運転(乗車)中にVRヘッドセットを利用する


VR/ARといった視覚化技術は未来感が強い。こうした視覚化技術と並んで、かつてはフィクションの世界にしかなかったものが次々と現実に現れつつあるのが現代である。技術の発展によって現実になりつつあるものの中には、人間が運転しなくても乗り込んだ人を自動的に目的地まで連れて行ってくれる自動運転車(自律運転車)も含まれている。


ワーナー・ブラザーズは、自動運転車の登場によって生まれる人々の「暇な移動時間」を狙ってIntelと協力していくという。彼らは、自動運転車に乗っている時間がVR映像やARエンターテインメントを楽しむために使われる未来を構想している。


自動運転車が生み出す余暇の時間



自動車は電車やバスなどの公共交通機関に比べて時間を気にする必要のない便利な乗り物であり、地域や個人の生活スタイルによっては生活に欠かせない存在となっている。公共交通機関が発達していない土地に住んでいる場合や職場が主要な路線から離れた場所にある場合など、通勤の手段が自家用車という例も珍しくない。


通勤時間の使い方が変わる


ドライブが趣味で快適に通勤できるならば問題ないが、朝晩のラッシュに巻き込まれる時間に動くなら片道1時間以上も渋滞の中を走って通勤というパターンもあるだろう。気持ちよく走ることもできず、渋滞中でも気を抜けば事故の危険があるので他のことをするのも難しい。


そうした人にとって、自動運転車は大きな助けとなる可能性がある。運転を機械に任せることができるなら、今までイライラしながらハンドルを握っていることしかできなかった通勤時間に仮眠を取って仕事に備えたり、朝食の時間に当てたりといったことが可能になるからだ。


もちろん、朝の時間に余裕が生まれれば本を読んだり勉強したりと自分のために時間を使うこともできる。


遠出も簡単に


家族や友人と遠くまで出かける場合にも便利な自動車。荷物が多くても心配ないし、自分たちのペースで自由に行動できるのが大きなメリットだ。


だが、誰か一人はドライバーを務めなければならない。交代できるメンバーが居ないと長距離の移動では疲れてしまう、一緒に出かけても一人だけアルコールが飲めないといった欠点もある。


自動運転であれば全員が車内での時間を楽しめ、アルコールも一緒に飲めるので我慢する必要がない。


ワーナー・ブラザーズとIntelの狙い


自動運転車でこんな体験も?


Intelは9月にスタンドアロン型VRゴーグル「Alloy」の開発中止を発表しているが、Intelが視覚化技術への関心を失ったわけではない。今回新たに発表されたワーナー・ブラザーズとのパートナーシップも、VR/ARエンターテインメントコンテンツを提供するためのものだ。


ただ、彼らは既存のVRヘッドセットやスマートフォンで視聴するコンテンツを開発しようとしているわけではない。新たなターゲットとして考えられているのは、ドライバーが自動車の運転から解放されたことで生まれる時間だ。


運転時間がエンターテインメントのための時間になる?


車社会と言われるアメリカでは、平均的なドライバーの運転時間は年に300時間だという。もし自動車を運転する必要がなくなれば、彼らは何をするだろうか。


忙しくて慢性的に睡眠不足となっているドライバーが単に睡眠時間を増やすためにその時間を使うことも考えられるが、Intelとワーナー・ブラザーズの見立ては違う。彼らは、(元)ドライバーが新たに生まれた時間のかなりの部分をエンターテインメントコンテンツを消費するために費やすと考えているようだ。


車載エンターテインメントシステム市場の成長


AR技術を搭載した自動車の運転席から見た景色


もしIntelとワーナー・ブラザーズの目論見通りのことが起きれば、自動車メーカーは新車の購入を考える消費者を引きつける新たな要素として車載エンターテインメントシステムを開発することになるだろう。


そのときに必要とされるのは強力なプロセッサや豊富なコンテンツだ。そして、それを提供する能力を持っているのがIntelとワーナー・ブラザーズである。


Intel製チップを搭載する車載エンタメシステム


VR映像のレンダリングを行うGPUを製造するメーカーとしては、独立GPUの開発に力を入れるNVIDIAやAMDの名前が挙がる。IntelはPCベースVRのレンダリングに適した専用GPUを販売していないが、その強力なチップは車載エンタメシステムの中枢に据えられるものだ。


自動車メーカーがこぞってVRやARに対応するエンタメシステムを販売するようになれば、自動車にもインテルのチップが入っているのが当たり前の世界になるかもしれない。


ワーナー・ブラザーズのコンテンツを車内で視聴する


Intelがハード面でこの市場を狙う一方で、ワーナー・ブラザーズが狙うのはシステム上で視聴するコンテンツの市場だ。


消費者と300時間余分に接するチャンスが生まれれば、それだけ多くの広告収入を期待できる。コンテンツの販売を行う場合も、時間が許せばより多くのコンテンツを視聴するという消費者が多いだろう。


まずは安全運転


自動運転車の車内で使われる車載エンターテインメントシステムに自社のプロセッサを使わせたいIntelと、そのエンタメシステムで自社のコンテンツを視聴させたいワーナー・ブラザーズ。それぞれの縄張りが異なることもあって彼らの利害は一致しているが、まずは自動運転車を普及させることが第一だ。


既に一部の自動車には標準機能・オプションとして特定条件下での自動ブレーキや追従運転といった機能が搭載されるようになっているが、まだ完全に運転を任せるのは難しい。機能としては完全におまかせ状態で利用できるようになったとしても、不安を感じてくつろげない消費者も少なくないだろう。そんな状況ではエンターテインメントを楽しむのも難しい。


彼らが安心して乗っていられるような自動車が開発されれば、Intelやワーナー・ブラザーズが望んでいるような展開が起きるかもしれない。


 


参照元サイト:VR Room

参照元サイト:Silicon Angle

参照元サイト:Intel


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情報提供元: VR Inside
記事名:「 ワーナー・ブラザーズが自動運転車の車内で見られるVRコンテンツの提供へ