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アメリカ・コロラド州のデンバーにあるClyyford Still美術館では、2017年9月29日から2018年1月21日まで美術展「Still &Art」が開催されている。
同美術館は、アメリカ抽象表現主義を代表する画家Clyyford Stillの作品を所蔵・展示している美術館なのだが、同美術館には他の美術館ではあまりないような特別な展示ルールがある。
1980年に死去したClyyford Stillは、自身の絵画の展示方法に関して、遺言を残していた。その遺言とは、自身の絵画を他の画家による絵画と並べて展示してはならない、というものだった。
同美術館は、同画家の遺言を厳格に守り、同画家の絵画しか展示していない。しかし、この展示ルールは、美術展を企画するキュレーターを長年悩ませてもいた。というのも、同画家は他の画家の絵画にインスパイアされて描いた作品が多数存在するのだが、そのインスピレーションのもととなった絵画を並べて展示できないのだ。
しかし、この展示ルールを厳格に守りながら、なおかつ他の画家の作品を並列展示する方法がついに発明された。その方法とは、他の画家の作品はスマホを使ってAR表示する、というものだ。
こうして企画された美術展「Still &Art」では、来訪者にLenovo Phab 2 Proに渡されることになった。来訪者は、Clyyford Stillの作品のよこにAR表示するマーカーがある場合、渡されたスマホをかざせば同画家の絵画と関連性のある絵画をバーチャルに見ることはできるのだ。
例えば、同画家はアメリカのジョージア・オキーフの作品にインスパイアされた抽象絵画を描いているが、同美術展は文字通り史上はじめて両方の絵画を並べて鑑賞できるようにした(下の画像参照。上がオキーフの作品。下がClyyford Stillの作品)。
そのほかにも、ルーブル美術館に所蔵されている画家ジェリコーの大作「メデューズ号の筏」と、この絵画にインスパイアされたStillの絵画を並べて見ることができる(下の画像を参照。右がジェリコーの作品、左がStillの作品)。
以上の美術展では、展示に関する特別ルールがあったためにARを活用したのだが、物理的に離れた美術品をバーチャルに並列展示するというアイデアは、ほかの美術展でも使える。ARは、美術展の在り方を大きく変えるポテンシャルを持っているのだ。
本メディアは、ARを活用した美術展の事例をすでにいくつか紹介している。
カナダ・トロントにあるギャラリーであるオンタリオ・アートギャラリーでは美術展「ReBlink」が018年4月8日まで開催されている。
同美術展に展示されている絵画は、同ギャラリーが所蔵する制作年代の古い「古典的」な肖像画が中心となっている。だがしかし、古典的な絵画を展示しているにもかかわらず、極めて「現代的な」な美術展でもある。
同美術展を現代的にしているのは、その鑑賞方法にある。まずは通常通り、絵画を鑑賞する。次に絵画に対して、スマホカメラを向けるのだ。すると、古典的絵画に描かれた人物にAR表示が重ねられて、まるで現代に生きているかのようにスマホを使って自撮りしたり、スマホの画面をスワイプする様子が見れるのだ(以下の動画参照)。ちなみに、美術展の名称「ReBlink」は直訳すると「再びまばたきする」となる。
2017年3月2日から5日までアメリカ・ニューヨークで開催された美術展The Armory Showにおいて、Hololensアート作品「Concrete Storm」(コンクリートの嵐)が展示された。
同作品を鑑賞するためには、まず絡み合った緑色の線が描かれた部屋に入る必要がある。室内には緑色の線のほかには、膝くらいの高さのコンクリートの柱の一部が、いくつか散らばって建っている(トップ画像参照)。
ところが、Hololensを装着すると柱の上にホログラフィックな柱が表示され、天井まで柱がつながっているように見えるのである。ホログラフィックな柱は、鑑賞者の位置や移動に合わせて、その見え方が変わるようになっている。
このアート作品は、単にホログラフィックな柱を見せることでは終わらない。しばらく見ていると、なんとホログラフィックな柱が崩れるのだ。そのコンクリートが崩壊する様子は、まさにコンクリートが激しい嵐で壊されたかのようだ(下の画像参照)。
「Still &Art」展のように、今までは想像のなかでしか存在しなかった絵画の陳列が、ARを活用すれば現実となる。今後も、想像上の美術展を現実にするAR美術展が開催されるのではないだろうか。
ソース:VRFocus
https://www.vrfocus.com/2017/11/art-gallery-user-ar-to-display-hidden-paintings/
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