ロシアのスタートアップ企業、Piligrim XXIは、ARを用いて興味深い取り組みを行なっている。


同社は現実世界にAR表示された「デジタル・ランド」を世界中に構築し、ユーザーはAR表示された土地を購入したり、コンテンツを売買することが可能になるという。


本サービスは「Arcona」という名称で開発が進められており、2017年末から運用を開始、2019年の世界展開を目指している。


概要


AR表示された世界で、仮想通貨で土地を購入


「Arcona」はブロックチェーン技術を用いたARプラットフォームだ。これはARを用いて現実世界に「デジタル・ランド」を表示して、ユーザーはAR配置されたコンテンツをアプリを通じて視聴する。


ユーザーはAR表示された土地やコンテンツ、ソフトウェアなどを売買することが可能になるという。購入は「Arcona」が発行する独自の仮想通貨(=トークン)を用いて行う。



2017年末からサービス開始予定


「Arcona」は2017年11月からサービスを開始する予定で、最初はトークンの売買から始めるとのことだ。また、オンラインで様々なARコンテンツを購入できるマーケットは2018年第1四半期(1〜3月)にかけてオープンする予定だ。


2017年末までには「デジタル・ランド」を使用するためのARアプリのプロトタイプを公開し、実際の土地を使用して「デジタル・ランド」の展開を試験的に開始するという。


「Arcona」について詳細は多く公開されていないが、ARによって構築された世界で土地やコンテンツを売買できるというサービスは新規性が高い。


「デジタルランド」を世界各地で展開


計画では、「Arcona」が提供するデジタル・ランドは2019年に正式に展開を開始する予定だ。


「Arcona」は世界各国で展開される予定で、ニューヨーク、ロンドン、パリ、東京、北京、ローマ、メキシコシティ、サンクトペテルブルグ、イスタンブール、バルセロナにて、「Arcona」によって構築されたAR世界に参加できるという。


デジタル世界の土地は1平方メートルを1ドルで購入することが可能で、最大で1,500平方キロメートルの土地が購入可能とのことだ。「デジタルランド」はAR表示されたバーチャル世界なので、実際の世界に重ね合わせて表示される。


その際、AR表示を行う土地の所有権との兼ね合いはどうなるのか?などの様々な疑問が生じるが、Piligrim XXIは現在のところサービス内容と将来的なプランのみを明らかにしているため、詳細は不明だ。



「デジタル不動産」は成立するか


Pirigrim XXIの共同創設者であるDaniil Girdea氏は以下のように語っている。


数は少数ですが、いくつかのヨーロッパの不動産会社が、すでに「デジタル・ランド」を取り扱い対象にしており、パートナー提携をしています。また、ヨーロッパに拠点を置く広告企業は、「Arcona」のエコシステムに組み込まれたゲームを活用して、広告キャンペーンを展開する予定です。

パートナー企業や協働中の企業の名前は契約上明かせないとのことだが、AR表示されたバーチャル空間を舞台にして土地の取引や広告展開するというコンセプトは、AR技術がもたらす可能性を拡張するものだ。


計画では、2020年には合計40,000平方キロメートルのデジタル・ランドが展開されるという。また、Piligrim XXIはこれまでにも、主にヨーロッパを中心として様々な観光地でARを用いたコンテンツを展開している。


ARを活用したロケーションベースのアトラクションを提供


Piligrim XXIはこれまでにも、ARを用いたロケーションベースのコンテンツを複数展開している。同社の最初のプロジェクトはラトビア共和国のLudza Castleにて行われ、同社の取り組みによって同地を訪れる観光客の数が30%増加し、滞在時間が8倍に延びたという。


同社はこのようなロケーションベースの「ARテーマパーク」をヨーロッパ中心に展開している。現在までにフランス、イタリア、ロシア、ラトビア、エストニア、ブルガリアでコンテンツ展開を行なっており、それぞれのコンテンツの様子は同社の公式サイトにて確認することができる。


バーチャル世界での行動は現実世界と限りなく近くなる?


VRで土地の購入が可能なソーシャルVR「Decentraland」



「Arcona」と非常によく似たシステムを搭載したサービスとして、ソーシャルVRプラットフォーム「Decentraland」を挙げることができる。


「Decentraland」では、ユーザーはバーチャル空間に土地を購入することが可能で、購入した土地ではオブジェクトやシアター、ゲームを設置したり、コンテンツを売買してバーチャル空間でマネタイズを可能にするサービスだ。「Arcona」のVR版と位置付けることができる。


「Decentraland」には運営企業が存在せず、仮想通貨などに用いられているブロックチェーン技術によって成り立っている。そのため、バーチャル空間で何を行うかや、ルールの取り決めなどはユーザー同士で行うことができる。


ユーザーは仮想通貨のイーサリアムを用いて、「Decentraland」内に土地を購入する。そして購入した土地は好きに使うことが可能で、オブジェクトを配置したりマネタイズをすることも可能だ。


運営企業が存在しないが故の自由度の高さが「Decentraland」の大きな特徴だ。様々なソーシャルVRプラットフォームの中でも特異な存在であり、今後の展開に注目したい。


参考:ブロックチェーンを活用した究極のユーザー主導VRソーシャルコンテンツ「Decentraland」とは何か?


参照元:Next Reality Arcona Could Cover the World with AR Objects


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情報提供元: VR Inside
記事名:「 AR表示されたバーチャル世界で土地やコンテンツを売買可能、「Arcona」が2017年末からサービスを開始