まだまだVR/ARが広く一般に普及しているとは言い難い現在のような状況では、開発したVR/ARコンテンツがどの程度の収益をもたらすのか、事前に読みにくい部分がある。


このため、Steamの早期リリースをしたり、VR/ARやインディゲームのイベントに出展するなどして潜在顧客の反応を見ながら開発していくのが重要となるが、加えて、なるべく開発労力を抑えて小規模に開発していくことも重要だ。


VR/ARコンテンツを開発する場合に、開発コストがかかるのがリソースの部分。開発中のVR/ARコンテンツがVR動画であれば、360°カメラを使って撮影することでリソースが得られるため、開発規模にもよるものの、リソース制作のコストはそれほど高くない。一方、リソース開発コストが問題となるのは、VRゲームを作る場合で、VR空間に描かれるすべての物体を3Dモデルとして制作しなければならないため、非常に大きな開発コストがかかるのだ。


こうした中、VR/ARコンテンツに利用可能な3Dモデルを配信するプラットフォームが登場。11月に入ってGoogleは「Poly」という3Dモデルの共有プラットフォームを立ち上げた。コストを抑えて、短期間でVR/ARコンテンツを作るための環境が整ってきたといえる。


 


そもそも3Dモデルを作るには!?3Dモデリングツールでのモデリング


出典元:Blender.org


VR/ARコンテンツ内や、3DCGを使ったゲームなどで用いられる3Dモデルを作るためには、3Dモデリンツが可能なソフトを使う必要がある。3Dモデリンツが可能なソフトには「MAYA」「ZBrush」「Blender」といったソフトをはじめ多数のソフトが存在しているが、機能が多く無料で利用できることから「Blender」を用いるクリエイターが多い。


「Blender」を用いて3Dモデリングする場合、基本的には空間上に点を打ち、その点を線でつないで面を作っていく…という形で行う。子どものころ、知育雑誌などで番号のついた点を線でつなぎ、絵を描く…というパズルをしたことがないだろうか?3Dモデリングは3Dというだけあって、前後左右上下、3次元空間すべてでつじつまがあうように点を繋ぐ必要があるが、やっていることは知育雑誌に掲載されていた点繋ぎパズルに近い。


面を作ったら面毎に光の反射や色といった情報を設定し、見栄えを決めていく。作業を効率化するためのツール類はソフトに備わっているものの、一から3Dモデリングするというのは、かなり手間のかかる作業だ。


3Dモデリング作業は、PCの画面を見ながら行っていくが、「Oculus Rift」などのヘッドマウントディスプレイを着用し、VR空間内で3Dモデリング可能なソフトも存在している。


 


VR空間内で3Dモデリング可能!Oculus「medium」


出典元:medium


Oculus「medium」は、VR空間内での3Dモデリングができるソフト。Oculus Touchを使い、自分の手で粘土をこねるように3Dモデリングが可能なため、直観的に3Dモデルを制作することが可能だ。


作成した3Dモデルは、多少の調整は必要になるものの、外部に書き出して他のソフトウェアで使用することができ、もちろん、VRゲーム用の3Dモデルとして使うこともできる。


【関連URL】

medium


 


GoogleのVRモデリングツール!「Blocks」




「Blocks」は、Googleによる3Dモデリングツールで、「medium」同様、VR空間で直観的な3Dモデリングが可能。もちろん、制作した3Dモデルを外部出力することも可能だ。Oculus RiftとHTC VIVEに対応している。


「medium」ほどリアルな3Dモデルを作ることはできないが、その分手軽に扱えるため、初心者~中級者がVRモデリングを学ぶというのに向いている。


 


3Dモデリングソフトのメリットは世界観にあった3Dモデルが作れること


ここまでに紹介した3Dモデリングソフトを使うメリットは、作ろうとしているVR/ARコンテンツの世界観にピッタリ一致した3Dモデルが作れるということだ。人間は、統一感が失われているコンテンツを見た時、「クオリティが低い」と感じてしまうことがある。


体験者にクオリティが低いと感じさせないVR/ARコンテンツを作ることを考えるのであれば、3Dモデリングソフトで1から3Dモデルを作成するという方法は十分選択肢の一つとなりうる。


その一方でデメリットとなるのが、1から3Dモデルを作成する以上手間がかかるという点。壮大な世界観のVRコンテンツを作る場合、背景となる空間を作るだけでも相当な手間がかかるはずだ。


 


効率的にVR/ARコンテンツを作るための強い味方!3Dモデル共有プラットフォーム


出典元:Asset Store



一から3Dモデルを作る以外に、最近では3Dモデル共有プラットフォームから3Dモデルをダウンロードするという方法も存在している。


たとえば、ゲームエンジン「Unity」には「アセットストア」と呼ばれる共有プラットフォームが。ゲームエンジン「アンリアル」には「マーケット」と呼ばれる共有プラットフォームが存在しており、それぞれ3Dモデルをはじめとしたゲーム用の素材をダウンロードすることが可能だ。


共有プラットフォームで配信されるゲーム用素材は基本的に有料だが、なかには無料で配信されるものも存在している。有料の場合でも、一から3Dモデリングする場合と比較すれば安価に購入できるため、効率的にVR/ARコンテンツを開発することが可能だ。


【関連URL】

Asset Store

アンリアル マーケット


 


Googleの3Dモデル共有プラットフォーム「Poly」


出典元:Poly



「Poly」はGoogleが11月1日に立ち上げた3Dモデル共有プラットフォーム。Googleが運営しているだけあって、前述の「Blocks」や3Dペイントツール「Tilt Brush」との連携機能が充実している。


3Dモデル作成ツールと密に連携しているということは、素材制作者が3Dモデルをより気軽に公開できるということ。なので、今後バラエティ豊かな3Dモデルが集結しそうだ。


「Poly」で公開されている3Dモデル素材の利用については、各素材ごとに範囲が定められている。中には、加工が可能なものも存在しているので、利用の際は素材個別に確認が必要だ。


【関連URL】

Poly


【関連記事】

「Poly」はGoogleの3Dオブジェクト共有プラットフォーム


 


3Dモデル共有プラットフォームのメリットはVRコンテンツ開発の手間を減らせること


3Dモデル共有プラットフォームを使う場合のメリットは、3Dモデルを作成する手間なくVRコンテンツを開発可能になるため、効率的なVRコンテンツ開発が可能なことだ。


ただし、デメリットとして3Dモデル共有プラットフォームに存在する3Dモデルが、開発中のVRコンテンツの世界観にピッタリ合うとは限らない…という点が挙げられる。VRコンテンツのトーン&マナーを考えずに、ただ手間を減らすためだけに3Dモデル共有プラットフォームの3Dモデルを使用してしまうと、場合によってはクオリティの低下を招く


このため、たとえば3Dモデル共有プラットフォームの3Dモデルについては、開発初期のプロトタイプ用に使い、後から自作の3Dモデルと交換するだとか、3Dモデル共有プラットフォームからダウンロードした3Dモデルを、VRコンテンツの世界観に合うよう加工する…といった形で利用するといいだろう。


 


開発ができることで、よりエッジの立ったVRコンテンツの登場に期待!


3Dモデルを手間なく調達可能な環境が整ってきたことで、これまでよりもVRコンテンツの開発スピードはアップするだろう。個人的には、開発スピードがアップした分、エッジの立った個性的なVRコンテンツを企画するための時間として使って欲しい。


というのも、ゲームやアプリといったコンテンツが効率的に作れる環境が整った現在、SteamやApp Store、Google Playでは、安易なコンテンツをスパム的にリリースするという業者も登場しているからだ。


スパム的な安易なコンテンツが大量に市場へ存在していると、ユーザーの満足度が下がって、やがて市場の崩壊を招くことになる。まだ十分に普及したとは言い難いVR市場にとって、スパム的なコンテンツは致命傷に繋がりかねない


VR市場の未来のためにも、筆者の個人的な希望としても、エッジの立った見たことがないVRコンテンツが大量に登場してほしい!


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情報提供元: VR Inside
記事名:「 GoogleがVR/AR用3Dモデル共有プラットフォーム「Poly」を開始!VR/ARに使う3Dモデルはどう調達する!?