デジタル化とは、アナログ情報をデジタルデータに変換し、コンピュータで処理・管理することを指します。
飲食業界では、POSシステムによる売上管理、オンライン予約システムによる予約の効率化、SNSマーケティングによる顧客とのコミュニケーションなどに応用されています。
POSレジシステムなどは一部大手の飲食店にこそ必要なのであって、わずか十数席の小規模飲食店にとって必要がない技術のように思えるかもしれません。
しかし、デジタル化は以下のような理由で必要不可欠なのです。
- 業務効率化:POSシステムを導入することで、売上データを自動的に集計・分析できるようになり、在庫管理や仕入れ計画の精度が高まる
- 人的ミスの削減:デジタルツールを活用することで、手作業によるミスを減らすことができる
- 顧客サービスの向上:オンライン予約システムやSNSマーケティングを通じて、顧客との接点を増やし、満足度を高めることができる
- 競争力の強化:デジタル化に取り組むことで、他店との差別化を図り、市場での競争力を高めることができる
小規模飲食店が生き残るためには、デジタル化による業務効率化と顧客サービスの向上が不可欠です。一歩一歩着実にデジタル化を進めることで、経営基盤の強化につなげましょう。
必要なデジタルツールの紹介
小規模飲食店のデジタル化に必要なツールは、主に次のようなものが考えられます。
- POSシステム・レジ:売上データの管理、分析、在庫管理などに役立つ。会計処理だけでなく、リアルタイム在庫管理や売上データ分析、顧客情報管理など多くの便利機能を提供し、「なんとなく」の勘に頼った経営から、データに則った正確な経営予測を可能にする
- オンライン予約システム:電話予約の手間を削減し、顧客の利便性を高める。予約管理機能、顧客データベース、料金プランなどを比較検討し選ぶことで、手間を取られる顧客対応を効率化し、より生産的な業務へと力を注げる
- SNSマーケティングツール:InstagramやX、あるいはYouTube、TikTokなどのSNSを活用し、顧客とのエンゲージメント(つながり)を高める。SNSマーケティングツールは、投稿スケジュール管理、データ分析、自動返信などの機能を有しており、より効果的な顧客への訴求を可能とする
- 勤怠管理システム:従業員のシフト管理、勤怠管理を効率化する。労務コストの最適化にも役立ち、事務作業にかかる手間を大幅に削減する
- 会計・財務管理システム:売上・支出の管理、財務分析、税務処理などを自動化し、経営の見える化を実現することにより、自店の弱点を早期発見し、より積極的な経営判断を可能とする
これらのツールの導入には、IT導入補助金などの支援制度を活用することもできます。自社のニーズと予算に合わせて、最適なツールを選定しましょう。
デジタル化の第一歩:計画の立て方
デジタル化の第一歩は、綿密な計画の立案が重要です。
計画の際は、以下の手順で進めましょう。
- 目的の明確化:デジタル化の目的を明確にする。このとき、業務効率化、コスト削減、顧客満足度向上など、デジタル化によって解決したい課題を考える
- KPIの設定:目標達成までのプロセスを評価するKPI(重要業績評価指標)を設定する。売上増加率、作業時間削減率など、具体的な数値目標を定める
- 現状分析:現在の業務フローを分析し、デジタル化による改善ポイントを洗い出す。無駄な作業、手作業による非効率、データ活用の不足などを特定し、デジタル化によって解決したい課題をより具体的に特定する
- リソース評価:必要な予算、人材、時間などのリソースを評価する。これには、デジタルツールの導入コスト、従業員のトレーニング時間、外部支援の必要性などを検討することも含まれる
- ロードマップ作成:以上の分析を基に、デジタル化のロードマップを作成する。優先順位の高い取り組みから着手し、段階的に進めていくことが重要
デジタル化の計画立案は、経営者の強いリーダーシップと従業員の理解・協力が不可欠です。全社一丸となって取り組むことで、デジタル化の成功へと近づくことができるでしょう。
実装ステップ
明確な計画が立案されたら、次は実際に様々なデジタルツールを実装してデジタル化を進めていきます。
デジタルツールの実装は、以下のステップで進めます。
- ツール選定:業務プロセスの改善目的に合致し、使いやすく、コストパフォーマンスの高いツールを選ぶ
- 契約・設定:ツールのサービス事業者と契約を締結し、初期設定やカスタマイズを行う。必要に応じて、これまでに蓄積したExcelなどのデータ移行も実施する
- テスト・動作確認:テストデータを用いてツールの動作を確認し、不具合があれば修正する。業務フローに沿った一連の処理がスムーズに行えることを確認し、問題がなければ実装へ進む
- 従業員説明会・トレーニング:ツールの使い方や運用ルールについて、従業員への説明会を開催する。必要に応じて、トレーニングも実施する
- 試運用・本格導入:一定期間の試運用を経て、本格的な業務への適用を開始。従業員や顧客の声を収集し、改善点があれば随時対応する
- 運用・改善:定期的にデータを分析し、業務プロセスの改善点を見つけ出す。必要があれば、ツールの設定や運用方法の調整、新機能の追加なども検討する
デジタルツールの実装は一時的なプロジェクトではなく、継続的な改善活動です。PDCAサイクルを回しながら、業務プロセスの最適化を図っていくことが重要です。
まとめ~小規模飲食店こそデジタル化で競争力を強化しよう
小規模飲食店が生き残っていくのが厳しい現代。その中でも競合店に対して競争優位性を保っていくには、商品力やサービス力の強化など、様々な施策が考えられます。
しかし、デジタル社会を迎えている現代においては、これまでの既存業務をデジタルに置き換えて行くことも、重要な経営戦略なのです。
デジタル化は、単に業務の効率化だけを求めるのではなく、これまで一個人の勘や経験に頼っていた経営をデータを基に数値化することにより、より客観的な目に見える戦略に落とし込むことでもあります。
「うちのような小さな店には関係ない」
一見陥りがちなこうした思考ですが、むしろ小さな店であるからこそ、大規模資本の店と戦っていくためにもこうした発想の転換が必要なのです。
ぜひとも一度フラットな視点で、自店のデジタル化の可能性とそのメリットについて考えてみてはいかがでしょうか。
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