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コールセンターが抱える課題は、主に次の4つに集約されます。
それぞれについて、詳しく解説します。
冒頭でもお伝えしたように、コールセンターのオペレーターは非常に離職率の高い職種と言われています。そのため、コールセンターの多くは、慢性的な人手不足に悩まされています。
この傾向はコロナ禍を経て若干解消したものの、それは離職率そのものが下がったわけではなく、コロナ禍で大きな打撃を受けた飲食や観光といった他業種から、一時的に転職希望者が流れ込んだだけです。コロナ禍が一応の落ち着きを見せた昨今(2024年1月現在)では、飲食業や観光業の景気も回復基調にあり、それに伴ってコールセンターの就職希望者数がコロナ前の水準に戻ったとしても不思議ではありません。
株式会社ビズヒッツが運営するサイト『Biz Hits』では、オペレーター離職者150人にアンケートを取り、次のような結果を報告しています。
この結果を見る限り、勤務開始から6ヶ月以内に離職した人の割合が一番多く、次いで2年以内、1年以内となっています。
また、離職の理由トップ3は次の通りです。
このように、アンケートに応えた約1/3の人が離職の理由を「ストレスが多い」としているのです。また、ストレス要因のほとんどは、顧客からのストレス対応に精神的に疲弊したという回答が多く見られます。
離職者を対象にしたアンケートのため偏りはあるものの、コールセンターのオペレーターは定着率が低く、その主な理由の1つが顧客対応のストレスであると言えるでしょう。
そのため、コールセンターの人手不足問題を解決するには、オペレーターの負担を軽減して、こうしたストレスを感じにくい働きやすい環境を作ることが重要と考えられます。
コールセンターが抱える問題のもう1つは、コスト面の負担が大きいということです。
コールセンターを運用する際には、事務所費用や電話回線費用などもかかりますが、何より負担となるのは人件費です。
一般にコールセンターのコストは、その7〜8割が人件費と言われています。その中にはオペレーターの採用にかかる費用も含まれます。
新規採用されたオペレーターが実際に顧客対応をこなせるようになるまでには、約3ヶ月間の研修期間が必要だと言われています。つまり、その間は、十分に顧客対応をしていない人員分の、余分な人件費がかかっていることになるのです。
業種や職種によって期間には差があるとはいえ、新人の採用後に一定の育成期間が必要なのは仕方がありません。
しかし、せっかく育成しても研修中、あるいは研修後すぐにオペレーターが辞めてしまった場合は、20~40万円が相場と言われる採用費用が無駄になってしまいます。つまり、前述の定着率の低さが、コールセンターの人件費を押し上げてしまっているのです。
また、閑散期と繁忙期の差が激しいというのも、コールセンターの課題の1つです。
人員配置を工夫しなければ、顧客問い合わせが少ない時期にたくさんのオペレーターを配置することになり、無駄なコスト増に繋がってしまうでしょう。逆に、繁忙期に十分な人員を確保できなければ、オペレーターの負担が増加してしまうリスクもあります。
常に人手不足のコールセンターでは、オペレーターが定着せず、結果的として業務に精通した人材が育ちにくい傾向があります。
つまり、多くのコールセンターでは、一部のベテランを除き、ほとんどがまだ仕事に不慣れな新人というような歪な状況が発生してしまっているのです。
これでは、顧客への応対品質の不均一が生じ、顧客満足度の低下を招きかねません。同じコールセンターに連絡しているにもかかわらず、応対したスタッフによって、説明のわかりやすさや回答できる質問の幅に著しい差がある事態は、コールセンターとして適切な状況とは言えません。
コールセンターのオペレーターの対応が適切に行えていない場合、企業の新商品やサービス、ひいては企業そのものの信頼度低下にも繋がり、結果として企業の売上に影響を与えてしまうでしょう。
とはいえ、とっさの機転やクレーム処理能力は長く務めていないと身につかないこともあります。そのため、多くのコールセンターでは、人材育成をいかに効率化するかが重要な課題となっているのです。
コールセンターに問い合わせした際に、電話口で長時間待たされてストレスを感じた経験はないでしょうか。
この待ち時間の増加は、オペレータの人材不足や顧客対応のスキル不足による対応時間の長期化など、これまで解説してきた課題のすべてが原因となっています。
2022年12月に発表されたJ.D.パワー ジャパンの「J.D. パワー 2022 年カスタマーセンターサポート満足度調査SM<金融業界編>」によれば、顧客がカスタマーサポートに感じる満足度は、2021年の調査と比べてコールセンターで17ポイント、オペレーターによるチャットサポート(有人チャット)で20ポイントも低下したとの報告がなされています。
コールセンターと有人チャットのどちらも「待ち時間が3分を超えると満足度が大きく低下する」傾向があります。
この調査によれば、両者ともにオペレーターとのやりとりが開始されるまでにかかる時間が「3分以上かかり不満だった」という回答が増加していることがポイント低下の原因になっているようです。
顧客としては「すぐに問い合わせに答えてほしい」という期待があるのは当然であり、これを解決しない限り満足度は益々下がってしまうことが予想されます。そのため、早急な改善への工夫が必要となるでしょう。
これら、コールセンターが抱える課題を解決するには、DX推進がカギとなります。
この章では、コールセンターの課題解決が期待できる、3つのDX推進施策を紹介します。
コールセンターの人手不足解消には、テレワークの導入が1つの改善策です。
具体的には、クラウドサーバー上でアプリケーションソフトにアクセスして運用する方法や独自のビデオ通話システムで運用する方法があります。
コロナ禍以降、企業の働き方改革が進み、テレワーク環境が整備されてきたことも、こうした新しいコールセンターの形を作ることに役立っています。
電話が何台も設置されたコールセンターという「場所」に通勤することを課すのではなく、ネット回線を繋いで自宅にいながらオペレーターとして働くことができる環境作りは、これまで難しかった人材の確保にも繋がるのです。
例えば、子育てや介護など家庭の事情で通勤が困難な人も、テレワーク型のコールセンターであれば、働くことができるでしょう。
また、多言語サポートが必要な企業の場合などは、日本に居住していないバイリンガルな人材を登用することもできるはずです。
クラウドシステムを利用したコールセンターの運用は、オペレーターの人手不足を解消する重大なカギになるでしょう。
ただし、インターネットを通じて管理者とオペレータが別々の環境で業務を推進するテレワークの場合には、システムのセキュリティ対策が必須です。
上記のようなデジタル技術を用いたセキュリティ対策は、コールセンターをDXする上で避けて通ることのできない課題です。
また、リモート体制の課題の1つは、トラブルが起きた際に上司やリーダーがオペレーターのサポートをその場で迅速に行うことが難しくなる点です。
こうした環境を整えず導入してしまうと、オペレーターごとに応対の質が大きく異なる事態にも繋がりかねません。個々のオペレーターの能力の担保と、サポート体制の整備はより重要なポイントとなってきます。
DXとは、すべての業務を社内で行うことを推奨しているわけではありません。自社で賄いきれない、あるいは自社で抱える必要のない業務は、外部の企業にアウトソーシングすることは、DXを進める上で効果的な施策です。
コールセンターの場合も、コールセンターを自社に設置せず、その運用そのものを外部の企業に委託することも検討できます。
コールセンターをアウトソーシングすることは、センター管理費の削減や光熱費の削減に繋がるのはもちろんのこと、必要な時に必要なだけ活用することができますので、結果として人件費の削減にも結びつくでしょう。
それだけでなく、削減したリソースを、社内のより生産性の高い業務に振り分けることが出来れば、より効率的な収益モデルを作り上げることもできるはずです。
チャットボットの導入はコールセンターをDXして、効率的な顧客対応を行うためには非常に優れた施策です。
先述の有人チャットは、電話で対応するかチャットを打ち込むかの違いがあるだけで、人がリアルタイムで応対していることには変わりません。そのため、問い合わせがオペレーターのキャパシティを超えてしまえば、それに伴って顧客の待ち時間が長くなっていきます。
近年はこの課題を乗り越えるために、無人で顧客の対応が自動化できる「チャットボット」を導入するコールセンターが増えてます。
チャットボットとは、顧客の問い合わせに対して自動で回答するシステムです。
チャットボットには大きく分けて「シナリオ型」と「AI型」という2つの形式があります。どちらの形式でも、基本的に人の手を必要とせず、24時間365日顧客からの問い合わせに対応する「機械のオペレーター」と言って良いでしょう。
もちろん、機械で対応が困難な複雑な問い合わせに対しては、有人サポートに切り替えることも可能です。
顧客のライフスタイルが多様化し、海外からの問い合わせなども予想されるデジタル社会のコールセンターの形としては、チャットボットという24時間365日働くシステムを導入することが、効率的なビジネスを構築するためにはもっとも重要な施策と言えるのではないでしょうか。
次章では、そんなチャットボットを導入するメリットとデメリットについて解説します。
コールセンターの業務を格段に効率化する可能性のあるチャットボットですが、その導入には、当然ながらメリットとデメリットが存在します。
メリットとデメリットを正しく知ることで、自社の業務にチャットボットを導入する目安にしてください。
チャットボット導入のメリットは次の3つ。
コールセンターにチャットボットを導入することは、顧客の問い合わせに24時間365日対応できるオペレーターを採用することと同じです。
しかも、機械であるチャットボットは、人間のスタッフのように顧客からのクレームをどれだけ受けたとしても、精神的ストレスを抱えることなどありません。
オペレーターの人手不足で悩むコールセンターにとっては、これは大きな価値となるでしょう。
チャットボットが対応できない問題だけを、オペレーターとの直接会話に切り替えるように仕組み化すれば、オペレーターは普段は別の業務に対応することができるようになり、結果的に企業の生産性は大きく向上します。
チャットボットは、顧客満足度の向上に貢献します。
先述のとおり、コールセンターは人材が定着しづらく、その結果スタッフごとの応対品質に不均一が生じてしまいます。しかし、チャットボットを導入すれば、どんな場合でも均一な応対が可能です。
また、オペレーターが電話やチャットを繋ぐまでの無駄な待ち時間が削減され、顧客の待機時間への不満解消にも繋がるでしょう。
それだけでなく、24時間365日いつでも対応可能なチャットボットは、コールセンターの営業時間内には問い合わせができない顧客の不満にも応えられますので、顧客満足度の向上に繋がるのです。
コールセンターの電話対応の場合、オペレーターが口頭で情報を伝えた内容を、顧客がわざわざメモを取るようなひと手間が発生していました。そのため、言い間違えや聞き間違えなどによって、情報を正確に伝えられないデメリットがありました。
しかし、チャットボットなら視覚的に情報を表示できるため、情報の間違いがなく的確に顧客に伝えることができます。例えば、企業の地図や電場番号、WEBサイトのURLをチャットボット上に表示させることで、メモの取り忘れや聞き・書き間違いで、再びオペレーターに連絡しなおすような負担の解消にも繋がります。
反対に、チャットボット導入のデメリットは次の3つです。
前述のように、チャットボットにはシナリオ型とAI型の2つの形式があります。この2つを簡単に説明すると、次のようになります。
特にシナリオ型では、あらかじめ想定した質問にしか答えることができませんので、想定外の質問への対応は人が行わなければなりません。
また、AI型はある程度複雑な質問にも答えられますが、AIが十分に学習しシステムとして活用出来るようになるには、ある程度のデータを学習させる時間が必要となり、それまでは回答の精度が安定しない場合もあります。
顧客の疑問をあらかじめすべて予測することは難しく、どんなに優れたAIでも対応しきれないことはあるはずです。チャットボットだけで、すべての問い合わせを自動化して対応することは、現在の技術では不可能と言って良いでしょう。
すべての顧客対応を、完全自動化することはできないのです。
そのため、ある程度複雑な質問が来たら、チャットボットから有人対応に切り替えるタッチポイントをあらかじめ設定しておくことが求められます。
そして、必要な場合は改めてサポートセンターの連絡先を明示したり、その場でオペレーター対応に切り替えたりして、顧客の不満を解消する仕組みづくりが重要なのです。
チャットボットによるコミュニケーションを「温もりが感じられない」と、敬遠する人もいます。これは、回答が機械的かつ無機質なのが原因でしょう。
確かに、故障やクレームで問い合わせしているのに、心の感じられない対応をされたのでは、かえって不満が高まってしまいます。人によっては「機械なんかが相手しやがって」などと、かえってクレームに繋がってしまう可能性がないとも言えません。
多くの場合、チャットボットの対応は、決められた手順によって進められ、出来る限り最小のステップで問題が解決するように、無駄は徹底的に削ぎ落とされます。
しかし、オペレーターによるサポートの場合は、そうした「無駄」が求められる場合もあるでしょう。
特に、顧客が抱えている問題を顧客自身が把握しきれていない場合など、オペレーターと会話をする中でその問題に気づくこともあるはずです。そして、その問題を解決していく過程が、顧客には温かいサービスだと感じられ、企業の評価に繋がる可能性もあるでしょう。
この点においては、どれだけチャットボットが進化したとしても、「人のぬくもりや温かみを再現することはできない」と理解した上で、チャットボットを運用することが大切です。
チャットボットを導入するには、相応のコストと知識・スキルが必要です。特に、柔軟な応対が可能なAI型チャットボットの場合は、その傾向は強くなります。
2022年末にリリースされ、あっという間に市民権を得たChatGPTをベースにしたAIChatなどは、導入資金こそ少額で済みますが、運用に際してはやり取りされる文字数に応じた従量課金が必要になる場合もありますので、十分な注意が必要です。
さらに、AI型チャットボットは初めに膨大なデータを学習させたり、運用中も可能な限り最適化した回答が得られるように調整したりと、何かとメンテナンスが必要になります。
こうしたことに対応するには、AIに関する高度な知識とスキルが必要になる場合も少なくありません。
また、AI型ほどではありませんが、シナリオ型チャットボットでもあらかじめ予想される問答集を作り、それを入力する手間は必要となります。
こうした金銭的、時間的なコストのどこまでを自社が許容できて、どこからは許容できないかを見極めることも、チャットボットを導入する際に注意しておかなければならないポイントです。
ここまで、顧客対応の業務を効率化し、コールセンターの人手不足を解消するDX施策について解説してきました。
中でも、チャットボットの導入は、多くのコールセンターを必要とする企業にとって、自社のビジネスを大きく変革させる可能性を持った施策です。
とはいえ、チャットボットにはやはり様々なデメリットがあり、オペレーターによるサポートには敵わないところがあるのも間違いはありません。
そのため、自社の業務規模や確保したいサポート体制をしっかりと見極めた上で、チャットボットを導入するか否か。または、導入するのであればどのようなチャットボットを導入すれば良いのかを決定してください。
もしもそこまで大規模なコールセンターではなく、導入に必要なコストや人材を用意できない企業の場合は、シナリオ型のチャットボットを導入することをおすすめします。
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ただし、チャットボットとひとくちにいっても、その仕様は多岐にわたっています。
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