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何年も同じ会社で働き、責任ある仕事も任されるようになったし、実際に成果を出して会社の利益にも大いに貢献しているのに、全然給料が上がらないことを不満に思ったことはありませんか?
「成果主義」を標榜している会社であっても、成果を出した金額がそのまま給料に反映されるかというと、そんなことはありません。
ある年、会社に年間数億円の利益をもたらすことができたとしても、(報奨金として数万円〜数十万円くらいはもらえることはあっても)、年収が500万円から5000万円になることはないでしょう。
なぜなら「給料は、そもそも努力や成果をベースに決まっているわけではない」からです。
年収1000万円の人でも年収300万円の人でも、変わらず生活に余裕を感じられないのは、「給料の構造」を理解することなく、ただ会社から求められる成果を上げるために働き続けているからです。
私たちの給料は何を基準に決められているのか。給料の多寡にかかわらず生活に余裕がないと感じてしまうのはなぜなのか。どうすればしんどい働き方から脱することができるのか。
これら疑問に非常にわかりやすく答えてくれるのが、『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』という本です。
本書のテーマは、資本主義経済の仕組み・構造を理解することで、「しんどい働き方」から脱する方法を見出すことです。
それが分かれば、いまと同じ会社、同じ仕事であっても「幸せな働き方」を手に入れることができます。
小暮さんの本は『どうすれば、売れるのか?――世界一かんたんな「売れるコンセプト」の見つけ方』をはじめ何冊も読んでいますが、個人的には本書が一番が一番おすすめです。新書でこれだけ面白く、実用的価値のある本はなかなかないと思います。
今回は、本書の要点を簡単にまとめてみます。
小暮さんは、給料の決まり方には次の2種類があるといいます。
②「利益分け前方式」は、自分が稼ぎ出した利益の一部を給料としてもらうという考え方で、外資系金融機関や歩合制で給料が決まる会社が採用している方式です。
社員があげた成果に100%応じて給料が支払われるため、成果を出せれば収入が増える一方で、成果が出せなければ給料は減ってしまいます。
最近、日本企業でも「成果主義」を取り入れるケースが増えてきていますが、日本企業が採用している成果主義は「①必要経費方式」の一環として採用されていることが多く、外資系金融機が採用している「②利益分け前方式(成果報酬方式)」とは、根本的に考え方が異なるといいます。
というのも「利益分け前方式」の場合、成果が上げられなければ生活できないほど給料が低くなる可能性もあるし、収入がゼロになる(クビにされる)リスクもあるからです。
一般的な日本の企業においては、どれほど無能な社員であっても簡単にクビを切られることはないし、生活ができないほどに給料を下げられることもありません。
これは、ほとんどの日本企業が「①必要経費方式」を採用しているからです。
必要経費方式とは、「明日も同じように働くために必要なお金」が「経費」として支払われるという考え方です。
たとえば労働者が一日働いて、翌日も働けるようになるためには、食事や睡眠といった最低限度の生活を送るために必要なもの加え、気晴らしのために飲みにいくことや、友人と連絡を取るためのスマホなどが必要です。
必要経費方式とは、このような「労働者として働き続けるために必要な経費」だけが、給料として支払われているというイメージです。
そのため「次の日も同じように働くための経費」が高い人は、それだけ給料が高くなります。
たとえば扶養すべき家族がいる場合、「明日も同じ仕事をするために必要な費用」には家族の生活費も含まれるため、「家族手当」がついたりして給料が高くなります。
会社の利益に全く貢献していないようなオジさん社員の給料が、稼ぎ頭の優秀な若手の給料よりも高くなるのは、その会社の給料が「成果」に応じて支払われているわけではなく、「必要経費」に応じて支払われているからなのです。
そして高給取りであれワーキングプアであれ、みんながみんな「自分の生活には余裕がない」と感じている理由は、給料が「必要経費分」だからという点に根本原因があります。
年収1000万円の人も年収300万円の人も、「その仕事を明日も続けるために必要な分」しか支払われないから、常に余裕がないと感じてしまうのです。
こういったベースにある仕組みを理解せずに、各企業の「待遇」や「人材に対する考え方」を見比べても、あまり意味はないと小暮さんは指摘します。
結局、どこの企業だろうと、労働力の価値分しか給料を受け取れないのは変わらないからです。
では、どうすれば私たちは生活に余裕を感じられるような給料を受け取ることができるのでしょうか。
それを知るためには、カール・マルクスの『資本論』に出てくる「使用価値」と「価値」という言葉の意味を理解する必要があります。
「使用価値」とは「有益性・有用性」という意味で、「(その商品やモノを)使ってみて意味がある、何かの役に立つ」という意味です。
たとえば「パンの使用価値」は、「食べた人の空腹を解消すること」です。人がそれを食べて空腹を満たすことができるから、パンは使用価値を持つと考えます。
私たちが普段使っている「価値」という言葉は、この「使用価値」の意味で使われることが多いでしょう。
一方、『資本論』における「価値」という言葉は、まったく別の意味で使われています。
『資本論』における「ものの価値」とは、「それを作るのにどれくらい手間がかかったか」で決まります。つまり「労力がかかっているもの」「人の手がかかっているもの」が「価値を持つ」ということです。
パンに「価値」があるのは、「職人が朝から仕込みを始めて、時間をかけて焼き上げる」という手間がかかっているからです。
商品の「値段」は、その商品の「価値」を基準に決まるため、商品の価値が大きいほど、値段は高くなります。
そして「価値の大きさ」は、「その商品を作るのにかかった手間の量」で決まります。作るのに1時間かかる商品よりも、100時間かかる商品のほうが、大変な手間がかかったぶん「価値」が高くなります。
ただしこれは「社会一般にかかる平均労力」で決まるため、わざと効率を悪くして労力をかけたからといって「商品の価値」が大きくなることはありません。
この「価値=値段」という理屈が、私たちの給料の金額にも当てはまります。というのも、会社員は会社のために、自分の労働力を「商品」として売っているからです。
労働力という商品の「価値」も、「それを作るのにどれくらい手間がかかったか」で決まります。
明日も同じ仕事を続けるためには、食費、家賃、洋服代、ストレス発散のための飲み代といった「必要経費」がかかり、これがなければ労働力という「商品」を提供し続けることはできません。
つまり「労働力の価値」とは、「労働力の再生産に必要なものの価値の合計」であり、これが会社から支払われる給料の基準となります。
もちろん「必要経費」といっても、「自分にはこれだけ必要!」というのは通用しません。上述の通り、商品の「価値」は「社会一般的に必要な手間の量」で決まるからです。
必要経費分しかもらえない、つまり「必要以上」はもらえないから、どれだけ頑張っても余裕ができず、しんどい働き方から抜け出せないのです。
しかし「社会一般的に必要な費用しかもらえない」ということは、裏を返せば「社会一般に必要とみなされている分は、たとえ個人的には不要でももらえる」ということです。
社会一般にかかる必要経費より、個人にかかる必要経費が少なければ、その分「儲かる」ことになります。
これが、本書の言う「しんどい働き方」を脱するための考え方の肝となります。
本書では、しんどい働き方を抜け出すためには「自己内利益」を増やす必要があるとして、その方法について次の2つを挙げています。
「自己内利益」とは、文字通り自分の中での利益(満足度や幸福度)のことで、「年収・昇進から得られる満足感」から「必要経費(肉体的・時間的労力や精神的苦痛)」を引くことで得られます。
「年収・昇進から得られる満足感」ー「必要経費(肉体的・時間的労力や精神的苦痛)」=「自己内利益」
私たちが目指すべきなのは、「自己内利益」を増やすための働き方であり、そのためには「その収入を得るために、自分はどれほどの費用を支払わなければいけないか」を考えることが重要です。
ここでは①、②それぞれに関する具体的な方法について、一部をピックアップして解説します。
満足感を変えずに必要経費を下げることができれば、差額で「自己内利益」を増やすことができます。
ここでいう「必要経費」とは、具体的には「肉体的・時間的労力」であり「精神的苦痛」です。
たとえば年収1000万円は間違いなく「高給」ですが、その仕事は激務です。その給料を得るために身体を壊し、精神的に極度のストレスを抱え、通常の生活もままならなくなってしまっては、自己内利益はマイナスとなってしまいます。
給料の絶対額ではなく、「自己内利益」をプラスにする働き方を実現することが、幸福感、満足感を得るための肝であり、個人が目指すべき働き方です。
では、どうすれば「満足感」を変えずに「必要経費」を下げられるのか。重要なのは、「世間の相場」よりも下げるという視点です。
「肉体的疲労」は、仕事の内容によってほとんど決まってしまい、個人差はあまりありません。そのため世間相場よりも労力を少なくしようとしてもなかなかできません。
しかし「精神的苦痛」については、人によって大きく差があり、自分の考え方や態度、仕事の選び方次第では、世間相場よりも大幅に小さくすることが可能です。
つまり「世間相場よりもストレスを感じない仕事」を選ぶことができれば、必要経費を下げることができ、自己内利益を増やすことができるということです。
精神的に強いプレッシャーを受ける仕事や、常に集中力を必要とする仕事は、また次の日も同じように働けるように、「精神的エネルギー」を回復する必要があります。
ノルマを追われたり顧客から文句を言われたりする営業職や、昼夜土日を問わずいつも仕事モードでなければならない出版社の編集者が、「営業手当」や「編集手当」をもらえるのは、それだけ精神的苦痛が大きい(と社会一般で考えられている)ため、その回復分の「経費」が上乗せされているからです。
しかし、もし自分が社会一般で思われているよりも精神的に疲れないとしたら、その経費分だけ「自己内利益」は増えることになります。
経費は「平均」なので、たとえば営業が大好きで、顧客とのコミュニケーションに一切ストレスを感じないからといって、その人だけ営業手当がなくなることはありません。
その人にとってはストレスを回復するための費用など必要ないのに、社会一般の価値基準として支払われるわけです。
こうなれば自己内利益はプラスとなり、余裕のある働き方ができるようになります。
尚、本書では「ストレスを感じない仕事を選べ」というのは、「得意な仕事や効率的にできる仕事を選べ」という意味ではないと補足しています。
得意なことで仕事を選べば、成果をあげやすいため「優秀な人材」にはなれますが、それがそのまま「自己内利益」が増えるわけではないからです。
とはいえ個人差はあれど、一般的に自分が苦手なことをやって成果が出せない状況よりも、得意なことで人よりも成果を挙げられる仕事のほうが、精神的苦痛を感じる量は少ないはずです。
自分にとってストレスを感じない仕事が具体的に思い浮かばない人は、まずは自分の強みが活かせる分野とは何なのかを知ることから始めましょう。
自分の強みを知るためのツールとしては、名著『さあ、才能に目覚めよう』が有名ですが、「リクナビNEXT」に登録すれば、無料で本格的な診断サービスである「グッドポイント診断」を受けることができます。ぜひ試してみてください。
2つ目の「必要経費を変えずに、満足感を上げる方法」は、いかに「使用価値」ではなく「価値」を使った働き方をするかがポイントです。
ここでいう「満足感を上げる」とは、具体的には昇給・昇進するということです。
たとえば残業をすれば残業代をもらえるし、今月の営業ノルマを達成すればインセンティブをもらえるので、その分の給料は増えます。しかしその給料を維持するためには、翌月もまた残業し、ノルマ達成のためにゼロから努力しなければなりません。
これは労力(必要経費)を増やして収入(売上)を上げているだけなので、自己内利益を増やすことにはなりません。
いまの2倍の給料を稼ぐためには、今の2倍働かないといけないと思っている人は多いと思いますが、労働力の「価値」を使って稼ぐようにすれば、「労力(必要経費)」を変えずに、「年収(満足感)を上げる」ことが可能です。
「労働力の価値」には、食費、家賃、洋服代、ストレス発散のための飲み代といった「次の日も同じ仕事を続けるために必要な費用」以外にも、「その仕事ができるようになるための準備」に費やした労力も加算されます。
なぜなら深い知識、幅広い経験、高度なスキルは、身につけるのに大変な労力と時間を要するため、仮に他の人(素人)に同じ仕事をやらせようとした場合、企業は学習やトレーニングをさせて、その費用を負担しなければならないからです。
これは労働力の「再生産コスト」が高いということです。知識やスキルを身につけることで「労働力の価値」を高めれば、それが「土台」となって、給料の基準金額を引き上げることができます。
たとえば企業の社外取締役や顧問といった仕事は、「過去からの積み上げ」を使って行われる仕事です。
毎日会社に出勤して一日中デスクワークをするわけではなく、定例の会議に参加したり、何かあったときに招集されたりする仕事ですが、ほとんどの場合、その企業の新入社員はおろか、中堅社員よりも高い給料が支払われています。
それは「過去からの積み上げ(土台)」に対してお金が払われているからです。
では、具体的にどうすれば「労働力の価値」を積み上げることができるのでしょうか。
小暮さんは、「自分の労働力を消費せずに投資する」という考え方だ重要だと説きます。
目先のキャッシュを基準に仕事を選ぶのではなく、「長期的な資産を作る仕事」を選ぶということです。
例えば次の2つのような仕事があったときに、後者の方を選べるかどうかです。
もちろんレンタルビデオ店の仕事であっても、意識次第で労働力の「価値」を高める経験は積めるでしょう。
重要なのは、その仕事をすることで得られる経験の「希少性」、つまりその知識やスキルを習得するためにかかる「社会一般的な労力の大きさ」に目を向けることです。
こうした観点でいえば、レンタルビデオ店の店員よりも、ベンチャー企業で働くほうが投資効果が高いといえるでしょう。
目先のキャッシュに惑わされることなく、将来に向けた投資となる仕事を選べるかどうかが、労働力の「価値」を積み上げるためには重要なのです。
あなたの今の仕事は、「将来の収入の土台となる仕事」でしょうか?
就職活動にせよ転職活動にせよ、仕事を選ぶ際に「その業界・企業が将来伸びていきそうか?」「給料や福利厚生は?」といった条件面を重視する人は多いと思います。
しかし自分がその業界・会社で働いたときに「どれくらい自己内利益を確保できるか?」という視点で選ぶ人はほとんどいないでしょう。
だからこそ、本書が教えてくれる情報にはこの上ない価値があります。
もし本気で転職を考えるようでしたら、転職エージェントを利用して、自分の市場価値(転職後の年収)がどれくらいになるのか、プロに相談してみましょう。
その上で、次の2点について真剣に考えてみてください。
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