デジタル技術が飛躍的な進歩を遂げている現代社会において、高度なテクノロジーを導入して業務を合理化して、競争力を強化することはどの企業にとっても必要な生存戦略です。

その一方で、急速に進化するDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れの中で、従業員の健康や幸福が見落とされてしまっている企業も少なくありません。企業を支える存在である従業員の心と体の健康や幸福は、長い視点で企業を見たときに、DXの推進以上に重要なものです。

そこで、今回は従業員の心身の健康をサポートするために設計された「ウェルビーイングテクノロジー」を紹介します。

従業員の健康管理やメンタルヘルスのサポートはそれ自体が「企業が社会的に求められる必要不可欠な役割」ですが、企業にとっても大きなメリットがある取り組みです。企業が従業員のウェルビーイングを促進することで、生産性の向上や社員の企業へのエンゲージメントの強化が期待されるのです。

従業員の幸福を考えた取り組みは、企業が求められる義務を果たすためのものではなく、ビジネス戦略的にも必要なことだと言って良いでしょう。

この機会に、企業とそこで働く人々のどちらもが「幸せ」になるための戦略として、ウェルビーイングテクノロジーの活用をぜひ検討してみてください。

ウェルビーイングテクノロジーの種類

「ウェルビーイング(Well-being)=良い状態」とは、経済的に充足しているだけでなく、身体的、精神的、社会的にも良好で、その人が幸せを感じられる状態を意味します。「ウェルビーイングテクノロジー」とは、個人や組織の健康と幸福を維持・向上させるためのデジタル技術全般を指します。

DXが進む中で、ウェルビーイングテクノロジーは従業員のフィジカルおよびメンタルヘルスをサポートし、組織全体の生産性や働く従業員の幸福度を向上させるために重要な役割を果たしています。

本章では、現在展開されているウェルビーイングテクノロジーの代表的なものを紹介します。これらの技術を積極的に導入することで、従業員の幸福度を高めつつ、業務効率の向上につながることが期待できるでしょう。

フィットネス・ヘルステクノロジー

フィットネス・ヘルステクノロジーとは、様々なデータに基づいてパーソナライズされたフィットネスプランの提供を通じて、個人の健康をサポートするための技術のことを指します。

具体的には、ウェアラブルデバイス、アプリ、センサーなどを利用して、運動量、心拍数、睡眠パターンなどのデータをリアルタイムでモニタリングし、個人に合わせた健康管理や運動プログラムの提供を行います。

  • ウェアラブルデバイス:FitbitやApple Watchなどのデバイスを身につけることで、心拍数やカロリー消費、睡眠パターンなどをリアルタイムで監視し、ユーザーの健康管理をサポートすることが可能になる。これにより、日頃の変化に合わせて、自分の体の状況を認識し、健康維持・強化をすることが容易になる
  • パーソナライズド健康プログラム:AIを活用したアプリケーションが、個々のデータに基づいてパーソナライズされた運動プランや食事プランを提案する。これにより、それぞれの体に合った効果的な健康管理が可能となる

メンタルヘルステクノロジー

メンタルヘルステクノロジーとは、精神的健康の管理とサポートを目的とした技術のことを指します。

これには、ストレスや不安の管理を助けるアプリ、オンラインカウンセリング、瞑想ガイド、マインドフルネスのトレーニングツールなどが含まれます。

これらの技術は、利用者の精神的な健康状態を改善し、心のケアを提供することで、全体的なウェルビーイングを向上させることを目指しています。

  • オンラインカウンセリング:BetterHelpやTalkspaceなどのプラットフォームは、ビデオチャットやメッセージングを通じて、気軽に専門のカウンセラーに相談できる場を提供することでメンタルヘルスをサポートする。これにより、従業員は忙しいスケジュールの中でも必要なサポートを受けることができる
  • ストレス管理ツール:HeadspaceやCalmといったアプリは、瞑想やリラクゼーションの技術を提供し、日常的なストレス管理を支援する。これらのツールは、従業員のストレスレベルを軽減し、業務パフォーマンスを向上させる

栄養管理テクノロジー

栄養管理テクノロジーとは、食事や栄養の摂取をサポートするための技術を指します。

代表的な例としては、スマートフォンアプリやウェアラブルデバイス、食品スキャンツール、AIを活用した食事計画作成ツールなどが挙げられます。

足りない栄養をサプリなどで補うことは、現代人の健康維持に有効な手法ですが、適切に管理できていないと栄養の偏りや過剰摂取によって、逆に体に悪影響を与える懸念があります。

これらの技術は、個々の健康目標に合わせた食事プランの提案や栄養バランスの管理を支援し、全体的な健康とウェルビーイングを向上させることを目的としています。

  • 栄養追跡アプリ:MyFitnessPalやNoomなどのアプリは、食事の内容を記録し、栄養バランスをチェックすることで健康的な食生活をサポートする。これにより、従業員は自分の食事のバランスを意識して、食生活を改善したり、足りない栄養を適切に補うことができる

睡眠管理テクノロジー

睡眠管理テクノロジーとは、個々の睡眠の質を向上させるための技術を指します。

このテクノロジーは、スマートフォンアプリやウェアラブルデバイスなどによって、睡眠パターンのトラッキング、睡眠サイクルの分析、眠りの深さや目覚めの時間を最適化するアラーム設定などの機能を提供します。

これにより、ユーザーは自分の睡眠習慣を改善し、全体的な健康とウェルビーイングを向上させることができます。

  • スマートマットレスと睡眠トラッカー:Eight SleepやWithings Sleepなどの製品は、睡眠中の動きをトラッキングし、睡眠の質を分析する。これにより、ユーザーは自分の睡眠習慣を改善し、日中のパフォーマンスを向上させることができる

リモートワークサポートツール

リモートワークサポートツールとは、リモートワーク環境での業務を効率的に行うために使用されるデジタルツールの総称です。

これには、ビデオ会議ツール、チャットツール、コラボレーションツール、プロジェクト管理ツールなどが含まれ、チーム間のコミュニケーションを円滑にし、仕事の進行状況を効果的に管理することを目的としています。

これらのツールは、リモートワークでもオフィスでの勤務と同様の生産性を保つことを支援します。こうした環境を整備することで、通勤の負担を減らして、それぞれの従業員の状況にあった働き方を実現することができるでしょう。

  • 仮想オフィスツール:MiroやSlackのような仮想オフィスツールは、リモート環境でもチームメンバーとの円滑なコミュニケーションを可能にし、孤立感を防ぐ。また、仕事の進捗を共有しやすくすることで、仕事の透明性を高め、不安感を軽減し、リモートワークでも従業員の満足度や仕事の質を維持する

病気予防・早期発見ツール

病気予防・早期発見ツールとは、個人の健康データを収集・分析して、病気のリスクを評価し、早期に問題を発見するためのデジタルツールです。

これらのツールは、日常の健康状態をモニタリングし、異常なパターンや健康リスクを検出することで、早期の医療介入を促進し、病気の重症化を防ぐことを目的としています。

ウェアラブルデバイスや専用アプリを使用して、血圧、心拍数、睡眠パターンなどのデータをリアルタイムで提供します。

  • AI診断ツール:Babylon HealthやAda Healthなどのアプリは、症状を入力することで、AIが病気の可能性を予測し、適切な医療機関への受診を促す。これにより、早期の健康管理が可能になる

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情報提供元: DXportal
記事名:「 DXを支援するウェルビーイングテクノロジーの進化