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捜査官たちはMicrosoftのHoloLensを装着し、バーチャル空間上で、3Dモデル化された証拠品などの位置を確認するとともに、現場の映像や地図などを表示し、参照しつつ捜査を進められるようになる。
事件現場を3D化することで、現場から離れた場所であっても、現場の正確な状況を確認できるうえ、操作過程で誤って貴重な物的証拠を破損してしまうような事態も防止できる。
tuServのポテンシャルは、単に警察の業務をデジタル化するというだけにとどまらない。将来的には犯罪捜査のあり方を劇的に変化させるかも知れず、注目に値するアプリと言えるだろう。
Black Marbleは1997年に創設された会社で、エンドユーザー向けのソフトウェア開発を手掛けている。
開発は、主に、Microsoftのプラットフォームを用いておこなっているようだ。
同社は、様々な分野の課題を解決するためのソフトウェアソリューションを提供するサービスを展開している。
たとえばヘルスケアチェックを容易に受けられるようにする「BizTalk」はその一例だ。また、ほかにも今回のように、Hololensを活用したソフトウェアなどの開発ももちろんおこなっている。
tuServはUWP(Universal Windows Platform)で開発されたアプリケーション。
スマートフォン、タブレット、デスクトップPCなど、あらゆるデバイスで作動する。
1つのトピックに関連する複数の情報を、リアルタイムでの同時表示、閲覧を可能にする機能を持ち、導入によって業務効率化に貢献することが期待されるアプリだ。
キーボードやマウスだけでなく、マルチスクリーンでの操作に対応している点などが特徴だ。
VRSCOUTによれば、Black MarbleのITディレクターを務めるRik Hepworth氏は、HoloLensが初めて会社に届けられたときから、MRを犯罪捜査へ応用する、というアイデアを持っていたようだ。
Hololensには、現在ユーザーがいる部屋の精細なマップを作成し、表示するという機能が搭載されている。Hepworth氏とそのチームは、この機能を活用し、捜査現場のマッピングに利用できないか、と、閃いたのだ。
そこで、捜査現場で実際に指揮を執る警察官と共同で、今回の開発をおこなうことにしたようだ。
MRが警察で採用されれば、警察署内にいる警察官でも、事件現場にいる捜査官でも、場所を問わずに、バーチャル空間で共同捜査が実行できるようになる。
このように、犯罪捜査にMRを活用することには、いくつかのメリットがあるのだ。
まず、証拠保存をより確実におこなえるようになるだろう。
犯罪捜査官にとって、物的証拠の破損や、事件現場を荒らしてしまうことは、絶対に避けなければならない。
だが、現実空間で現場に立ち入るのではなく、バーチャル空間で犯罪捜査をおこなうようになれば、これらの心配は不必要なものとなる。現場に置かれるマーカーは3Dモデルで代用され、また、捜査時の正確な状況を、後からいつでも参照できるようになる。
さらに、3Dモデルだけでなく、現場の監視カメラの映像や、現場付近の地図なども同一空間に呼び出しつつ操作を進めることができる点も、tuServの強みといえるだろう。
単に、捜査過程における現実空間への依存度を低めるだけでなく、業務効率性も改善することが可能となるのだ。
また、tuServは捜査官同士での連携も容易におこなえる。
一旦、捜査官が現場に向かい、マッピングをおこなえば、他の捜査官はHoloLens Command and Control Appを通じて、それをシェアしてもらうことができるのだ。もちろんシェアされたデータは、そのまま捜査に利用することが可能となっている。
このようなかたちで、捜査業務の効率化も進むことが期待される。
Black Marbleでマネージングディレクターを務めるRobert Hogg氏は、次のように語る。
「警察は、新世代の警察業務用ソフトを必要としています。だから、私たちはこうしたプラットフォームを創り上げたのです」
tuServは、ベッドフォードシャーの警察長からも評価を得ている様子だ。
エンタープライズや、公的機関向けのイマーシブコンテンツ開発と聞くと、どうしても教育や医療といった分野に目が行きがちだ。
しかし、警察業務のように、テクノロジーの積極的な導入により、業務効率を改善できる余地がある分野は、まだまだ残されていそうだ。
参考URL:
VRSCOUT, Black Marble, Microsoft
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