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DXを推進するためのITテクノロジーは、あらゆるジャンルでまさに日進月歩を続けています。
本章では、その中でも特に建設業の未来を変える可能性の高い、4つの技術を取り上げます。
どの技術も世界中のDX先進企業では、すでに「当たり前」のように導入されています。
すべての技術を一度に取り入れる必要はありませんが、まずはその特徴を理解し、自社の事業にどのように活かせるかを検討してみることが重要です。
日本語では「人工知能」と訳される「AI(Artificial Intelligence:アーティフィシャル・インテリジェンス)」とは、ひとことで言えば「人間のような『考える』知能を持った機械(コンピュータ)、あるいはそれを作る技術」を指しています。
最初のデータ入力と行動指針の策定は人間がやらなければなりませんが、その後はAIが自分でデータを収集・蓄積し、分析していき、その学習と思考の積み重ねの中から「最適解」を導き出し、アクションを取ることができるのがAIの特徴です。
コンピュータの演算能力は当然ながら人間を遥かに凌駕していますので、人間では到底不可能な量のデータを収集・蓄積し、それに基づく判断が可能となります。
そのため、従来の人の「経験や勘」に頼った作業をAIに置き換えることで、これまでになく迅速で正確な業務遂行が可能になるのです。
例えば、建設業において、AIの特徴であるビッグデータの解析と処理は、以下のような労働集約型業務を自動化することを可能にします。
これらの業務におけるAIの活用はすでに始まっており、大きな成果をあげ始めています。
特にAIによる「作業スケジュールの最適化」は、プロジェクトの進行状況を正確に把握し、膨大なデータに基づいて適切な人員を配置することができるため、無駄なくスムーズに作業を進めることを可能とします。
結果的に、これまでになく効率的なプロジェクト運営を実現し、建設業の作業効率と生産性アップに寄与するでしょう。
こうした「AIが判断して作業効率を上げる」技術と、現場での労働を肩代わりするロボット技術を組み合わせることで、人間が行ってきた物理的な作業の自動化にも貢献できます。
他にも、ドローンを活用すれば、建設現場の視覚的検査を手軽に行うことができるため、事故リスクの予防に大きく貢献しますし、重機操作ロボットによる土木作業の自動化なども効率を飛躍的に高める可能性を秘めた技術です。
これらのテクノロジーは、建設業界が直面している労働力不足を補い、作業の効率化と安全性向上に寄与することから、すでに世界中のあらゆる建設現場で用いられています。
建設業のDXにおいて、「VR(Virtual Reality:バーチャルリアリティ/仮想現実)と「AR(Augmented Reality:アグメンティッド・リアリティ/拡張現実)」は、現場作業の効率化と安全性向上に大きく貢献する技術として注目されています。
VRはバーチャルな世界でリアルに近い体験ができることから、シミュレーションの場として活用することで、現場における安全面の検証ができる環境を提供してくれるでしょう。
安全なシミュレーション環境は、作業員の安全教育や作業訓練の分野での活用も期待されており、各現場のシミュレーションと教育・訓練の両面から、安全かつ効率的な現場の構築を手助けしてくれるのです。
具体的には、3D空間における建築物のモデリングなどに使用され、設計フェーズでのエラー検出や、完成イメージの共有に役立ちます。
また、現実の世界を拡張する技術であるARは、例えばスマートフォンと連動させて、実物の建築物と図面を重ね合わせて現場を確認できるようになるなど、現場での情報提示や作業指示に活用でき、現場の作業精度と速度を向上させるとともに、ミスを予防し安全性の確保にも寄与するでしょう。
設計段階でのエラーの早期発見を可能にすると共に、実際の建築物がどのように見えるかをクライアントやチームメンバーと共有することで、合意形成を促進することにも役立つのです。
それだけでなく、VRとARは、現実空間での検証ではなし得なかったデザインの検証作業が安全に行えるため、これまでの常識にとらわれない建築デザインの革新をも生み出しました。
近年はBIM「(Building Information Modeling:ビルディング インフォメーション モデリング)」と呼ばれるコンピュータ上に作成した3次元の建物モデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うシステムが、建築デザインにイノベーションを起こす画期的なワークフローとして注目を集めています。
「IoT(Internet of Things:インターネット・オブ・シングス)」とは、日本語では「モノのインターネット」と訳され、センサーや通信機能を持った機器をインターネット経由で機器同士を接続することで、各機器が集めた情報を様々な場所で活用することができる技術の総称です。
例えば、IoTを利用して、機器のリアルタイムモニタリングを行い、効率的なメンテナンスと故障予防に役立てることができます。
センサーを建設機器に取り付け、機器の動作状況や環境情報をリアルタイムに収集・分析することができれば、機器の故障リスクを早期に察知し、適切なタイミングでメンテナンスを行うことが可能になるのです。
また、インターネット網を活用することにより、遠隔操作や自動化を行うことが可能になるため、単純なデータの収集や、簡単な機器の操作だけのために、わざわざ現場に赴く必要はなくなります。
このことは、つまり「空間と時間の壁を突破すること」を意味しており、慢性的な人手不足に悩む建設業の作業効率と生産性の大幅アップに一役買ってくれるのです。
「ブロックチェーン」とは、日本語では「分散型台帳技術」と訳される技術で、一般に「取引や契約などの記録が連鎖的に繋がったデータベース」のことを指します。
記録である「ブロック」が、「チェーン」のように「連鎖的に繋がっている」ことから、「ブロックチェーン」という名がつけられました。
これまでの商取引では銀行や役所など一部の組織がデータを一括管理する「中央管理型システム」が当たり前でした。
これに対して、ブロックチェーンの場合はシステムを利用しているアカウントが互いにデータを保管する分散管理体制のシステムで、中央管理体を必要とせず、データの「信用・正当性」を担保できる仕組みである点が特徴です。
分散管理の最大の利点は、データの改ざんができない安全性と、ネットワーク上にデータを分散保存することにより、一部が欠損してもデータを再構築できる耐久性にあります。
建設業界においては、契約締結や取引のプロセスをデジタル化することで、スマートコントラクトな取引を可能とするでしょう。
スマートコントラクトとは、「あらかじめ設定したルールに従い、ブロックチェーン上の取引(トランザクション)や外部から取り込まれた情報をトリガーにして実行されるプログラム」を指しており、取引を自動化できる仕組みです。
スマートコントラクトは、第三者を介入させる必要がなく、所定の条件が満たせば自動的にプログラムを実行するシステムであるため、スムーズでありながら、透明かつ安全な信頼性の高い取引を可能にします。
ブロックチェーンを利用すれば、仲介者や保証機関などに支払う手数料も不要となるため、コストの削減も同時に実現できるのです。
また、建設プロジェクトにおいて重要となる、素材の供給元から最終製品までのプロセス全体を追跡できる(トレーサビリティ)に関しても、全ての情報を透明かつ安全に記録できるブロックチェーンは、優れた力を発揮するでしょう。
ブロックチェーン技術の活用によりDXを推進することができれば、企業が行う取引全般の透明性、効率性、信頼性を向上することができます。
内閣府が進める【ムーンショット型研究開発制度(ムーンショット目標)】は、日本社会の大きな課題解決を目指した長期的な開発目標です。
つまり、ムーンショット目標とは、内閣府が主導する「日本社会のDX」そのものであり、日本国内で活動するあらゆる企業にとって、決して無視することのできないプロジェクトなのです。
ムーンショット目標を達成するためには、デジタル技術の進化が不可欠であり、建設業界のDXもその重要な役割を果たすことが期待されています。
ムーンショット目標には、「身体、脳、空間、時間の制約からの解放(目標1)」や「自ら学習・行動し人と共生するAIロボット(目標3)」の実現などが設定されていますが、それら目標は前章で紹介した建設業のDX推進と密接に関わっています。
建設プロジェクトの設計から施工、維持管理まで、一連の流れをDXにより効率化できれば、「社会を形づくる建設業」としての基盤は大きく進化するでしょう。
それだけでなく、すべての人々がIT技術を適切に活用する社会が実現できれば、市民1人ひとりが自身の生活環境を自由にデザインし、それを建設業界が実現可能なプランとして実行するといった社会構造をも生み出すことに繋がるのです。
それこそが、「地球環境の再生(目標4)」や「こころの安らぎや活力を拡大(目標9)」など、日本の未来を描くムーンショット目標を現実のものにする内閣府の構想と考えることができるでしょう。
建設業界のDXは、ムーンショット目標の実現に向けた重要な一歩であり、より人々が暮らしやすい社会の実現に向けた「未来予想図」を描くための大きな指針となってくれることは間違いありません。
建設業のように、インフラ整備など公共事業に関わることが多い業界のDXを推進するためには、国や地方自治体の関連省庁との連携は欠かせません。
そのため、日本政府としても様々な省庁を窓口に、企業のDXへの取り組みを後押しする政策を実行しています。
ここでは、特に重要な3つの事例を取り上げ、国のDX補助政策をご紹介します。
国や地方自治体は、デジタル技術導入を推進するための様々な補助金や助成金の制度を設けています。
中小企業でも新技術を導入しやすくしてDX推進に取り組む際の初期投資の負担を軽減するために、代表的なところでは次のような施策が対象となっています。
DXに対する先進的な取り組みを評価する表彰制度を設けて、デジタル技術の活用を推進することも行政の大切な役割です。
すでに国内外のインフラプロジェクトに携わる技術者の実績や、デジタル技術の導入と効果的な活用を行っている企業やプロジェクトの表彰制度などが設けられており、他の企業にも参考になるモデルを可視化しています。
DXを推進するためには、適切な方針と具体的な実行計画が欠かせません。
これを後押しするために、関係省庁はDX推進の具体的な道筋を示すためのガイドラインを作成しています。
ガイドラインには、BIM導入の手順、AIの活用方法、IoTデバイスの選定と管理、データ保護のためのセキュリティ対策などが含まれており、各企業が自社のビジネスモデルや状況に合わせてDXを進めるための一助となってくれるでしょう。
岡山県に拠点を置く山陽ロード工業株式会社は、「橋梁・トンネルメンテナンス事業」「交通安全事業」を二本柱に活動しています。小規模ではありますが、同社はDXの推進に積極的に取り組み、成功を収めている企業です。
同社がDXに取り組み始めたのは、少子高齢化による人手不足と感染症対策に直面したことで、「この困難を乗り越えるためには、IT技術の導入が不可欠だ」と判断したことがきっかけでした。
そこからDXについて検討を始めた結果、社内リソースだけでは不十分であると判断し、専門的な知見のある外部ベンダーとの協働でDXを進めることを決めた山陽ロード工業は、株式会社MUと共にWeb会議システム「SRiChat」を開発し、業務に導入したのです。
このシステムは、ブラウザベースのシステムで、ユーザー登録だけで利用可能なため、ITに不慣れな企業でも容易に取り入れることができます。
システムの導入により、同社は人的・時間的なコスト削減を実現することができ、人材不足の解消という目標の達成に繋がりました。
また、コロナ禍の県外移動制限下でもスムーズに業務を行うことが可能になったため、未曽有の危機の影響を最小限に抑えることができたのです。
このシステムを導入したことにより、顧客と画面越しで顔を合わせた打ち合わせが可能になったため、顧客からも「意思疎通が容易になった」と好評を得ています。
更に、今ではそのシステムを同業他社に紹介・販売しているため、自社の業務効率化に留まらず、新しいビジネスモデルの創出にも繋がりました。
山陽ロード工業の事例からも、建設業界におけるDXの導入がいかに重要かが見て取れるでしょう。
同社の取り組みは、建設業界におけるDX推進の1つの成功モデルとして、多くの企業の参考となるはずです。
DXは現代ビジネスにおいて避けては通れないものであり、建設業界もその例外ではありません。
中小の企業においても、グローバル化するビジネスシーンで生き残り、新たな可能性を見つけ成長していくためには、DXへの積極的な取り組みは必要不可欠です。
その達成のためには、数多くのステップがあります。
こうした多数のステップを乗り越えていくことは、一朝一夕で達成できるものではありません。
しかし、その先には既存業務の効率化、生産性の向上、サービスの質の向上など多くのメリットが待っています。
建設業界に携わる経営者の皆さま、DX推進担当者の皆さまは、今こそ行動を起こす時です。
新たなテクノロジーを取り入れ、組織の風土を変え、積極的に資金を調達し、具体的なアクションプランを立てて実行することで、新たな未来への一歩を踏み出すことが可能になるでしょう。
もしDXに関する悩みがある場合は、建設業のDX推進においても豊富な実績を持つ株式会社MUに、どうぞお気軽にお問い合わせください。
貴社のDX推進における重要なビジネスパートナーとして、二人三脚で貴社にピッタリあったビジネスモデルの効率化と変革をご提案させていただきます。
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