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1997年にSME(ソニー・ミュージックエンタテインメント)が発売した香港が舞台のアドベンチャーゲーム。
PlayStation用ゲームソフトであり、2010年にはSCEのDLゲーム販売サービス「ゲームアーカイブス」で再配信されたり、2014年にはサントラ、2015年に設定資料集が発売されるなど根強い人気を誇る。
そんなゲームをVR元年の2016年2月、宝塚大学 東京メディア芸術学部と協力してVR版クーロンズ・ゲート「九龍(クーロン)VR」開発した株式会社ジェットマン。
Oculus対応のやや薄暗い中国的な街を自由に動き回ることのできる同学部の研究成果物として体験デモを一般公開したところ、体験に訪れた一部ファンが感動のあまり涙を流すなど、ツイッターでも大きな話題となった。
そんなクーロンVRを作った株式会社ジェットマンに今回取材を試みました。
━━VR化に取り組まれた経緯を教えてください。
吉岡氏:2016年はVR元年と言われていますが、僕たちからするとこれまでVRの大きなウェーブは3回きていると考えています。
最初のウェーブは90年代のバーチャルボーイに代表される覗き込むタイプのゲームデバイスの登場、2回目のウェーブは2003年のSecond Lifeに代表されるメタバースの出現、そして、2016年のVR元年。
3回目の波となる今回は「最新の技術(VR)でコミュニケーションするとどうなるのだろう?」という問いに対して問題提起から、大学との研究的な意味合いで実施をしました。
━━クーロンズ・ゲートでやろうと思ったのはなぜでしょうか?
吉岡氏:もともと弊社の井上がPS版クーロンズ・ゲートの開発に携わっていましたし、今でも根強い人気を誇っています。
また、弊社で2回目のVRのウェーブとして捉えているSecond Lifeが登場したときに、PS版の時に出来なかった「双方向」「インタラクティブ」なコンテンツとして、約10年前に「Kowloon SIM」というクーロンズ・ゲートをテーマとした島を作りました。
Kowloon SIMを通してVRのコミュニケーションのあり方について知見を深めていました。SIMには今でも数十人の住民が活動し、10年以上住んでいる方もいます。
安定した収益を上げている実績も加味し、ゲームエンジンやVRデバイスなど環境が整い始めた今、最新の技術でもう一度クーロンズ・ゲートを再現してみようという流れになりました。
━━クーロンVRの開発期間はどのくらいでしょうか?
井上氏:開発に関してはかなり短期間でした。
宝塚大学東京メディア芸術学部と共同し、研究の一環としてUnrealEngine4を用いて3週間程度で完成させました。
こちらはプラットフォームはPCとOculus(DK2)です。
また、Second LifeのKowloon SIMもOculus専用のViewerがリリースされていたので、VR対応する以外は何も手を加えず双方向の没入型VRのコンテンツとしても運用しています。
━━クーロンVRの一番の特徴はなんでしょうか?
井上氏:Second Life版では、遠隔地でコミュニケーションできるところで、ネットにつなげばどんなに離れていてもVRの世界で対話が可能です。GPUのスペックが低いPCでもそれなりの挙動をします。
UE4版では、非常にゆったりした時間の流れのVRコンテンツであることと、3Dの音場がかもし出す深い没入感です。
━━画像の読み込みなどが大変そうなイメージがありますが、いかがでしょうか?
井上氏:Second Life版は綺麗に見えますが、テクスチャはPS版のオリジナルから流用しているので、そこまでスペックの高いパソコンでなくとも正常に動くと思います。
UE4版は動作環境を選びますが、こちらもPS版のオリジナルテクスチャを流用しています。
━━クーロンVRは商品化などはお考えなのでしょうか?
井上氏:そうですね、クーロンVRは来年のクーロンズ・ゲート20周年に向けてクラウドファンディングも視野に入れ、製品版としての開発を検討中です。
クーロンズ・ゲート自体はこれで完成しているゲームなので、VRで新たなゲーム要素を入れるのではなく、クーロンズ・ゲートファンに恩返しするような別の楽しみ方ができるクーロンズ・ゲートに仕上げたいと思っています。
━━ということは、FPSやバトルアクションのようなゲーム形式になることはないと?
井上氏:はい。少しの昔の話になりますが、1998年にクーロンズ・ゲートを出したとき、クソゲーだと言われたのですが、それはクーロンズ・ゲートが皆さんが想像するような「ゲーム」ではなかったからです。
それでも固定ファンがついてSecond Lifeのkowloon SIMは10年以上運営できていますし、他でもクーロンズ・ゲートのコンサートがあると、高額にもかかわらずチケットはすぐに完売している状況です。
そういった属性のクーロンズ・ゲートファンに対して提供するものは、クーロンズ・ゲートの世界・ピースを体験できるようなものをVRにしたいと思っています。
━━なるほど~。具体的な内容については決まっていますでしょうか?
井上氏:まだ詳しくは言えませんが、ゲームのスタイルではないと思います。
動かないVRかもしれないですし、1曲音楽を聴くくらいの感覚で毎日プレイできるものかもしれません。
とにかく焦燥感などがない時間の流れがゆっくり感じられるようなものをファンに向けて提供したいと思っています。
━━対応プラットフォームはいくつかお考えでしょうか?
井上氏:そうですね。大学と提携してやった研究開発はPCとOculusでやりましたが、それ以外でも考えております。
まだまだ企画段階ですが、私たちでできる規模でやれることを考えております。
━━開発エンジンは何を予定していますでしょうか?
井上氏:Unreal Engine(UE)4がいいのではないかと思っています。
大学と協力して作ったクーロンVRもUE4で作っています。
やはり描画の部分でどこまでクオリティの高いものを出せるかを考えるとUE4かなと思います。
ただ、コンテンツの広がりを考えるとスマホ対応を視野に入れる必要があるのでUnityを使うかもしれません。
━━ありがとうございました。
最後に、先出のクーロンVRを体験させてもらったが、一見ホラーっぽくも見えるが、焦燥感はない。クーロンズ・ゲートの空間にいる自分を楽しむゲームという感じがした。
喫茶店でお茶する感覚でVRをする、そんなテイストに製品版クーロンズVRは落ち着いていくのではないだろうか。
2017年のクーロンズ・ゲート20周年にリリースされるかもしれない「製品版クーロンVR」が今から楽しみだ。
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