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2016年には一般消費者向けのVRヘッドセットが次々と発売されたが、2017年の終盤になってもVRを体験したことがない、自宅にはVRデバイスがないという消費者が多い。ゲームコンソールへの投資を惜しまないゲーマーやコアなIT好きはいち早くHTC ViveやOculus Riftを入手しているが、それ以外の層への拡大はゆっくりとしたペースだ。
今年に入るとハイエンドVRヘッドセットの値下げが行われ、Gear VRやDaydream Viewには新型が発表された。しかし、デバイスの値下げや解像度の向上だけがVRを普及させるポイントではないようだ。ハードウェアだけでなく、VRコンテンツも消費者がVRを利用するかを決める重要な判断材料となる。
VRコンテンツやソフトウェアを語る上で避けられないのが、ユーザエクスペリエンス(UX)の話題だ。
優れた機能を持つアプリやキャラクターが魅力的なゲームであっても、操作しにくいデザインやシステムが採用されていれば利用者は少なくなってしまう。ユーザを逃さず、増やしていくためにはVRアプリで直感的に利用できるシンプルなインターフェイスを構築しなければならない。
初めて使ったインターネットに接続できる端末がスマートフォンだったというデジタルネイティブでなければ、初めてスマートフォンを触ったときにパソコンとの違いに戸惑ったのではないだろうか。あるいはWindowsとMacOSやAndroidとiOSの違いで似たような経験をしたことがあるかもしれない。
今VRデバイスに触れる人々は「VRネイティブ」ではないため、VR空間でコンテンツを操作することに慣れていない。初めて触れたVRアプリケーションが扱いにくいものであれば、そのままVRそのものを使わなくなってしまうことも考えられる。
ただ、これはデベロッパーにとっても難しい問題だ。彼らにとってもVRは新しい技術であり、どういったインターフェイスがユーザに最高の使用感をもたらすかが分かっていない。
VRにおける標準的なインターフェイスがなく統一が進んでいないため、アプリの構築にはスマートフォン用アプリよりもコストがかかる。さらに、ユーザにはそのアプリに慣れるための努力を求めることになってしまう。
幸いにも、VRデバイスにはこれまでのIT機器にはない入力デバイスが存在する。
手の動きがそのままVR空間での入力になるハンドトラッキングコントローラーを使った操作は直感的であり、扱いの学習自体は容易だ。音声認識技術の進歩も、ユーザが複雑な操作を覚える必要をなくしてくれるかもしれない。
こうした技術を取り入れて扱いやすいアプリケーションを作ることができれば、消費者はもっと気軽にVRを利用するようになるだろう。
VRは今までのメディアにない体験をもたらしてくれる存在だが、夢のメディアというわけではない。当然VRにもできることとできないことがあるので、その制約を理解することが必要だ。
一例としては、VRデバイスが提供するプレイエリアの範囲がある。
ロケーションベースのVRエンターテイメント施設では広い建物を使った大きな空間でのVR体験が可能だが、家庭用のVRデバイスで実現できるプレイエリアの広さには限りがある。もしVR体験中にユーザの身体がそのトラッキングエリアから外に出てしまえば、ゲーム内の手はおかしな位置に移動してしまうだろう。
この制約は全てのVRゲームに共通するものだ。しかし、中にはそれを感じさせない作品もある。デベロッパーの工夫によって、ユーザを大きく移動させずに没入感の高い作品を作ることは可能だ。
制約があるのはVRだけではない。ARも同様で、初期のARアプリはポケモンGOのようにカメラに映ったものとCGを組み合わせるだけだった。しかし、ソフトウェアの進化によってさらにリアルな表現が可能となっている。
Appleデバイスで利用できるARKitやAndroidに対応するARCoreを使えば、壁やテーブルを認識してその上にオブジェクトを表示させることもできる。かつては不可能だった表現も、可能になりつつあるのだ。
こうしたARプラットフォームの登場もあり、しばらくはスマートフォンを使ったARが主流となるだろう。その先には、専用のARデバイスを使ってよりリッチな体験をもたらすARコンテンツが待っているのかもしれない。
先に述べたように、VRはデベロッパーにとっても新しい技術だ。彼らもまだこのメディアの特性を十分に理解しているとは言えず、現在リリースされているVRアプリケーションの中にはその特徴を活用できていないものも多い。
VRアプリケーションには、VR空間に大きなバーチャルスクリーンを表示して動画を見たり、パソコンのソフトウェアを使ったりすることができるものがある。しかし、それだけならばあえてVRヘッドセットを使わなくても実現できる。
シンプルに大画面のテレビやディスプレイを購入すれば、VRデバイスよりも解像度の高い画面で映画を見られる。VRヘッドセットと違って、大画面テレビは複数人で利用するにも向いている。
人気のVRアプリケーション『Bigscreen』はまさに、VR空間にバーチャルスクリーンを表示するためのアプリだ。だが、このアプリの機能はそれだけではない。
他のユーザとVR空間を共有でき、相手のディスプレイを見ることもできるのでシアタールームのように使ったり、一緒にゲームをしたりといったことが可能だ。こうしたソーシャル要素があることで、Bigscreenは大型ディスプレイを使えない人が代わりに使うだけのアプリになっていない。
ある意味では、VRデバイスが大画面テレビの代わりになる。だが、「VRヘッドセットがあるからテレビはいらない」というユーザは少ないだろう。毎回ヘッドセットを付けるよりもテレビの電源を入れる方が簡単で気軽だし、友人が遊びに来たときにも一緒に見ることができるからだ。
VRデバイスにも欠点があるので、VR空間で3Dアートを創るアプリや360度見回せる特徴を活かした脱出ゲームなど「VRならでは」の要素がなければあえてVRデバイスを使おうとは思ってもらえない。
消費者が魅力を感じ、VRデバイスを購入してまで体験したいと感じられるVRコンテンツが少ない最大の理由は、デベロッパーがまだVRのポテンシャルを引き出せていないことだ。VRの優れた点や扱いにくい点をきちんと理解したデベロッパーが増えれば、長所を伸ばし短所を補うコンテンツが作られるようになるだろう。
VR技術に対する過剰な期待が落ち着いてきた今だからこそ、冷静にその特徴を把握してコンテンツを開発することが求められている。
参照元サイト:Venture Beat
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