これまでは安全衛生委員会などの管理のもと職場環境を整備してきた企業も、テレワークでの作業環境までは指導、管理できていないのが現状ではないでしょうか。パソコンやタブレットを支給した会社はあっても、環境整備への指導や補助はまだまだ少ないようです。


 今回はデスクワークで特に重要な「姿勢」に焦点をあて、理想の環境や、企業としてテレワーク対象職員のためにできる支援をご紹介します。


 


テレワークに必要な環境整備とは



 コロナ禍で急速にひろがったテレワーク。心構えや準備ができていなかったという方も多いのではないでしょうか。自宅は食事をしたり、団らんを楽しんだりするプライベートな空間。デスクワークに適した環境とは大きく違っています。自宅で仕事を続けるために、どんな点に気を付けて環境を整えたらいいのでしょうか。


 


安全衛生管理としての環境整備


 


“VDT(Visual Display Terminals)作業に従事する者の心身の負担を軽減するためには、事業者が作業環境をできる限り VDT 作業に適した状況に整備するとともに、VDT 作業が過度に長時間にわたり行われることのないように適正な作業管理を行うことが重要である。

また、作業者が心身の負担を強く感じている場合や身体に異常がある場合には、早期に作業環境、作業方法等の改善を図り、VDT 作業を支障なく行うことができるようにする必要がある“


厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000546971.pdf)より


上記は厚生労働省のガイドラインに基本的な考えとして示されているものの抜粋です。テレワーク、出社勤務に関わらず、パソコンなどの情報機器を使用する作業は、事業者の管理が求められています


 


テレワーク環境チェックリスト



 


 上の図は厚生労働省から示されている「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備」です。実にたくさんの項目があり、どれから見ていけばいいのか迷ってしまいますが、整理すると光、空間、姿勢の3つに分けられます。


 光については、部屋やディスプレイの照度調整、太陽光の制御があります。生活空間はオフィスに比べて暗いことが多く、知らず知らずのうちに目に負担がかかっています。間接照明などを利用してデスク回りを明るくする工夫が必要です。


 空間については広さ、温度、湿度がチェックポイントです。エアコンや加湿器などを活用して快適な空間が保たれるよう調整します。特に湿度は体感でわかりづらいので、温湿度計を置いておくと一目瞭然で管理ができるでしょう。


 最後の姿勢については、心身への影響が大きくチェックすべきポイントも多いので、次から詳しくみていきましょう。


 


「職場環境」としてのテレワーク環境整備



 これまで食事をしたり、テレビを観たりしていたのと同じ机や椅子では、集中して作業できる環境、良い姿勢を保てる環境にはなりません。在宅勤務とは言え、1日の労働時間は8時間程度と変わらない方も多いのではないでしょうか。それだけの時間を過ごす「職場」作りには、どんな視点が必要なのでしょうか。


 


姿勢が悪いと生じる影響


 


 姿勢が悪くなると、椎間板が圧迫され続け、腰痛を引き起こします。されに関節や靭帯がゆがみ体全体のバランスが崩れ、インナーマッスルが劣化。神経圧迫や血流障害を起こし、様々な症状として現れます。

 さらに、姿勢が前かがみになると呼吸が浅くなり、1回の換気量が半分にまで減ってしまいます。換気量が減れば、体のすみずみの細胞にまで酸素が運ばれなくなり、エネルギー量が低下します。疲れやすくなり、脳機能も低下。集中力、判断力、思考力まで失われていきます。姿勢の良し悪しが、体の負担だけでなく、仕事のパフォーマンスにまで影響しているのです。


 


パソコン作業時の理想姿勢



パソコンでの作業をする際は、上の図のように膝、腰、肘がそれぞれ90度になるように座りましょう。この状態でモニターが目の前にくる高さにし、顔から50センチ離します。特にノートパソコンでは拡張モニターや外付けのキーボードが必要になるでしょう。モニターの位置が低いと首を前に曲げてしまい、ストレートネックの原因になったり、猫背になって呼吸が浅くなったりしてしまうので、投資をしてでも環境を整え、無理せず理想の姿勢が保てるよう整備することが大切です。


 


よい姿勢でも「座りすぎ」はNG


 


 いくら良い姿勢であっても長時間座りっぱなしでは健康によくありません。最近の研究で座っている時間が長いほど生活習慣病のリスクが高いことがわかり、「座りすぎ」が問題視されています。オーストラリアの研究機関が各国の座っている時間を調査したところ、日本は世界20ヵ国中1位の1日平均7時間という結果が出ました。働きすぎと言われる日本人は同時に座りすぎでもあったのです。


 座りすぎ対策として有効なのは、こまめな休憩です。人の集中力は20分ともいわれており、30分に1度、3~5分程度の休憩をとることはむしろ作業効率をあげる効果があります。仕事がはかどっているときに無理に休憩する必要はありませんが、30分~1時間に1度を目安に休憩をとることを習慣にしましょう。休憩の際は軽い運動をしたり歩いたりして、座っている間に使われない、ふくらはぎや太ももの筋肉を使うよう心がけます。また、スタンディングデスクを活用することも、同じ姿勢が長時間続くことをさけることができ、効果が期待できます。


 


健康経営としての姿勢指導



 デスクワークを長時間すれば、姿勢が悪くなるのは当然です。本来、体の真横にあるべき腕や手を前に出してキーボードやマウスを操作し、目線より低いモニターをのぞき込めば猫背もすすんでしまいます。仕事の大半をデスクワークで過ごすには、日々のメンテナンスが不可欠と言えるでしょう。職員の健康を管理するためだけでなく、職員のパフォーマンスを上げるという視点、つまり健康経営の視点からも、姿勢改善の指導やテレワーク職員への環境整備支援が求められています


 


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在宅勤務手当にプラスしたいテレワーク支援


 


 在宅勤務手当を支給している企業も増えているようですが、自宅の環境を整えてもらうには支給だけでは不十分です。正しい知識を身に付けてもらうための情報提供、姿勢や健康への意識を高める継続的な教育、モチベーションを保つ仕組みが必要です。

 まずは望ましい環境と現在の環境のギャップに気づいてもらうこと。そしてそれらを改善することによるメリットをしっかり認識していただき、会社がその支援をすることを表明します。そのうえでリテラシー向上のための知識提供をおこないます。研修の実施、社内報やメール配信を通じての情報提供もよいでしょう。モチベーション維持には、日々健康を意識するきっかけづくりがおすすめです。ストレッチタイムを作ったり、チームを作って目標歩数を定めたりしても習慣化しやすいでしょう。


 こういった取り組みは職員の健康管理だけでなく、ワークエンゲージメントにも作用し、生産性向上が期待されます。


 


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まとめ –姿勢改善でより良い組織に


 日常の中で自分の姿勢を意識することは多くありません。不調があっても姿勢が原因だと考えることは少ないでしょう。マッサージや温泉で血流をよくすることも一案ですが、これらはあくまで一時的な効果です。根本から改善するには、日々、よい姿勢を意識することが大切です。しかし、継続は難しいこと。誰でも継続しやすい仕組み化が必要です。


 おすすめは毎日時間を決めてリフレッシュタイムを作ること。テレワークで雑談などのコミュニケーションが減り、企業への所属意識や連帯感の希薄化が起こりやすくなっています。みんなの様子を見ながら一緒にストレッチをすれば、同期行動の効果でチームビルディングにも役立つでしょう。


 姿勢をよくすることはとっても気持ちのいいことです。まずは肩の力を抜いて胸を開き、たっぷり息を吸ってその気持ちよさを実感してみてはいかがでしょうか。



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〈出典〉 『最高のデスクワーク』(amazon)

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情報提供元: BUSINESS LIFE
記事名:「 テレワークのデスク環境そのままで大丈夫? ~在宅勤務手当だけでは不十分なテレワーク支援の必要性~