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VRデバイスで視聴可能な動画コンテンツを制作する企業には、いくつかのタイプがある。新しく立ち上げられたVR映像を専門に手がけるスタジオやテクノロジー企業を母体とする企業もあるが、テレビ番組や非VR映画を作っているスタジオがVR技術を取り入れる例も多い。
アメリカで人気のあるケーブルテレビチャンネルAMCも、VR技術を取り入れている企業だ。同社はGear VRまたはDaydream、あるいはiOSやAndroidを搭載したスマートフォンで利用可能な360度動画のアプリを公開した。
現在Oculus Store(Gear VR版)、Google Play Store(Daydream版と2DのAndroid版)、App Store(2DのiOS版)からダウンロード可能だ。アプリのダウンロードやコンテンツの視聴は、いずれのバージョンも無料となっている。
『AMC VR』アプリが対応するVRプラットフォームは、Gear VRとDaydreamだ。いずれもスマートフォンを使用するモバイルVRプラットフォームであり、HTC ViveやOculus Riftといったハイエンドデバイスへの対応は発表されていない。また、アプリの対応が発表されることも増えてきたWindows Mixed Realityにも非対応だ。
その代わりと言うべきか、iOSまたはAndroidを搭載したVR非対応のスマートフォンで利用できるアプリも用意されている。ただし、このアプリを利用できる機種も多くないようだ。Android版の要件はAndroid 5.0以上とされているが、条件を満たしていても古めの端末ではダウンロードすることができなくなっている。
Gear VRやDaydreamに対応するということなので、この先発売されるVive FocusやOculus Goといった独立型VRヘッドセットで視聴することもできそうだ。
VR動画を視聴できるアプリは様々な企業から提供されているし、ブラウザからYouTubeやFacebookにアクセスして直接再生が可能な360度動画も多数公開されている。コンテンツの数が多くなってきた今、重要視されているのがその内容の充実だ。
視聴可能なコンテンツがいくら多くても、利用するユーザが見たいと思うものがなければ無いのと同じである。野球ファンと音楽好きでは適しているアプリが異なるだろう。さらに同じ音楽好きの中でも、ライブ映像を提供しているアーティストによって使いたいアプリが分かれるはずだ。
AMC VRアプリでは、映画の予告編や人気シリーズの360度動画コンテンツが提供される。新しく視聴者を獲得するよりもむしろ、普段からテレビでAMCの番組を見ているVRユーザの興味を惹くことができる内容だ。
AMCのMac McKeanは、このアプリが視聴者の望む体験をもたらすと語っている。AMC VRアプリを使うことで、視聴者は「自分がテレビで見ている世界に入り込む」体験が可能となるのだ。
一般的なテレビ番組における視聴者の立場は傍観者だが、VR映像では視聴者自身が登場人物の一人になったかのようにその世界を体験することができる。人気テレビシリーズをテーマにしたテレビゲームやVRゲームも作られているが、VR映像もまた各作品のファンにとってはたまらないコンテンツと言えそうだ。
スポーツやアーティストのライブではないVR映像コンテンツには、大きく分けて二つのタイプがある。映像そのものが作品であるもの(VR映画)と、映画・ゲームや観光地の広告媒体としての短編VR映像だ。
VR映画では作品自体が長めのものも作られており、各地で開催される映画祭にもそうした作品が出品されている。人気シリーズを映画化したものだけでなくオリジナルの作品も多く、単体でじっくり楽しめるものが多い。
欠点は、多くの人に観てもらうのが難しいことだ。映画館は世界中にあるが、VR映画を上映可能な設備を備えた施設は限られている。家庭用VRデバイスにしても、普及率は伸び悩んでいる。
しかも、VR映画の制作には通常の映画撮影とは異なる機材やテクニックが要求される。特殊な機材や映像の編集などで制作にコストがかさむのに、観客を増やすのは難しいという問題を抱えているのだ。
VR映画がより広く娯楽として浸透するためには、ハード面の整備が重要になるだろう。
一方で、広告のために使われるVR映像は短編作品が多い。
長編映画に比べれば映像を通して伝えられるメッセージの量は限られてしまうが、映画本編を見たい、ゲームをしたいと思ってもらうことができれば成功だ。AMC VRアプリで提供される映像に求められる役割はこちらだろう。まだVR映像そのものに珍しさがあるため、広告効果が期待できる。
現時点でAMC VRアプリで視聴可能なコンテンツの数は多くないが、ダウンロード数が多ければさらに多くのタイトルに関連する映像が追加されていくだろう。
参照元サイト:AMC Networks
参照元サイト:Road To VR
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