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現在話題に上がることが多いのはゲームや動画をはじめとしたエンターテインメント分野だが、VRは医療やヘルスケア、教育や建築といった実用分野でも活用が始まっている。
そうしたVRの活用を進めている分野のひとつに、「軍事」も存在している。
そこでこの記事では、VRの軍事活用について触れたい。
だが周りを見渡してみると、身近にある様々な存在が、実は軍事と関わりを持っている…というケースは多い。
たとえば、この記事を見るのに使用するPCの起源といえる「ENIAC(エニアック)」は、弾道計算を目的に開発されている。
PCじゃなくスマートフォンで記事を見ている…という場合でも記事を見るために使用しているインターネットは、ソ連からの核ミサイル攻撃を想定しアメリカが分散処理システムとして生み出した「ARPANET(アーパネット)」が原型。
記事を見ている最中、花粉症で鼻がムズムズして思わず鼻をかんでしまったなら、そのティッシュも軍事に関連したものであることを知ってほしい。ティッシュは第一次世界大戦中に脱脂綿の代用品として開発され、吸収力を高めたものがガスマスクのフィルターとして使われた。
繰り返しになるが、身の回りの様々なものが軍事と深い関わりを持っている。
軍事目的で生まれたものが平和利用されるケースもあれば、ダイナマイトのように平和利用を意図して生み出されたものが軍事利用されるというケースもあるのだ。
それでは、VRはどのように軍事利用されているのだろうか?
最初に取り上げるのは兵器にVR技術を利用した例。
ノルウェー軍の戦車システムだ。
このシステムでは「Oculus Rift」を使用することで、戦車周囲の視界をVRで体感することができる。
現代の戦車は様々なセンサーと戦車同士のネットワーク連携システムによって周囲の情報を獲得している。
しかし、運転のための視界の狭さは克服できていない。
この視界の狭さをVRによって克服しようという試みだ。VRを使うことで戦車の周囲360°をまるまる自分の視界として認識できるようになる。
続いては、兵士の教育システムとしてVR技術を利用した例。
VRヘッドセットを用いることで、トレーニングにおいて実際の作戦に近い体験をさせるというもの。
エンターテインメント分野におけるVR-FPSゲームと近いものといえるが、兵士の一挙手一投足が極めて正確にトラッキングされるとのことで、当然のことだが軍事訓練を想定した仕様になっている。
アメリカはVRに限らずもともとFPSの軍事活用に積極的で、新兵の募集と入隊希望者に訓練内容を把握させることを目的としたFPS「America’s Army」も開発している。
アメリカ軍によって開発されたFPS「America’s Army」。
ゲームとしてではなく軍事活用を目的として開発されているため、弾詰まりや体の部位ごとの負傷など、現実を極めてリアルに再現しようとしている。
アメリカだけでなく中国も、教育システムとしてVRを取り入れている。
中国人民解放軍では空挺部隊のパラシュート訓練用にVR機器を使用。
VRにすることで、兵士にリアルな落下感を体験させられるだけでなく、緊急時への対応方法なども訓練することが可能だという。
自衛隊は「BIve -ビィヴ-」というスマートフォンアプリを提供しており、このアプリでは航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」の飛行を、VRで体験することができる。
国民に対して自衛隊の理解を得るためのPR活動の一環といえるだろう。
軍事というだけでアレルギー的に知ることを拒絶する人もいるかもしれない。
ましてや、エンターテインメント分野の技術が戦争のために利用されようとしているという観点に立てば、許せないという人も少なくないだろう。
その一方で、現実的にいま世界に国家間の紛争やテロの脅威といったものが存在している中で、そうそう単純に「軍事何てなくしましょう」ということができないのもまた事実。
だとすれば、我々市井の人間にできることは、どのような技術が、何に利用されようとしているのか、事実をきちんと把握していくことだろう。
人間誰もが未来の自分の人生に対しての責任を背負っているので、いざという時に「知らなかった」で終わらせないよう、VRがどう軍事活用されていくのか今後も情報を集め、発信していきたい。
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