメリカは特に寄付文化で、面白い動画を観る為だったら1ドル、2ドルぽんぽん払うので本当に出て来そうな気がしちゃいますね。あとは、昔のニコ動の生主ってバカでも度胸とかチャレンジ精神があればお金を稼げた、ある意味社会不適合者の受け入れ先になっていたと思うのですが、YouTuberって動画を撮って編集して毎日アップして……ってちゃんとした人しかトップランカーになれないんですよ。だから、例えばですけど行き場の無くなった生主とかYouTuberみたいな人が「NERVE/ナーヴ」みたいなサービスが出来て「これやったらお金あげるよ」って言われたらやっちゃうと思うので。日本でもあり得る話だと思います。
あ、あと映画の中で、ジュリエット・ルイスがお母さん役、しかもちょっと疲れた看護婦っていうのがビックリしましたね。『カリフォルニア』でおっぱい出してたジュリエット・ルイスが。もうそんな時代なんだって思いました(笑)。
―ひろゆきさんと同じく、ジュリエット・ルイスの落ち着き具合に驚く映画ファンもたくさんいるかもしれませんね(笑)。今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!
『NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム』本予告
https://www.youtube.com/watch?v=IcQI8rl3Zoc [リンク]
映画オフィシャルサイト | アナタも参加できる「リアルナーヴ」を実施中!
http://www.start-nerve.jp/real/bis/
映画『NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム』 1月6日(金)日本公開
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