• ネット通販のモールに出店した

  • SNSで発信を始めた

  • デリバリーに登録した



気づけば、それが売上や集客の柱になっている事業者も多いはずです。うまく回っているうちはいいのですが、ある日、手数料の率や表示のされ方が変わって、あわてることもあります。そのとき初めて、自分が築いてきたはずの集客が、実は借り物だったと気づかされるのです。


こうしたプラットフォームで商売をすることは、いまや販売業やサービス業にとってごく当たり前の選択肢です。ただ、それは裏を返せば、プラットフォームに依存してはいないか、という問いにもなるのではないでしょうか。


本記事では、この「プラットフォーム依存」を、「他人の軒先を借りて商売する」という昔からの言葉を軸に考え直します。そのうえで、自分の商売のどこまでが自分のもので、どこからが大家さんのものかを切り分け、両方をどう組み合わせるかを考えていきましょう。



【本記事の要点】



  • 他人の場所の一角を借りて商売する形は、商店街のテナントや屋台のように昔からある

  • ネット通販のモール、SNS、デリバリーも、構造は同じ「軒先を借りる商売」であり、便利さと手数料は表裏一体

  • デジタルの軒先は規模と速さで有利だが、大家さん(プラットフォーム)が決めるルールに借り手の発言権はない

  • 借り物の集客と自前の関係にはそれぞれ得失があり、両方を組み合わせて持っておくのが現実的



軒先を借りて商売するのは、昔からあった





まず、身近な例から入ります。




  • 商店街の一角を借りるテナント

  • 百貨店の催事場

  • 道の駅の農産物直売コーナー

  • 駅ナカの小さな店

  • お祭りの屋台

  • フリーマーケットの区画

  • 他店に置いてもらう委託販売



どれも「他人の場所の一角を借りて商売する」という形です。


この商売の形自体は、決して悪いわけではありません。商売をしたい側は、自分で土地や建物を用意しなくても、人が集まる場所に相乗りできる。一方、場所を持つ側は、区画を貸すことで賃料や手数料を得て、品ぞろえも増やすことができるという、いわゆるWin-Winの商売手法であり、昔からあるまっとうな商売の形です。


デジタルの軒先も、構造は同じ





いま多くの事業者が使っているデジタルの窓口も、構造は同じです。


ネット通販の分野で分かりやすいのが、Amazonや楽天市場といったモールへの出店です。自社の通販サイトをゼロから作らなくても、すでに買い物客が集まっている売り場に商品を並べれば、検索結果や特集ページ経由で客に見つけてもらえます。


SNSも同じ構造です。InstagramやXのショップ機能を使えば、そのSNSに集まっている人の流れに、自分の店を差し込めます。


フードデリバリーも、Uber Eatsや出前館に登録することで、自前で配達員やアプリを抱えなくても、注文したい客の手元まで商品を届けられます。


記事や音声、動画の配信プラットフォームも同様で、たとえば動画を投稿して収益を得るYouTubeもその1つです。


業態はさまざまですが、どれも、自分でゼロから集客の仕組みを作る代わりに、すでに人が集まっている場所の一角を借りて商品やコンテンツを並べている点は共通しています。屋台とアプリでは見た目がまるで違いますが、「他人の場所を借りて、そこに来る人に売る」という骨組みは変わりません。


ただし、その便利さはただでは手に入りません。自分でゼロから集客の仕組みを作らずに済む代わりに、売上の一部を手数料として運営側に払うのが基本の形です。商店街のテナントが賃料を払うのと同じで、場所を借りるからには対価が発生します。人が集まる場所に相乗りできる便利さと、そこで生じる手数料は、トレードオフの関係にあります。


変わったのは、大家さんの顔が見えなくなったこと





では、デジタルの軒先で何が違うのか。大きくは2つです。


1つは、規模と速さです。これは借り手にとって明確なメリットです。屋台の商圏は歩いて来られる範囲に限られますが、デジタルの軒先は地域や国境を越えて、これまで出会えなかった客にまで届きます。出店も撤退も、店舗を構えたり内装を組んだりする手間がなく、手続きは短時間で済みます。


もう1つは、大家さんの顔が見えないことです。こちらは、借り手にとってのデメリットといえます。商店街のテナントなら、家賃や営業時間の相談相手は目の前にいて、多少の交渉や融通も利くでしょう。


ところがデジタルの軒先では、手数料、検索したときの表示順、出品のルールを運営側が一方的に決め、必要になれば利用者には通知1つで変更することもありえます。借り手がその決定に加わることはほとんどなく、ルールが変わったことを、後から知らされる場合もあります。


これは「危険」というより、そういう契約の形だと理解しておくのがよさそうです。大家さんに家賃や営業時間を決める権利があるのは、店子から見れば当たり前のことでもあります。不安を煽る話ではなく、前提の確認です。


借りているものと、持っているもの





自分の商売を、借りているものと持っているものに分けてみます。


その場所だから来る「通りすがりの客」は、大家さんのものです。モールの検索でたまたま見つけて買った人、おすすめ欄から流れてきた人は、大家さんが連れてきてくれた客であって、店を移せば来なくなります。看板、つまりアカウント名やページのURLも、借り物です。プラットフォームが変われば使えません。


これがもっとも極端な形で表れるのが、プラットフォームそのものの終了です。ここでは、ブログを公開する場合想定して考えてみましょう。noteやアメブロのようなブログサービスに記事を積み上げてきた場合、そのサービス自体が終了すれば、積み上げてきた記事も、そこで得ていた読者との接点も、まとめて消えてしまいます


一方、自分でドメインを取り、WordPressのような仕組みで公開しているサイトなら、運営元のサービスが終わるという心配自体がなく、記事という資産は基本的に自分の手元に残り続けます。同じ「文章を書いて発信する」という行為でも、どこに置くかによって、資産として残るか、借りたまま消えてしまうかが分かれてしまうのです。


これに対し、店を移してもついてくる客もいます。名前で指名して探してくれる客、メールや電話、SNSのDMなど直接連絡が取れる客です。こちらは自前の関係であり、大家さんが模様替えをしても残ります。


借り物の集客と自前の関係は、どちらが優れているという話ではなく、それぞれにメリットとデメリットがあります。借り物の集客は数を稼ぎやすい分、ルールが変わればあっという間に減ってしまいます。自前の関係は増やすのに時間がかかる分、環境が変わっても簡単には失われません。


大事なのは、この2つを混同しないことです。借り物の集客を自前の資産だと思い込むと、ルールが変わったときに足元をすくわれます。借り物の集客で数を稼ぎながら、自前の関係もこつこつ育てていく。両方の良さをうまく組み合わせて取り入れるのが、現実的な進め方です。


出店先や発信チャネルを増やすことは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の1つの側面です。ただ、軒先を増やすことばかりに気を取られ、自前の顧客接点が薄くなっていないかは、忘れずに見ておきたいところです。


まとめ:借りる軒先と、自分の看板


ネット通販のモールもSNSもデリバリーも、突き詰めれば「他人の軒先を借りて商売する」という、昔からある形の延長線上にあります。借りること自体は悪いことではありません。ただし、人が集まる場所に相乗りできる便利さと、そこにかかる手数料は表裏一体であり、大家さんが決めるルールに発言権がないことも、契約として織り込んでおくべき前提です。


問い直したいのは、そこで得ている集客のどこまでが自分のもので、どこからが借り物かということです。借り物の集客は数を稼ぎやすい代わりに、ルール1つであっという間に減ってしまいます。一方、名前で指名してもらえる、直接連絡が取れるという自前の関係は、育てるのに時間がかかる代わりに、大家さんの都合には左右されません。


大切なのは、どちらか一方に頼るのではなく、両方を組み合わせて持っておくことが、軒先を借り続けるうえでの備えになるという視点です。

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情報提供元: DXportal
記事名:「 軒先を借りて商売する、という昔からのやり方|プラットフォームと私たちの距離感