VRのプロが考えるVR産業の成長と現在の問題点

VRの認知度は数年前とは比べ物にならないほど高くなっており、VRを体験したことがある消費者も増えている。特に2016年にはHTC Vive、Oculus Rift、PSVRといったヘッドセットが登場したこともあり、初めてVRを体験した消費者が多いのではないだろうか。

VR産業が成長していることは疑うまでもないが、業界が課題を抱えていることも事実である。実際にどのくらいのペースでVRは成長を続けているのか、直面している課題にはどんなものがあるのか。VRの専門家を対象として、アンケート調査が行われた。

その結果は、回答者の立場で異なる傾向にあるようだ。プロとしてVRに関わっている人々の意見から、業界の現状が見えてくる。

VR産業は力強く成長している？

VRX EventとVR Intelligenceが実施したこのアンケートでは、500人を超えるVRの専門家が対象となっている。この調査では、対象となった専門家のうちほぼ半数が2016年を通してVR産業の成長がポジティブなものであったと回答した。

回答者の46%は前年のVR産業の成長を「非常に強い」または「強い」としている。一方で、26%は「期待よりも弱い」と答えた。

アンケートの対象となった専門家がVRのどの分野に関わっているかによっても、この感じ方は変わってくるだろう。モバイルVR向けにゲームコンテンツを作っているクリエイターと、企業がトレーニングに使うハイエンドVRヘッドセットのデザイナーでは全く見ているものが異なるはずだ。

ただ、26%という割合は無視できるほど小さくもない。VRを扱えば簡単に成功できる、という状況でないことは確実だ。

手軽さで人気のモバイルVRと、没入感の高い体験を提供するPC・コンソールベースのVR。それぞれの特徴があり、「ユーザの多いモバイルVRが強い状況が続く」と言われることもあれば「クオリティの低いモバイルVRが消費者のVRに対するイメージを損ねる」と言われることもある。

専門家たちが力を入れているVRの分野に対する回答からも、両方の意見が存在することは明らかだ。

全体の三分の一は、有線接続を必要とするハイエンドVRに力を入れていると答えている。別の三分の一はモバイルVRに注力しているとしており、残りの三分の一はその両方をカバーしているという。

消費者にとって購入すべきVRヘッドセットが分からないのと同様に、専門家もどのプラットフォームで作品を作るべきかを決めあぐねている状況のようだ。

TPCastのようなデバイスによってVRヘッドセットのワイヤレス化が進めば情勢も変化するだろう。オープンプラットフォーム化が進んでマルチプラットフォームが当たり前になれば、悩む必要もなくなるかもしれない。

VRが直面している問題についての質問では、それぞれが最も大きな原因は「相手側」にあると指摘している。VRコンテンツのクリエイターは64%がVRヘッドセットの価格を挙げ、ハードのメーカーやミドルウェアの技術者は66%がコンテンツの不足を挙げた。

立場による違いが現れた結果ではあるが、ヘッドセットの価格とコンテンツの不足が大きな問題であるという意識は共通しているようだ。クリエイターの58%はコンテンツの不足を感じており、技術者の55%はVRヘッドセットの価格がハードルになっていると指摘している。

その他の選択肢としては、次のようなものがある。消費者意識の欠如、ヘッドセットの大きさやデザイン、VR酔い、ヘッドセットの使いにくさだ。

VRが多くの消費者に受け入れられるために重要な項目ばかりではあるが、利用したいと思えるコンテンツが存在して、手頃な価格で入手できることが最初のポイントになるのだろう。値段が安くてもコンテンツが無ければ売れないし、どんなにコンテンツが注目を集めてもヘッドセットが高すぎれば購入者は限られる。

海外メディアのVR FocusとGamesindustry.bizがこの結果を記事にしているのだが、その見出しでの扱いは正反対だ。前者はVRの成長を前向きに捉えた意見、後者はVRの成長が物足りないとする意見を取り上げている。

実際に、どちらの捉え方もできる調査結果である。VR産業の成長そのものは続いているが、注目が集まったことでハードルを上げすぎた結果「期待よりは成長が弱い」という回答が増えた面もありそうだ。

2017年には、既に認識されている問題を解決してさらに大きく成長できるだろうか？

情報提供元： VR Inside