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今以上の美肌を目指すスキンケア成分として、特に研究や実績も増えているものが「成長因子」と呼ばれるもの。英語ではグロースファクター(Growth factor)という名称なので、ほぼ全て何とかGFと表記されます。
成長因子とは、簡単に言えば「ヒトの細胞に命令をする成分」で、ヒトの体を構成する無数の細胞は、体の各部位から分泌された成長因子を受け取る事で、細胞分裂を引き起こしたり、体に必要な成分を作り始めます。
ヒトは十分な栄養を摂取していても、成長因子が無ければ適切な細胞の活動が行われず、これが肌トラブルなどの原因になっています。
成長因子の中でも特にスキンケアに関わるものがEGF(表皮細胞成長因子)と呼ばれる肌の角質細胞を作り出すための命令をする因子や、FGF(線維芽細胞成長因子)と呼ばれる、肌のコラーゲンを作り出すための命令をする因子など。
成長因子の体内での分泌は加齢や体のダメージとともに減少し、特に30代以降では激減していきます。
30代以降、肌の老化が大幅に進むのはこの原因も強く、成長因子を取り入れる事はエイジングケアの強い味方になると言えます。
EGFやFGFを塗布した際のスキンケア効果は、アメリカで行われた実験によると、下記のような結果が出たという形で良く紹介されています。
EGF塗布による肌細胞の増殖効果は、EGFの含まれないクリーム利用と比べ平均で約284%(2.84倍)となった。
30代から60代の12名を対象として60日間の実験を行ったもので、最も効果が弱くでた32歳で1.5倍、最大効果が出た62際では8.7倍となった。
FGF塗布による肌内のヒドロキシプロリン(コラーゲン量の目安となるもの)量は、FGFが含まれないクリーム利用と比べて平均で約1.45倍となった。
この実験もEGFの実験と同じ対象者で行われたもので、期間は60日間。
なお、FGFを単体で利用するよりも、FGFとEGFの両方を合わせて利用した場合は更に効果が高く、平均で1.88倍のコラーゲン増殖が確認されています。(ただし、EGF単体で利用した場合のコラーゲン増殖率は1.09倍なので、EGF単体でのコラーゲン増殖効果は薄く、FGFと組み合わせる事で相乗効果が発生するものといえます。
以上のように高いスキンケア効果を持つ成長因子ですが、成長因子自体が非常に効果な成分である事や、それ自体は保湿力などがあまり無い事などから、成長因子と同じような働きをする成分も注目を浴びています。
その1つがプロテオグリカンで、高い保湿力とEGFに近い作用を持つ事から、多くのコスメに利用されています。
プロテオグリカン以外にも、EGFやFGFの構造に似せて人工的に作られたペプチド成分など様々なものがありますので、こういった成分が含まれるものを使用する事でコストを抑えたケアを行うのも良いでしょう。
今最も注目している方が多い攻めのスキンケアコスメといえば、幹細胞エキスではないでしょうか。
ここ最近、店頭でも「幹細胞コスメ」という商品が増えてきているので、多くの方が周知してきているのではないかと思います。
幹細胞コスメと通称はされますが、コスメ中にいわゆる「幹細胞(iPS細胞のようなヒトの細胞の元となる細胞)」が入っているわけではなく、正確には幹細胞培養液エキスという、幹細胞を培養(細胞に栄養を与えて細胞分裂をさせるイメージ)した際の「培養液」が利用されています。
幹細胞そのものにはDNA情報も含まれるため、医療現場でしか取り扱う事ができません。
幹細胞そのものが入っていないのであれば意味がないのでは?と感じるかたもいると思いますが、幹細胞を培養する際には、幹細胞から新しい細胞と同時に、周囲の細胞を活性化させる成長因子などのサイトカイン(細胞に指令を出すものの総称)が沢山分泌されるので、培養液には肌細胞の健康な成育を促進する成分が沢山含まれた状態となっています。
新しく作られた細胞を健康的に育むための成分がバランスよく含まれているため、スキンケアとして非常に優秀な効果が期待できるのです。
ちなみに、幹細胞コスメと呼ばれる中には、ヒト幹細胞ではなく植物の幹細胞などに由来する成分が利用されているものもあります。
同じ幹細胞という名前がついていますが、植物の細胞とヒトの細胞はそもそもの構造が全く異なりますので、植物由来の幹細胞成分が肌に与える影響というのは、かなり限定的なものです。
植物幹細胞由来の成分については、攻めのケアではなく保湿力などを中心としたケアとして考えた方が良いでしょう。
じつは、ヒト幹細胞エキスと総称している中にも、「ヒト脂肪細胞培養液エキス」や「ヒト神経細胞培養液エキス」というものが、それぞれ異なる成分として存在しています。
これは培養する幹細胞が、脂肪細胞由来なのか神経細胞由来なのかという違いで、よくあるコスメの紹介では神経細胞由来のほうが「希少価値が高い」とされているようです。
希少価値の違いではなく、効果としてはどう違うのかという点についてですが、この点についてはどちらが良いかというのはあまり明確なデータも存在しておらず、判断がしにくいものとなっています。
考え方としては、幹細胞エキスというのは、「新しく作られた細胞を守る」ために、「周囲の細胞を成長させる」ための成分がスキンケア効果を発揮するものなので、「新しく脂肪細胞が作られた時」と「新しく神経が作られた時」の、どちらの方が肌の細胞に影響を与えそうかという点での考察となりますが、脂肪細胞も神経細胞もどちらも肌組織付近に存在しているものですので、どちらかが大幅に高い効果を持っているとは言いにくいと考えられます。
個人的には、神経の方がより表層近くにあるため、表皮や真皮に与える影響は強い一方で、脂肪細胞の方が毛細血管との連携などがより必要となるため、血管新生などの肌組織全体を改善する作用は脂肪細胞由来の方が強いのではないかと想像しています。
ただし、これはデータなどを元にした検証ではなく、あくまでも個人の想像による仮説ですので、明確な研究報告が出てくる事を期待しています。
日本の大手原料メーカーである東洋紡が開発した大豆由来の化粧品成分で、ポリアミンとは「アミノ基を二つ以上もつ直鎖状脂肪族炭化水素の総称」の事。
植物にこのファイトポリアミンを添加した実験などでは、長期間水分を与えなくてもきれいな状態が続くようになるなどの効果が見られるというこの成分。
人の肌に対しては、肌の弾力を作る主要な成分であるコラーゲンが700%程度まで増加するなど、高いエイジングケア効果あるとされています(公式サイトより)。
ただし、公式サイト上で見られるデータは人の肌に塗布しての実験ではなく、人から採取した細胞を用いての試験管テストである可能性が高く、実際に肌に利用してもここまでのコラーゲン増加が達成できるものではない点には注意が必要です。
また、公式サイトのデータではEGFとビタミンCを用いた実験結果と比較を行っていますが、EGFはそもそもコラーゲンを増殖する作用が期待されるものではなく、またビタミンCについては生体内でのコラーゲン生成を補助する働きですので、比較グラフについてはあまり意味がないようにも感じます。
とはいえ、大豆由来のような安心感の強い成分で、はっきりとコラーゲン増殖の効果などが期待できる成分はなかなかありませんので、注目したい成分の1つです。
ヨーロッパとアジアを中心に、世界的に開催されている、化粧品成分のアワード「In-cosmetics」で2017に金賞を受賞した成分。コスメの配合成分としては「クダモノトケイソウ種子油」で、植物由来オイルの1つです。
この成分は、表皮と真皮の間にある部分の細胞を増殖させるなどの作用によって、皮膚全体の再構築を促し高いスキンケア効果を発揮するものとされています。
皮膚は紫外線など様々な刺激によりダメージを受け、そのダメージがシワとなったり、表皮と真皮の境目である基底膜部分に穴があく事でメラニンが真皮層に定着してシミとなったりしますので、こうした肌のダメージを修復するというパッショラインの働きは、肌を根本からケアする手段の1つとして有効です。
尚、クダモノトケイソウ種子油自体は、パッションフルーツオイルとして数多くのコスメに配合されていたり、単体で商品となっていますが、その全てがパッショラインに該当する成分とは限りませんので、メーカーのサイトなどを確認してみると良いでしょう。
こちらは2017年の「In-cosmetics Asia」(パッショラインが受賞したもののアジア大会)にて金賞を受賞した成分で、オロバンケラプムエキスとプロパンジオールによって得られる成分。
一般にあまり情報は出ていない成分ですが、オロバンキ属植物の一種から得られた植物エキスを主体とした成分で、肌の幹細胞を刺激する事によって、細胞の増強や肌のフローラバランスを整え、シワなどのエイジングトラブルを低減する作用があるとされています。
まだ殆ど市販商品に使われていないため、今後の展開に注目です。
今回紹介したような美容成分は、まだあまり一般に広まっているものではなく、量産に至っていないという事もあってまだまだ高額な成分が多いのが実情です。
しかし、どれも従来の「守る」ケアから一歩先に進んだ「攻める」ケアが期待できるものですので、今以上の美肌を手に入れたいという方には是非試して頂きたい成分となっています。
これから先、こうした高機能美容成分がより増えて広まって行くと同時に、誰でも手軽に手に入れる事ができる状態になると良いですね。