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データドリブンとは、ビジネスや組織の意思決定において、データを基盤として優先的に利用するアプローチのことを指します。
このアプローチでは、データ収集、分析、解釈、応用などを通じて、事実や証拠をもとに、主観的な判断や予測に依存しない意思決定を行います。
人の主観や予断により決定が左右されることがないため、より正確かつ効果的な結果を得ることができるというアプローチであり、デジタル技術とデータ活用が重要とされるDX推進においても重要な役割を果たしているのです。
データドリブンはDX推進の文脈だけで使われる言葉ではなく、これまでにも多くの分野で利用されています。
例えば、ビジネスにおいては、マーケティングキャンペーンの効果や顧客行動の傾向を分析することで、製品やサービスの改善や新しいビジネス戦略の策定に役立てることができます。
また、医療においては、臨床試験や健康データの分析により、より正確で効果的な治療法を開発することができるのです。
一方で、これまでのデータドリブンのアプローチには、データの取得や分析に必要な技術的なスキルやリソース、人材の確保、データの品質や信頼性に関する問題など、いくつかの課題も残されていました。
そのため、データドリブンを徹底することは困難であり、どうしても経験に基づく判断や、場合によっては経営者の勘に頼った判断をせざるを得なかったのです。
DXとは、「デジタル技術とデータを活用し、既存のモノやコトを変革させ、新たな価値創出で人々の生活をより良くする」取り組みです。
DXにおいては、デジタル技術を活用することで多くのデータが生成されるわけですが、このデータを収集・分析することで、組織内のビジネスプロセスの改善や新しいビジネスモデルの創造が可能となります。
このDXにより収集・分析が可能になったデータをもとに、データドリブンのアプローチを行う、つまり、データを基盤として優先的に利用して意思決定を行うことで、ビジネスプロセスなどの最適化を実現できるようになるのです。
また、データドリブンを取り入れた効果的なDX推進により、組織内のビジネスプロセス全体の改善、さらには新しいビジネスモデルの創造が可能となります。
例えば、マーケティングDXでは顧客の行動や嗜好のデータを分析することで、より的確なマーケティング戦略を策定することができます。
また、製造業では生産ラインのセンサーデータを収集し、異常検知を行うことで製品の品質向上や生産性の向上を実現できますが、データを基に改修する生産ラインの優先順位を決定するなどもできるでしょう。
このように、DXの成果を最大化するためにも、データドリブンのアプローチを経営戦略に取り入れることは、重要な選択なのです。
DXにおいてデータドリブンのアプローチは、企業に多くのメリットをもたらします。
そのメリットは、経営に関するあらゆる分野に及びますが、ここでは特に重要な5つに絞って解説します。
企業が保有する大量のデータを活用するデータドリブンは、課題の早期発見と解決に繋がります。
人の感覚に頼らず、リアルタイムに集積されるデータを分析することにより、従来よりも早く問題点を発見し、迅速かつ適切な解決策を導き出すことができるということは、データドリブンの大きなメリットの1つです。
これにより、企業はより効率的かつ正確な意思決定を行い、問題が大きくなる前に業務プロセスやビジネスモデルなどの改善に取り組むことができるようになるのです。
課題の早期発見・早期解決は、品質管理が重要な製造業をはじめ、様々な業種において極めて重要であることは言うまでもありません。
また、日々少しづつ変化していく市場の動向と自社製品やサービスの間に生じてしまう「ズレ」に柔軟かつ迅速に対応することができれば、強い競争優位性を確保し続けることができるでしょう。
データを収集・分析することは、現時点における顧客のニーズを正確に把握できるだけでなく、その変化などを迅速かつ適切に分析することができるため、それに基づいて製品やサービスの改善を行うことができます。
さらに、データを活用することで、顧客ごとに製品やサービスをより高度にカスタマイズしていくことも可能です。
ITを通じて集められる膨大な顧客ニーズを分析することで、今の自社製品・サービスでは応えきれていない弱点を把握し、その点を補う形で、ニーズに合わせてパーソナライズされたものを提供することができれば、顧客満足度を高め、競合に対する優位性を確保できるでしょう。
データを収集し、分析することのメリットは、業務上の課題を客観的に見つけやすくなるという点にもあります。
つまり製品やサービスの質や顧客満足度を高めるだけでなく、それを提供する際の一連のプロセスにおける課題をデータに基づいて把握できるようになるのです。
データドリブンによって明らかになった課題を、その都度解決していくことにより、スモールステップでの業務プロセス改善が可能となり、業務プロセスが改善されれば、従業員の負荷が減少し、時間あたりの生産性が向上することは言うまでもありません。
また、生産性が向上するということは、人的コストの削減にも繋がります。
データドリブンにより業務の無駄を削減することは、従業員の負担の軽減、生産性の向上、経費の削減、さらには時間的コストの削減にも繋がります。
働いていると当たり前のように思える業務プロセスでも、「数字」で分析すると意外な無駄を内包しているということはよくある話です。
人的・時間的コストを削減することは、企業の経営活動にとってもっとも重要なことであるため、データドリブンでその問題点をピンポイントに探すことは、重要なDX施策の1つだと言えるでしょう。
顧客の趣味趣向などをデータとして分析するということは、市場のデータを分析するということでもあります。
企業にとって市場データを分析するということは、そのまま新しい市場やニーズを発見する素地を作るということでもあり、それはそのまま新たなビジネスチャンスを創出することに繋がるのです。
人のひらめきによるイノベーションは、企業に大きな成功をもたらしてくれることがありますが、そのようなアイディアはいつでも生み出せるものではありません。
画期的なひらめきに基づく新たなビジネスチャンスの創出には、再現性がないのです。
一方、データドリブン経営によって市場の潜在的なニーズを発見し、そこに対してビジネスを展開していくという方法は再現性があります。
ゲームチェンジャーとなるような画期的なアイディアがなくとも、しっかりと市場の分析にもとづいてビジネスを展開していくことにより、企業は競争優位性を獲得し、市場での地位を強化することができるのです。
持続可能な経営(サステナビリティ経営)とは、「環境・社会・経済」という3つの観点において、すべてを満たした経営活動を行うことにより、事業の長期的な維持・継続を目指す経営のことを指しています。
現代の経営においては、SDGs(持続可能な開発目標)の意識が社会に浸透するにつれて、ビジネスをDXするだけでなく、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)の視点も求められるようになってきました。
データドリブンのアプローチは、こうした持続可能な経営にも繋がっています。
データを収集し、分析することで、企業は自社のビジネスに関する様々な情報を得ることができます。
自社ビジネスの強みや弱みを把握することは、持続可能な経営を目指す上での明確な数値目標となってくれるでしょう。
また、経営者や業務担当者の知識や経験に基づく意思決定の課題である属人化を回避することができるということも、サステナブルな経営においては重要です。
それまでは順調だったにもかかわらず、ある人がいなくなった途端に業績が悪化した企業の例は枚挙にいとまがありません。
真に持続可能な経営を目指すためには、データドリブンによって属人化した状態をフラットにし、経営者や担当者が代替わりしたとしても問題が生じることのない、再現性の高いビジネスモデルを創り出す必要があるのです。
このように、経営に多くのメリットをもたらしてくれるデータドリブンですが、中小企業がDX推進の一環としてこのアプローチに取り組む際には、注意しなければならないポイントがいくつかあります。
本章では、次の5つのポイントについて解説していきます。
データドリブンのアプローチを効果的に活用するためには、まずデータの品質を確保することが重要です。
データに基づいて適切な経営判断を下そうとしても、そもそも基になるデータの品質が悪くては意味がありません。
質の悪いデータに基づく分析結果には、実態とのずれが生じていると考えられるため、適切な意思決定を行うことは困難です。
最悪の場合、不正確な分析に基づいて誤った判断を下してしまう可能性すらはらんでいます。
そのため、データの収集方法や管理方法に充分な注意を払い、データの品質を確保することが求められるのです。
とはいえ、ビジネスに関する全てのデータを常に正確かつ最新の状態に保つことは容易なことではありません。
「どのようなデータを収集するか」や「どのような方法で収集するか」などを考慮した上で、データの正確性、信頼性、完全性、一貫性、時系列性など、データ品質に関する指標を定義し、これらの指標に基づき、データの品質を考慮したうえで、判断を下す必要があります。
品質の高いデータであればそのまま意思決定に利用できますが、品質に疑問がある場合は他のデータを補完的に用いるなど、品質に合わせて利用方法を工夫することが大切です。
また、データの管理方法については、データの保存場所やファイル名、データのバックアップ方法、アクセス権限の管理などを考慮する必要があります。
同時に、データの入力方法やデータの変更履歴などを記録して、データの整合性を確保することも重要です。
データ収集や管理に関しては、大きな投資が必要な場合もあるため、なかなか取り組むことができていないという企業も少なくないのが実情ですが、データ品質の担保は長期的な視点から見ると企業の未来をも左右しかねません。
そのため、適切なデータドリブン経営が行える体制を構築するためには、コスト削減を優先するのではなく、データの品質を重視した適切な投資を行うことも求められるのです。
データ分析に携わるスタッフが不足している場合、データ分析に時間がかかってしまったり、担当者の負担が大きくなりすぎてしまうこともあるため、この点には注意が必要です。
このようなケースでデータドリブンのアプローチを活用するためには、社内人材のスキルアップや外部の専門家の協力を得ることを検討する必要があります。
社内でのスキルアップには、データ分析を行うためのトレーニングプログラムや教育プログラムを導入することが考えられます。
また、外部の専門家への依頼を検討する場合には、データ分析において優れたスキルを持つ専門家や、自社に関係する業界に特化したデータ分析の専門家を選び、アドバイスや指導を受けることで、効果的なデータドリブンのアプローチを実現することができるでしょう。
また、クラウドサービスやデータ分析ツール、サービスを有効活用することも、データ分析のスキルが不足している場合には有効な選択肢の1つとなってくれるはずです。
中小企業では、大手企業に比べて、社内システムへの不正アクセスやデータの漏洩、ウイルスやマルウェアの感染など、セキュリティ対策の予算や専門スタッフの不足が問題視されることがあります。
インターネットを通じてデータを収集することが多いデータドリブンでは、セキュリティ対策の強化が不可欠であり、もっとも大きなリスク回避の方法です。
セキュリティ対策の強化として、まず最初に挙げられるのは、社内のルールやマニュアルの策定でしょう。
社内でのデータの取り扱い方についての規定を作成し、社員に周知徹底させ、また定期的に社員に対してセキュリティ教育を実施することで、情報漏えいや不正アクセスなどを未然に防ぐことができます。
また、セキュリティ対策のためのシステムやツールを導入することも重要です。
こうした社外からの攻撃に対しては、必要があれば情報セキュリティに関する専門家の助けを借りることも検討しつつ、セキュリティ面でのリスクを最小限に抑えることを考えなければなりません。
セキュリティ対策が必要なのはデータドリブンに限った話ではありませんが、このアプローチでは取り扱うデータが膨大になるため、万が一、情報流出などが起きた場合に被害も大きくなってしまう傾向にあります。
そのため、前述のようにセキュリティ対策が重要なわけですが、中でも個人情報の漏洩には細心の注意を払わなければなりません。
特に、個人情報保護法や関連法規に違反した取り扱いをしていたことが発覚した場合、法的な罰則を受けたり、企業イメージの著しい低下に繋がるなど、多大なリスクになります。
個人情報が流出してしまう原因は、ネットワークのセキュリティが足りていない場合もありますが、それよりむしろ情報を取り扱う人材のリテラシー不足に起因していることも少なくありません。
個人情報保護法に関する知識や遵守方法についてのリテラシーが不足している場合には、プライバシーポリシーの策定や社員教育の徹底が必要となってきます。
プライバシーポリシーは、顧客が提供した個人情報を適切に取り扱うための企業の方針やルールを示すものであり、顧客からの信頼を得るためにも重要です。
また、社員教育では、個人情報の適切な取り扱い方法や、セキュリティ対策の重要性などを教育し、社員の意識を高めることが求められます。
さらに、顧客からの個人情報の取得にあたっては、明確な同意を得ることも重要でしょう。
顧客が提供した個人情報を、事前に明示された目的以外で利用することは違法であるため、顧客に対して、個人情報の利用目的や提供先、開示・訂正・削除の権利などを明示し、同意を得ること。企業として、顧客からの信頼を得ることがなによりも必要なのです。
データドリブンのアプローチを導入する際には、オペレーションとの統合が必要です。
データドリブンのアプローチを活用して多くの知見を得られたとしても、それをオペレーションに反映できなければ、製品・サービスの質を改善したり、新たなビジネスの創出に繋げたりすることなどできません。
データドリブンというと、データの収集・分析をする部門に注目してしまいがちですが、その分析結果をもとにオペレーション部門が具体的な業務プロセスの改善をして初めて効果を発揮します。
つまり、データ分析とオペレーションを統合してこそ「データドリブンによる経営」と言えるのです。
しかし、データドリブン経営に取り組み始めた多くの企業において、オペレーションとの統合には課題もあります。
例えば、データドリブン経営の重要性がオペレーション部門にしっかりと理解されていないと、分析結果を受け入れることに消極的になってしまう場合があります。
また、オペレーション部門とデータ分析部門のコミュニケーションが不十分である場合は、そもそもオペレーションに活かしにくいデータを収集・分析してしまったり、「非現実的な理想の押し付け」のように思われて反感を買ってしまったりする場合もあります。
データ分析部門が質の高いデータを収集・分析し、それをオペレーション部門が活かして業務を改善していくという組織を作り上げるためには、データドリブンのアプローチについて、全社員が共通の理解を持つことが重要となるのです。
企業経営をDXする際に重要な考え方である、データドリブンについて解説してまいりました。
データドリブン経営は、主観的な判断を排して、データに基づく迅速かつ客観的な判断を導き出す重要な戦略です。
もちろん、経営に関するすべての判断において、このデータ主義が通用するわけではないでしょう。
これまで築いてきた取引先や顧客との関係、従業員の心情などを含めて、データには現れない要素が重要な場面も数多くあります。
しかし、日本的な「義理や人情」に基づいた判断や、知識と経験に基づいたいわば「勘」に頼った経営では、激化する市場ニーズの変化に対して即座に的確な判断を下し続けることは難しいと言わざるを得ません。
これまでの意思決定の方法を続けていくと、時として大きなビジネスチャンスを逃すことにもなりかねませんし、ましてや持続可能な企業経営という観点では大きな障壁になってしまうでしょう。
「デジタル技術とデータを活用し、既存のモノやコトを変革させ、新たな価値創出で人々の生活をより良くする」というDXの本質でビジネスを変革させるためにも、ぜひともデータドリブンを理解・活用して、大きな可能性をつかんでください。
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