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10月27日、米国の映画芸術科学アカデミーはメキシコの映画監督アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ氏が制作したVR体験「Carne y Arena (Virtually present, Physically invisible)」にアカデミー賞を授与すると発表した。
昨今、エミー賞やカンヌ映画祭などの著名な映画祭においてもVR作品が出品、受賞しているが、アカデミー賞でVR作品が受賞する例は今回が初となる。
今回受賞したイニャリトゥ氏は過去にも「バードマン」や「レヴェナント:蘇りし者」でアカデミー賞を受賞した経歴を持つ。しかしVR作品での同賞の受賞は史上初の快挙となる。
受賞作「Carne y Arena」はコンテンツ制作スタジオILMxLABと、映画監督エマニュエル・ルベツキ氏との共同によって制作されたものだ。
本作はルームスケール型VR体験とVR映画を融合した作品で、作品により没入できるコンテンツとなっている。本作は政治色の濃いテーマを扱っており、メキシコーアメリカ間の国境を越えようとするメキシコ不法移民の姿を描いたものだ。作中では移民たちが、国境を警備する警備兵やヘリコプターと遭遇する様子が登場する。
「Carne y Arena」ではこれまでの映画鑑賞を一新する新しいシステムを用いることで、観客はまるで作中の世界にいるかのような没入感の高い鑑賞が可能になる。
映画芸術科学アカデミーの代表であるJohn Bailey氏は、声明において以下のように述べている。
本作は11月11日にハリウッドで開催される第9回Governors Awardsにて受賞式が行われる予定だ。また、ロサンゼルス・カウンティ美術館にて11月12日まで展示が行われている。
VRを用いた映画は様々な作品が製作されており、著名な映画祭へ出品される例も増え、複数のVR作品が受賞している。
VRコンテンツ制作企業Jauntが制作したVRドキュメンタリー「COLLISIONS」は先日、エミー賞の”Outstanding New Approach”のドキュメンタリー部門を受賞した。
「COLLISIONS」は西洋文化に触れたことのない土地で先住民として暮らしてきたNyarriが、原爆実験を目撃した時の実体験をテーマにしたVRドキュメンタリーだ。
2017年のエミー賞ではこの他にも、ホワイトハウスの内部を特集したドキュメンタリー「The People’s House –Inside The White House With Barack And Michelle Obama」が受賞している。
エミー賞は2015年からVR作品をノミネート、贈賞を行なっており、これまでに同賞を獲得したVR作品としてFoxシリーズの「Sleepy Hollow」、Taylor Swiftのミュージックビデオ「AMEX Unstaged: Taylor Swift Experience」、Oculus Story StudioのVRアニメーション「Henry」などが挙げられる。
参考:Jaunt VRのドキュメンタリーフィルム「COLLISIONS」がエミー賞を獲得!
参考:エミー賞にDear Angelicaをはじめ、オリジナルVRコンテンツ、3作品がノミネート!
イタリアで開催されるベネチア国際映画祭においても、VRを用いた映画が出品されている。ベネチア国際映画祭はカンヌ映画祭、ベルリン国際映画祭と並ぶ世界三大映画祭の一つだ。
過去においては黒澤明や宮崎駿が受賞している本賞は今年で74回目の開催となり、VR映画「Melita」、「Snatch」、「The Argos File」の3作品が出品された。
世界最古の歴史を持つ映画祭として知られるベネチア国際映画祭でもVR作品が出品されたことは、VR映画が知名度を挙げ、映画表現の一ジャンルとして確立されつつあることを示すものだ。
カンヌ国際映画祭でもVRを取り入る動きが進んでおり、2017年のCannes NEXTにおいては約50種類のVRコンテンツが出品され、多くの映画人や著名人が出品された作品を体験した。
Cannes NEXTとは映画産業におけるイノベーションのハブとして機能する部門であり、2017年のCannes NEXTはとりわけVRコンテンツに力が入っていた。
VRを用いたアニメーション作品からインタラクション要素を盛り込んだ実験的な作品、また映画という枠を飛び越えた、多感覚に訴えかける体験システムなど、VRそのものが生み出す可能性を掘り下げる内容となった。
参照元:VRScout Iñárritu’s ‘Carne y Arena’ Just Won an Oscar
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