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DXの正式名称は「Digital Transformation」で、デジタル技術の力を駆使して業務を改革していこうという取り組み全般を指します。元々は一般的なライフスタイルにおけるデジタル化も含めた表現でしたが、最近ではビジネス領域におけるITを活用した業務改革を指すことが一般的です。
DXは単にIT技術を採用したり、システムを導入するだけにとどまりません。デジタルの力で業務を刷新するのはもちろん、組織文化レベルで改革を実行し、デジタルありきの新しい文化を定着させ、データに基づく客観的な意思決定ができるようシフトするところを最終目標と考える必要があります。
従来の日本企業においてはIT革命に伴うシステム導入が進められてきましたが、IT革命から20年以上が経過した現在、これらのシステムは老朽化しつつあるのが現状です。
DXは旧来のシステムを廃止し、最新のテクノロジーをフル活用できる環境を整備することで実現できるため、古いシステムは潔く廃止することが求められます。
DXはここ数年で大きなトレンドとなった取り組みですが、ここまで多くの企業でDX推進が求められるようになったのは、いくつかの理由があります。
DX推進は国を挙げて行われている国家プロジェクトの一つですが、政府が強くDXを後押しする大きな理由は、「2025年の崖」問題を抱えているためです。
「2025年の崖」は、経済産業省が2018年に公開した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」にて提唱された概念です。日本国内でこのままDXが進まず、旧来の環境で事業を継続した場合、2025年を境に毎年日本全体で12兆円もの損失が発生することを端的に表現しました。
参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html
最大12兆円という数字は、次項で解説する損失から計上される金額です。この額は従来の3倍に当たる損失であり、早急な企業の取り組みが求められていることがわかります。
業務のDXが進まないことは、デジタル化が進むグローバル市場の動向とは真逆の展開であるため、企業の多大な機会損失をもたらす可能性があります。
わかりやすい例が、会社同士でシステムの互換性が得られず、これを理由に競合他社へクライアントが流れてしまうケースです。近年はクラウドサービスの活用が進んでいることで、お互いに互換性のあるサービスを利用し、密なコミュニケーションや業務のコラボレーションが実現しています。
旧式のシステムに固執して使い続けていると、最新のクラウドサービスとこれらの老朽化したシステムでは互換性が得られず、コラボレーションや情報共有において、安全性のリスクや業務上の負担増大に発展する可能性があります。
このため、クライアント企業は互換性のあるシステムを備えた企業との取引を望み、互換性のない企業は市場に取り残され、機会損失だけが重なってしまうというケースが想定されています。
老朽化したITシステムは、年を重ねるごとに維持管理のコストが増大する点も懸念されています。ITシステムは常に技術革新が進んでいるため、10年以上前のシステムを扱う場合、今では陳腐化したプログラミング言語やパーツを使って保守管理を行わなければならないケースも珍しくありません。
このような古い技術を必要とするシステムは、それを扱える技術者の数もポピュラーなシステムと比べて非常に数が限られているため、その分人件費が高くなってしまいます。最新のシステムであれば十分な数のエンジニアが市場に存在するので、保守管理にもお金をかける必要はないのです。
老朽化したシステムは、サイバーセキュリティの面でもリスクが増大します。というのも古くなったシステムは多くの場合セキュリティアップデートが行えず、最新の脅威からは無防備な状態で放置されているためです。
最新のセキュリティ環境に移行するためには、ソフトやOSを最新の状態にアップデートする必要があります。
アップデートを行うためには現世代のバージョンにグレードを高めなければなりませんが、このコストを出し渋ってしまうと、いざセキュリティ被害に遭ったときの被害はそれを超える額へ容易に達するため、思わぬ損失を被ることとなるのです。
DXは、私たちの生活や業務のあり方に大きな変化が生まれたことで、デジタルの重要性が急激に高まり、一気に普及が進みました。
近年で最も大きな社会的な変化といえば、やはり新型コロナウイルスの存在が挙げられます。感染力の強い新型コロナの感染拡大によって、多くの人は自宅からのリモート出社が推奨され、従来の業務環境とは抜本的な変化が生まれました。
自宅から仕事に取り組むためには、オンライン環境の整備はもちろんですが、業務で使用するシステムやサービスにもテコ入れが必要です。クラウドサービスを導入したり、Web会議サービスを導入したりすることで、テレワークでもオフライン同様の働き方ができるよう環境が大幅に刷新されていきました。
また、人々の一般的な消費行動にも大きな変化が生まれています。ECサイト経由でオンラインショッピングを利用することが当たり前になり、デリバリーサービスを使ってさまざまな商品の宅配を注文する機会も以前より増えています。
対面ではなくオンラインで接客を受けるような機会、およびニーズも高まったことで、実店舗での営業ノウハウがオンラインでも活かせるような働き方が求められるようになってきました。
このような変化の時代を生き抜く中では、DXを通じてデジタルツールを導入するのはもちろん、組織文化レベルでの刷新を進め、デジタルありきでの意思決定ができるようにならなければいけません。
働き方改革は、コロナ以前からその必要性が叫ばれてきた取り組みですが、新型コロナの感染拡大とDXの普及を通じて、実現に向けた活動が加速しています。
テレワークの導入は、わかりやすい働き方改革の取り組み事例の一つです。週に1〜2日しか出社しない会社はもちろん、フルリモートで業務を遂行する企業も登場しつつあり、出社負担の軽減や残業の廃止に取り組んでいる会社も現れています。
このような新しい働き方の実現には、最新のクラウドサービスなどを使った業務改革が不可欠です。新しい働き方に移行しても、従来通りのパフォーマンス、あるいはそれ以上の利便性を実現できなければ、改革は進まないためです。
上記のような背景がありながら、DXは全ての企業で問題なく進んでいるとはいえないのが現状です。DXの必要性については以前よりも広く知られるところとなりましたが、それでもDXが進まない企業が依然として多く残っているのにはどのような理由があるのでしょうか。
DXは、確かに以前よりは広く知られるようになった概念ではあるものの、DXが必要な企業にまで、自分ごととして認識できるレベルまで普及は進んでいないのが現状です。
2021年に実施された調査によると、「DXの内容についてある程度知っている」と回答した企業は、わずか16%にしか達していないことが明らかになりました。
従業員規模に応じた認知度のギャップも大きく、DXについて理解のある企業は500人以上の従業員を抱えている組織に偏るなど、中小企業においてDXが進まない様子が伝わる結果となっています。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000236.000021550.html
本来DXは、テクノロジーの力で生産性向上と業務負担の削減を推進する取り組みであるため、人的リソースに乏しい中小企業こそ実践するべきプロジェクトです。にもかかわらず大企業でのみDXが進み、中小企業ではDXが進まないという現状は、企業間の情報格差や経済格差がより広がっていく要因として懸念される事態でもあります。
中小企業の全てがDXについて関心がないというわけではなく、中には現状に危機感を覚え、DXを積極的に進めたいと考えている組織も少なくありません。ただ、DX推進が中小企業で実施されない理由の大きな原因が、初期費用の問題です。
新しいハイテクを導入する際、ネックとなるのはそれらの価格が高額であるという点です。特に自社でサーバーを購入したり、独自にシステムを構築するとなれば、多額の費用がかかるため、容易に手を出すことは難しいでしょう。
また、近年は物価高騰や円安の影響を受け、日本で長らく続いていた低金利時代も終わりを迎えるかもしれないと囁かれています。金利上昇が日本で進めば設備投資も下手にできなくなるため、ますます中小企業でのDXは進まないこととなります。
このような問題を回避する上でも、正しいDXに関する情報収集が味方となってくれることがあります。
例えば近年多くの企業で採用されているクラウドサービスは、初期費用がかからない、定額課金によるライセンス形式でのサービス利用が一般的です。高い初期費用をかけなくとも、最先端のシステム導入を高いコストパフォーマンスで進められるため、中小企業でも負担を抑えたDXを実現可能です。
DXは、実際にプロジェクトを前進できるスキルを持った人材がいなければ進められないという問題も悩ましいところです。DXはただシステムを導入するだけでなく、自社に必要なシステムを選定し、正しく運用できる人材が欠かせません。
DX人材は、市場への供給がまだ不十分ではないことに加え、近年のDX需要の高まりから多くの企業の間で引っ張りだことなっている存在です。そのため新たに人材を確保するためには相応のコストを負担しなければならず、人材確保の予算を捻出できない企業がDXを進められない負のスパイラルに陥っているケースも見られます。
とはいえ、DXに必要なスキルも非常に幅が広く、簡単なシステム導入であればITに明るくないという人でもちょっとした研修を受けるだけで、すぐに運用を開始できます。DXは新たに人材獲得が必要と嘆く前に、自社社員を育成してDXに対応できないかを検討することも大切です。
DXにかかる費用を、システム部門の予算から捻出を検討する組織もありますが、現在運用しているシステムが老朽化し、その維持管理にコストがかかりすぎていると、十分に予算を賄うことができない問題を抱えてしまいます。
いわゆるレガシーコストの問題は、将来組織にダメージを与えることになるだけでなく、現在進行形で改革に悪影響を与えます。レガシーシステムがすでに大きな負担となっていることを踏まえ、新たにDXに向けた予算を捻出できるよう、上層部の理解を得ることが必要です。
DXを実現する上では前途多難という会社も少なくありません。ここでは、企業がDX推進を有利に進めるために意識したいポイントをご紹介します。
DXを進める上でまず大切なのは、スモールスタートでできる範囲から進めていくことです。
DXは、最終的には高度に業務が自動化され、AIによる分析が進み、人間は意思決定に関わるだけ、というものが理想とされていますが、これまで手作業で多くの業務をこなしていた会社が、一晩でこのような姿に生まれ変わることは不可能です。
どれだけDXが進んでいる企業でも、できる範囲からDXを進め、徐々にハイテク化を進めてきたところばかりです。そのため、まずは自社の業務の中に潜むDXの可能性を見極め、無理のない範囲でDXによる改善を進めましょう。
例えば社内の書類を全てデジタル化し、ペーパーレス化を推進するだけでもDX化の大きな一歩と言えます。DXによってデータ活用を進めるためには、社内情報がデジタル化され、データ資産として活用する土壌を整えておかなければならないためです。
何気ないペーパーレス化も、将来訪れる高度なデータ活用のきっかけにつながります。
DXは相応のコストがかかる取り組みであるため、一つの部門の意思決定だけで全てのプロジェクトを前に進めることはできません。また、DXは全社的にデジタル化を進めることが前提となるため、全ての部門に対して許可を取ったり、意思決定力のある人物の協力が欠かせなかったりします。
そのため、会社経営に携わる人物が積極的にDXヘ理解を示し、自社にはデジタル化が必要であることを深く理解しておく必要があります。
DXの推進にかかる費用は、IT導入補助金などを活用して負担を軽減することができます。DXは国を挙げて推進している取り組みでもあるため、補助金の種類も豊富です。
地方自治体が独自に提供している補助金制度なども数多く存在するため、まずは自社の条件で利用できる制度を調べるところから始めてみましょう。
企業のDX推進は、以下のステップで進めていくことが一般的です。手順について解説します。
まずは、DXに向けた戦略やビジョンを社内で共有しましょう。そもそもDXによって何を行うのか、DXで会社にどんな変化がもたらされるのか、DXについての正しい理解を深められる機会を設けます。
DXについての知見を固めたあとは、DXによって実現したい課題解決の検討を進めます。DXについての知見がある程度深まっていれば、自社課題に対して必要なソリューションの方向性なども固められます。
課題解決に繋がりそうなDXコンサルやエンジニアの獲得を進め、プロジェクトの推進力を獲得しましょう。
リソースの確保が進んだあとは、体制構築や計画立案を進めます。DXの実施に当たってどのような組織改革が行われるのか、具体的にどんなプランでDXを進めていくのか、事前に検討を行いましょう。
計画の立案が完了したあとは、プランに則ってDXを進めていきます。新しいデジタルツールを導入するにあたり、計画通りに業務効率化が進められているかどうか、効果測定も行いましょう。
期待していたような成果が得られていない場合や、改善の余地がある場合には、どのように改善すれば効果を高められるかを検討し、より効率的な運用を進めましょう。
最後に、実際の企業のDX事例についてご紹介します。
老舗かまぼこメーカーの鈴木蒲鉾本店では、社内コミュニケーションツール・ビジネスチャット「WowTalk(ワウトーク)」の導入によってDXを進めています。
社内コミュニケーションの活性化やセキュリティ対策の面で問題を抱えていたところ、WowTalkにあらゆるコミュニケーションを一本化したことで、高い導入効果を実現できました。
社外に情報が流出するリスクを回避できているだけでなく、テレワークの実践にも役立ち、複数のツールを使い分ける必要もなくなったことで、現場でも高い評判を得ています。
建設会社の三井住友建設では、メールや電話に代わる新しいコミュニケーションツールの導入によって、業務効率化を推進しています。
ビジネスチャット「WowTalk」を導入したことで、メールよりもこれまでのログをさかのぼって振り返ることが容易になっただけでなく、情報共有量が増え、コミュニケーションが円滑になる効果が得られました。
クラウド経由で運用できることもあり、災害時のBCP対策としても優れた効果が期待されています。
本記事では、DXを進めるべき理由や企業でDXが進まない背景、そして具体的にどうすればDXを進められるのかについてご紹介しました。
DXの実践には課題も多いですが、まずは各企業の担当者や経営者がDXについての知見を深めることが大切です。DXには気軽に導入できる取り組みも多く、できる範囲で進めていくことをおすすめします。
弊社ワウテックが開発・提供するコミュニケーションツールのWowTalkは、そんなDXの第一歩を始めるのに適したサービスです。メールや電話から脱却し、働き方改革を推進するきっかけにもなるため、多くの企業で導入が進んでいます。
DXを検討の際には、お気軽にご相談ください。