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ARKitのようなプラットフォームのおかげで、スマートフォンにARアプリケーションをダウンロードしてすぐに本格的なARアプリで遊ぶことができるようになっている。しかし、ARコンテンツを作りたいと思うと簡単にはいかないのが現実だ。
スタートアップ企業Thyngが開発する同名のアプリを使えば、iOSデバイス上で簡単にAR体験を構築することができるという。
VRとARという2つの視覚化技術は並べて語られることも多いが、それぞれの技術を使うためのハードウェアにも違いがある。
本格的なVRゲームなどを利用するためには専用のVRヘッドセットまたはVRに対応できる高性能なAndroidスマートフォンとゴーグルが必要だ。Cardboardプラットフォームの360度動画ならばiPhoneでも利用できるが、コントローラーでの操作などができず没入感は劣る。
一方、ARはARKitに対応したiPhoneがあれば利用できる。日本には特にiPhoneユーザが多いこともあり、ARアプリを使える環境が手元にあるというユーザも多いだろう。
コンテンツを消費者として利用するだけならば、iPhone1台で済むARは手軽だ。VRのようにスマートフォンをはめ込むゴーグルなども使わず、そのままiPhoneをかざせばAR機能を利用できる利便性が嬉しい。
だが、ARコンテンツを自分で作りたいとなると話が変わる。VRと同じくARでも、コンテンツの開発には相応のスペックを持つパソコンとプログラムの知識が必要だ。
VRではWebVRコンテンツの開発ツールなども出てきており、VRデバイスで視聴する360度動画ならば360度カメラで撮影するだけでも作れる。コンテンツを作る難易度を比較すると、ARの方が高いかもしれない。
ARコンテンツを作ってみたいという未来のクリエイターの願いを叶えようとしている企業もある。彼らが開発を進めるiOS用アプリケーション「Thyng」を使えば、iPhoneだけでAR体験を構築することができるという。
このアプリはiOSのARプラットフォームARKitを使って開発されており、ユーザが3Dオブジェクトや動画、写真を自由に配置することができる。インタラクティブなARゲームを開発可能なツールではないが、ユーザによっては面白いシーンを作り出すこともできるだろう。
また、このアプリはARを使った宣伝にも利用できるという。炭酸飲料やシリアルをカメラの前に置くことでパッケージがアニメーションするようなプロモーションを行うことが可能だ。
製品を購入することでThyngアプリ内で配置できる3Dオブジェクトがもらえる、というキャンペーンも可能だろう。
面白いアプリではあるが、現在のThyngにできることは限られている。現在は9人という小規模なチームで開発が行われおり、機能の追加に合わせて規模も拡大する計画だという。
最大の欠点としては、コンテンツを保存する機能がないことが挙げられる。ユーザがオブジェクトや動画を配置して作ったAR体験は保存されず、アプリを閉じると消えてしまう。そのため、せっかくARで面白いシーンを作ってもその場で楽しむことしかできない。
デベロッパーはThyngで作成したAR体験を保存し、共有することができる機能を追加する構想を持っている。もしこれが可能になれば、スマートフォンだけでARコンテンツを作って配信できる。ARコンテンツを作ってみたい個人や、広告にARを利用したい小規模な店舗などでも使えそうだ。
ThyngはARKitを使っているので、iOS端末専用のアプリケーションだ。iPhoneが利用者の多いスマートフォンであることは事実だが、iOS専用アプリではAndroidスマートフォンを使う消費者を無視することになってしまう。
現時点ではiOS11を搭載したiOS端末でしかAR体験の制作機能を利用できないが、パッケージを読み取ってコンテンツを表示する機能についてはAndroid版アプリも対応している。将来的には、AndroidでもARCoreへの対応による機能の追加が考えられているようだ。
高度な処理を含む複雑なARアプリを開発するには、知識や機材の準備が必要になる。しかし、Thyngならばオブジェクトを配置するだけで簡単にARシーンを作ることができる。開発ツールとして見てしまうとできることが非常に少ないが、AR技術を使った遊びのためのツールとしては受け入れられる可能性があるのではないだろうか。
パッケージをスキャンしてもらうことで企業のプロモーションに利用できる機能もあるため、パートナー企業を見つけられれば面白い存在になりそうだ。
参照元サイト:Built In Chicago
参照元サイト:Thyng
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