• 新規のお客様を集めるために広告費をかけている

  • それでも、前回車検を受けたお客様が2回目の車検で戻ってこない

  • 車検の案内はハガキか電話で、車検と車検の間の約2年は、こちらから連絡することがほとんどない



整備・車検・鈑金を手がける工場の経営者やフロント担当から、こうした声をよく聞きます。


整備工場の売上は、新規のお客様の数よりも、前回来てくれたお客様がまた戻ってくるかどうかで大きく変わります。そして、そのリピートは「車検までの2年間に一度でも接点があったか」で差がつくものです。


とはいえ、整備工場が1台ずつ台帳を見返し、次にいつ何を連絡すべきかを思い出して電話をかける、というやり方では、預かる車両が増えるほど続かなくなります。ここで力になるのが、顧客管理DX(デジタルトランスフォーメーション)です。整備履歴や車検満了日、走行距離といった台帳の情報を仕組み化すれば、「今月、どの車に、何を案内すべきか」が担当者の記憶や気づきに頼らず、毎月自動でリストとして上がってくる状態をつくれます。


この記事では、台帳のどの項目を使えばこの「次の接点」を自動で導き出せるのか、そして2年間の連絡カレンダーをどう組むのかを整理します。案内のしかたを変えて予約を増やした整備工場の事例もあわせて紹介します。



【本記事の要点】



  • 整備工場の売上は既存客のリピートで決まる。ところが多くの工場は、次の車検の直前まで顧客に連絡していない

  • 車検までに一度でも来店があった客と、ゼロの客では、リピート率に大きな差が出る

  • 整備履歴・車検満了日・走行距離・前回作業日を仕組み化すれば、次に案内すべき項目とその時期を、担当者の記憶に頼らず自動で割り出せる

  • 顧客管理のDXとは、情報を1カ所に集めることではなく、車両1台ごとに「次の接点」を1つ持つこと



整備工場の売上は、次の車検で戻ってくる客の数で決まる





整備工場のDX(デジタルトランスフォーメーション)というと、見積作成や車両情報の管理をシステム化する話になりがちです。しかし、経営の数字に直結するのは、前回来てくれたお客様が次の車検でまた戻ってくるかどうかです。ここでは、なぜ多くの工場でリピートが起きにくくなっているのか、そしてその差がどれくらい大きいのかを、順に見ていきます。


新規集客より、既存客の2年間を活かす


車検は2年周期(新車の初回は3年)の定期需要です。1台の車を長く預かれば、車検、法定点検、オイル交換、タイヤ、消耗品と、2年間で複数の入庫機会があります。新規のお客様を1人獲得するには広告費も手間もかかりますが、いま台帳にいるお客様がもう一度来てくれれば、その多くは不要です。


ところが、車検を終えたあとの動きを振り返ると、多くの工場は次の車検の1〜2カ月前まで、お客様に一度も連絡していません。「客が来ない」という悩みの正体は、新規が足りないことよりも、すでに取引のあるお客様の2年間を放置していることにあるのではないでしょうか。新規集客をやめる必要はありませんが、まず見直すべきは、この2年間の使い方です。


車検までに一度も会わない客は、戻ってこない


次の車検まで連絡しないことが、なぜリピート率に響くのか。ここでは、車検までの接点の有無で数字がどう変わるかを見てみましょう。船井総合研究所が整備工場向けに公開しているコラムでは、ある整備会社の数値が紹介されています。


その整備工場では、前回車検を受けたお客様全体のリピート率が70%を超える一方、車検までに一度も来店がなかったお客様は50%未満、一度でも来店があったお客様は約70%で、来店の有無だけで約20ポイントの差が出ているというものです。


もちろん、これはたった1社の実績であり、どの工場でも同じ数字になるわけではありませんが、車検までに接点をつくれているかどうかが、次の受注に効くという傾向は読み取れるのではないでしょうか。


理由は想像しやすいものです。2年間まったく連絡がなかった相手からいきなり車検の案内が届いても、お客様の側にはその工場との関係に馴染みがありません。その間に、ディーラーの点検パックや、自宅や職場の近くにできた新しい店に流れていることもあり得るでしょう。つまり、単純に案内の回数を増やせばいいというわけではなく、2年間のどこで、どんな理由で接点を持つかを設計する必要があるのです。



出典・参照:




整備履歴を「次の接点」に変え、2年間の連絡を仕組み化する





前章で見た「車検までの2年間に接点をつくる」という発想は、実はマーケティングの実務そのものです。2年間という期間を区切り、そのなかのどのタイミングで、どんな理由で顧客と接点を持つかを1つずつ設計していく。


多くの整備工場は、これまでこうした形で自社の顧客対応をマーケティングとして意識してこなかったのではないでしょうか。ここでは、その設計の手順と、マーケティングに不慣れな人でも無理なく実行できるようにするための、デジタルでの仕組み化の方法を順に見ていきます。


整備履歴を「次の接点」に変える


まずは、2年間のどのタイミングで接点を持つべきかを、1つずつ洗い出すところから始めます。多くの工場は、整備履歴や顧客台帳を「作業の記録を残すため」に使っています。これを「次にいつ・何を案内するかを出すため」に読み替えると、必要な項目が見えてきます。


使うのは、次のような情報です。




  • 車検満了日

  • 前回オイル交換日と、そのときの走行距離

  • 前回の作業内容(点検、部品交換、修理の履歴)

  • タイヤの交換時期や溝の状態

  • 任意保険の更新月



これらがそろえば、次の案内は機械的に出せます。前回オイル交換から一定の月数または走行距離で次回オイル交換の案内、車検満了日の12カ月前に法定12カ月点検、満了日の2〜3カ月前に車検予告、といった具合です。1台ごとに日付が違うだけで、ルール自体は共通です。


まず点検すべきは、台帳にこれらの項目が入っているかどうかです。走行距離や前回作業日が記録されていないと、「次の接点」を出す計算ができません。すべてを一度に完璧にする必要はなく、車検満了日と前回オイル交換の2つだけでも、案内は始められます。


2年間の連絡カレンダーを組む


項目がそろったら、それを1台ごとの2年間のカレンダーに落とします。ここまでの作業は、いわば1台の車ごとに、2年間のマーケティング計画を立てることに他なりません。


標準的な流れは、次のとおりです。


タイミング案内する内容
車検直後お礼と、次回オイル交換の目安
車検後数カ月オイル交換の案内
車検満了日の1年前法定12カ月点検の案内
その後タイヤや消耗品の状態確認
車検満了日の2〜3カ月前車検予告

これを1台ごとの実際の日付に当てはめ、毎月「今月案内すべき車両」のリストが出てくる状態にします。


案内の手段は、郵送のハガキ、電話、SMS、LINEなどがあります。SMSやLINEは費用が安く、開封されやすい連絡手段です。電話は相手の都合にされやすい反面、込み入った相談に向きます。接点の種類によって使い分けは必要ですが、先に決めるべきは「何を・いつ」であって、手段はそのあとです。


しかし、日々の入出庫対応や整備作業に追われている中、案内リストを毎月手作業で作っていては、いずれ続かなくなってしまうでしょう。これを回避するには、台帳から条件に合う車両を抽出し、案内文を送るところまでを仕組みにすることが要点です。


とはいえ、こうしたマーケティング的な発想は、多くの整備工場にとってこれまで意識してこなかった実務です。慣れない人がいきなり手作業で2年分の計画を組み立て、管理し続けるのは現実的ではありません。だからこそ、デジタルの力を借りて仕組み化することが欠かせないのです。


デジタルでどう仕組み化するか


これを実現する方法は、大がかりなシステム投資でなくても構いません。


すでに顧客管理ソフトや、整備業務用のPOS・DMS(ディーラー・マネジメント・システム)を導入している工場では、車検・点検時期を自動で知らせる通知機能が搭載されていることが少なくありません。使われないまま眠っている機能を有効にするだけで、ここまで見てきた内容の大部分は実現できます。


専用システムがない場合は、表計算ソフトでも十分です。車検満了日や前回オイル交換日から、日数計算の関数を使って「あと何カ月か」を自動で算出し、条件を満たした車両だけをフィルタで抽出すれば、毎月の案内リストは手作業ではなく計算で出てくるようになります。


リストができたら、そのままSMSやLINEの配信サービスに読み込ませれば、案内文の送付まで自動化できます。ここまでを仕組みにした状態が、この記事でいう「顧客管理DX」です。


顧客管理DXを実践し、予約を増やした整備工場





ここまで見てきた顧客管理DXを実際に進め、予約につなげている整備工場があります。それは、株式会社ティーアンドアイ(自動車の販売・買取・鈑金・修理・車検を手がける事業者)の取り組みです。


同社は以前、車検の案内をハガキやDMで送り、そのあと予約が取れるまで電話でフォローしていました。SMS送信サービスの公式導入事例によると、この電話のフォローに手間とコストがかかっていたといいます。


ところが、案内にSMSを加えたところ、案内をほぼ100%のお客様に見てもらえるようになり、予約件数は50%増加。お客様の側から予約の連絡が入るケースが増え、電話にかけていた手間とコストも大きく減ったとされています。


ここで確認したいのは、案内が「届いて、返信しやすい形」になったことが効いている点です。2年間の接点をどこで持つかという設計があってはじめて、届け方の改善が予約という成果につながるのです。



出典・参照:




まとめ:顧客管理DXとは、車1台ごとに次の予定を持つこと


整備工場の顧客管理DXは、顧客情報を1つのシステムに集めることが目的ではありません。整備履歴・車検満了日・走行距離・前回作業日から、次にいつ・何を案内するかを自動で導き出し、車両1台ごとに2年間の連絡カレンダーを持つこと。それが本質です。


顧客管理DXを進めたほうが良いとする背景には、業界の構造変化もあります。2020年4月に施行された自動車特定整備制度により、先進運転支援システム(ADAS)を搭載した車のカメラやレーダー調整には、電子制御装置整備の認証が必要になりました。


認証取得の準備期間として設けられていた4年間の経過措置は2024年3月末で終了し、設備投資や人材確保が難しい工場は、こうした車の入庫を断らざるを得ない場面が増えています。つまり、対応できる工場にとっては、すでに関係のあるお客様を保持していることの価値が、これまで以上に高くなっているのです。


車検前の一度きりの案内で勝負するのをやめ、2年をかけて関係を保つ工場が、リピート率でも、対応できない工場から流れてくる車の受け皿としても、選ばれやすくなります。案内手段の見直しは、その設計があってはじめて成果に変わります。


まずは、直近で車検入庫した車を10台選び、「次に案内すべきこと(次回オイル交換、12カ月点検、タイヤ、車検予告など)」と「その時期」を1台ずつ書き出してみてください。そこに、いまの台帳で足りない項目も見えて来るはずです。



出典・参照:



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情報提供元: DXportal
記事名:「 自動車整備工場の顧客管理DX|車検の「次の2年」に一度も連絡しない工場が失うもの