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近年、VRを利用したスポーツ観戦に大きな注目が集まっています。
これまで、映像データが大容量となるため、VRでのリアルタイム中継は難しいとされてきました。
しかし、大容量データを高速・低遅延でやりとりできる”5G”が本格的に始動したことで、VRスポーツ中継ができる環境が整いつつあります。
ドコモやソフトバンク、KDDIなど通信大手が中心となって5Gを使ったVRスポーツ中継を導入し、新しいスポーツ観戦体験の提供を開始しています。
当初は試験的に開始されたVRスポーツ観戦サービスですが、技術の進歩とユーザーからのフィードバックにより一気に開発が進んでいます。
また、技術的なことに加えて、
・新型コロナウィルス感染拡大の影響
・2021年に開催される予定の東京オリンピック
という2つの社会的要請の高まりもVRスポーツ観戦の開発を加速させています。
新型コロナ禍の中で社会生活の多くの面で影響を受けていますが、大勢の人間が1箇所に集合して声援を送るスポーツ観戦も例外ではありません。
そのため、非接触型のスポーツ観戦形式の一つとしてVR観戦に注目が集まっています。
国内外から観客が集まるため、オリンピックはチケットの入手が困難となることが予想されます。
そこで、できるだけ臨場感を損なわずに遠隔地でも観戦できる方法としてVRに注目が集まるようになりました。
VR観戦には大きくわけて3つのメリットがあります。
VRスポーツ観戦は自宅に居ながらにして、スタジアムで観戦するのと同じ体験ができるのが最大のメリットです。
VR空間内に疑似観客席をつくり、そこから実際に行われる競技を観戦します。
モニター画面を通して観戦する通常のテレビ観戦などとは違い、実際に現地観戦しているような臨場感と迫力ある体験をすることができます。
2020年8月11日と9月29日の計2回にわたって横浜DeNAベイスターズとKDDIの共同で開催された「バーチャルハマスタ」では、自宅にいながらにして横浜スタジアムでの野球観戦が楽しめました。
バーチャル空間に再現された横浜スタジアムで選手を応援することができる「バーチャルハマスタ」では、エントランスやコンコースも忠実に再現され球場入りからリアルなスタジアム体験が可能です。
さらに、
実寸20m規模のDB.スターマン
現役選手の巨大パネル
などリアルの球場では実現できないVRならではのコンテンツも登場しました。
参考記事:KDDIプレスリリース
VRスポーツ観戦は自由度が高いという点も大きなメリットです。
VRスポース観戦なら、チケットが取れないような特等席やVIP席から試合の模様を観ることができます。
現実のスポーツ観戦ならできないような席の移動もVR観戦であれば自由にできます。
VRでは席の有無に拘束されることもありません。
こうしたVR観戦のメリットの例として、ソフトバンクが行った5Gを活用したVRスポーツ観戦の試みがあります。
福岡 ヤフオク!ドームで行われた実証実験の内容は、アバターを通してVR空間に再現されたスーパーボックス(特等席)から試合を観戦するものです。
観戦はスーパーボックスだけではなく、1塁側、3塁側、バックネット、ライトスタンドと視点を切り替えることもできます。
大勢の人と一緒になってアスリートを応援できるのは、スポーツ観戦の醍醐味のひとつです。
友人知人はもちろん、その場にいた見知らぬ人とさえスポーツ観戦を通じて興奮を共有することができます。
しかし、新型コロナの感染拡大の影響によって人が密集することが避けられるようになり、スポーツも無観客、あるいは極端に客数を減らして開催されることになりました。
その点、VR観戦ではアバターを通じてVR空間に再現されたスタジアムに集まるので、密集を避けつつリアルと同じような現場の一体感を体験することができます。
このようにメリットの多いVRスポーツ観戦ですが、事前の準備が必要です。
VRスポーツ観戦に必ず必要となるのは、VRゴーグルです。
VRゴーグルは主に
・スマホVR
・PCVR
・PSVR(PS4を利用)
・スタンドアロン(ゴーグル以外の機材不要)
の4種類に分けられます。
現状では、
「VRスポーツ観戦といえばコレ!」
とはっきり言えるものがないので、上記4種の中で、
「これが最適!」
と言い切れるものは残念ながらありません。
現状、VRスポーツ観戦の手段としてスマホVRが最有力とされています。
VRデバイスの中でもスマホは老若男女広く利用されていて、専用のVRゴーグルも安価であることから普及の条件が揃っているからです。
また、多くのスポーツファンにリーチしやすいという点は、競技側・運営側にとってもスマホVRにメリットを感じるポイントです。
スマホ向けのVR観戦用アプリがリリースされており、今後も5G時代を踏まえてVR観戦に便利なサービスがさらに増えてくることが予想されます。
スマホVR以外だと、OculusQuest2も有力候補の一つです。
Quest2は、PCなどの外部機器不要で楽しめるスタンドアロンVRゴーグルです。
外部機器に接続する必要が無いので、ワイヤレスで快適にVR体験を楽しめます。
余計なケーブルがなく快適に利用でき、携行性も高いことから外出先でもVR観戦をすることもできます。
また、Quest2ではすでに、
「Venue」
「Red Bull TV」
「MLB VR」
といった野球やエクストリームスポーツ団体の公式アプリがあることから、VRスポーツ観戦サービスの多くがOculusQuest2に対応することも大いに考えられます。
OculusQuest2は、
・ワールドを作成できる「VRchat」
・画面共有できる「Bigscreen」
といったVR SNSも活用できます。
VR SNSを使えば国内外のスポーツファンと一緒にスポーツバーやパブリックビューイングのように盛り上がることもできます。
様々な企業がVRスポーツ観戦に向けての取り組みを行っています。
いったいどのようなサービスがあるのか、事例などをいくつか紹介します。
2017年に行われたラグビートップリーグの試合「NEC グリーンロケッツ vs NTTドコモ レッドハリケーンズ戦」では、NTTドコモによるVR観戦の実証実験が行われました。
5Gによる新しいスポーツ観戦の実験として行われたのは、スタジアム外のブースにて360°の視点でのチームの紹介VR映像を上映するデモンストレーションです。
また、ドコモは2019年にはDAZNなどの協力でVR技術を活用したスポーツコンテンツ配信サービス「docomo sports VR powered by DAZN」をリリースしました。
VR空間のバーチャルVIPルームで試合観戦できるほかマルチアングルやリアルタイム情報更新にも対応しているアプリです。
期間限定でのサービスとして配信されたものですが、今後永続的なVRスポーツ観戦サービスとして期待されています。
オリンピック放送機構OBSは2016年に開催されたリオデジャネイロオリンピックでVR配信を試験的に導入しました。
さらに、2018年の平昌冬季オリンピックでは本格的にVR中継を活用するようになっています。
その時に活躍したのが、米国の半導体大手Intelが提供するVRスポーツ観戦サービス「True VR」です。
開会式・閉会式、フィギュアスケートやスノーボードなどの主要種目で「True VR」を使ったVR配信が行われました。
Intelは東京オリンピックでもVR中継も含む協力をすることになっており、
・開会式や閉会式
・陸上競技
・体操
・ボクシング
・ビーチバレーボール
といった多くの競技がVR観戦できる予定となっています。
参考:Intelプレスリリース
新型コロナ禍により集客・収益の面で日本各地の地域スポーツも苦境に立たされました。
この状況を受け多くのスポーツチームがある広島ではVRに活路を見出しています。
それが博報堂や地元のテレビ局、有力企業が共同で、広島のプロスポーツチームを応援するプロジェクトとして開始した「バーチャルワールド広島」です。
「バーチャルワールド広島」では、
・カープ
・サンフレッチェ
・ドラゴンフライズ
の3チームをそれぞれのVR空間で応援することができます。
来場者となるファンたちは自らの分身となる「アバター」となってログインし、新時代に相応しいデジタルファンミーテイングに参加することが可能です。
関連記事:VRスポーツ応援プロジェクト始動!バーチャルワールド広島でチームを応援
画像:RAGEニュースリリース
スポーツ観戦といっても運動競技だけではありません。
2020年8月、国内最大のeスポーツイベント「RAGE」はVR技術を活用したバーチャル空間内のeスポーツ施設「V-RAGE」をローンチしました。
「V-RAGE」とは、オフラインで開催されてきたRAGEをVRイベントプラットフォーム「cluster」で開催できるeスポーツ専用のVRスペースです。
アバターやボイスチャットを通じて実際の会場にいるかのように他の観客とコミュニケーションをとることができます。
また、通常の観戦のように衣装やグッズなどのアイテムを使うほか、
よりエンターテイメントを感じるような花火などの演出
選手に応援マネーを送れる投げ銭機能
を活用したVRならではの方法で選手を応援することも可能です。
参考:RAGEニュースリリース
これまでVRスポーツ観戦というと、ガジェット好き向けのスポーツの楽しみ方というイメージが強いものでした。
2020年に5Gが本格始動したことやVR機器が普及し始めたことで、新しくVRスポーツ観戦の魅力に気づいたという人も多いようです。
また、新型コロナ禍により現地開催ができないという社会状況も、VR観戦の追い風になっているという面があります。
この点では、特にスポーツの興行側もコロナ禍の中での新しいスポーツの見せ方としてVRの導入に熱心なようです。
オリンピックを控えますますスポーツ観戦の一手段としてVR観戦の存在感が増していきそうですね。
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