ARでマークや文字を書き込める


AR技術を使えば、ゲームのキャラクターがその場にいるような表現を行ったり、人物をデコレーションしたりといったエンターテイメントアプリを作ることができる。あるいは、スマートフォンをメジャー代わりにしてものの大きさや壁までの距離を測定したり、カメラを通して家具を部屋に配置したイメージを確認したりするツールを作ることもできる。


他にも、ARによって相手の視界に文字や矢印を書き込んで指示を伝えるような利用法も考えられている。ARグラスで視界を共有すれば、リアルタイムにベテランの指示を受けながら離れた現場で作業するようなことも可能になるだろう。


まだ本格的なARグラスは登場していないが、iPhoneを使って似たようなことができるのがVuforiaのChalkアプリだ。今年の6月に発表されたプロジェクト・チョークのスタンドアロンアプリがiOS11を搭載したARKit対応端末を対象にリリースされている。


ARで書き込み


Vuforia Chalkアプリでリモコンの使い方を説明する


電話やメールは便利なコミュニケーションツールだが、言葉や文字だけでは伝えにくいこともある。


コミュニケーションツール


例えば、細かな感情の動きを逐一説明するのは難しい。正しく伝えるためには双方に語彙・表現の力が必要になるし、対面していれば表情やボディランゲージから読み取れる情報を毎回説明するのは煩わしい。


この問題を解決するには表情を見ながら会話のできるテレビ電話や、ボディランゲージで感情表現のできるコミュニケーション用のVRアプリを使う方法がある。


しかし、物事の説明をする場合にはそれだけでは足りないかもしれない。パソコンの操作を教えたいときや、新しい家電製品の使い方を教えたいときがそうだ。図を描いて説明しても絵心が無いとかえって分かりにくくなってしまうこともあるし、都合よくホワイトボードががあるとも限らない。


Vuforia Chalkアプリは、こうしたときに効率的に説明することを可能にしてくれるツールだ。


ARを使った説明


Chalkアプリの機能はシンプルだ。テレビ電話のようにスマートフォンのカメラに映った映像を相手と共有し、相手はその映像に指やスタイラスを使って書き込みを行うことができる。


相手の見ているものと同じものを見ることができるので、説明する側は想像しながら指示する必要がなくなる。「一番右のボタン」「赤いやつ」と言う代わりに、操作してほしい場所を囲むなり、矢印で指すなりすれば良いのだ。


説明を受ける側も、聞き返す必要がない。相手がChalkアプリを使い慣れているかどうかにもよるが、これまで以上にスムーズに自分が行うべきことを把握できるだろう。もし疑問がある場合には、映像に書き込みをして質問することもできる。


「黄色のマークが出た」と伝えるよりも、どのアイコンのことを示しているのかを書き込みで伝えた方が正しく状況を理解してもらえる。誤解によって操作ミスをしてしまうこともなくなるはずだ。


書き込みに使える色は複数あるので、どちらが書いたものか分からなくなってしまうこともない。


Chalkアプリのリリース


複雑なマシンの操作も簡単に伝えられる


プロジェクト・チョークの発表時にはARアプリのデベロッパーがVuforia SDKを使うことでVuforiaに対応する既存のアプリケーション上でプロジェクト・チョークの機能を利用できるとされていたが、今回リリースされたアプリはチョーク機能のスタンドアロン版だ。


アプリ単独で相手と映像を共有し、書き込みが可能になる。


対応プラットフォーム


現在、Vuforia Chalkアプリを利用できるのはARKitに対応するiOS11を搭載した端末のみだ。ハードウェアで言えばiPhone6Sかそれよりも新しいiPhone、一部のiPadのみに対応する。


アプリは物体の検出や周辺環境のスキャンのためにVuforiaのFusionエンジンとAppleのARKitを利用しており、それが対応端末の制限となってしまっている。


Tom’s Guideによれば、ARKitに対応するiOS端末は全体の34%でしかない。しかし、Vuforia Fusion技術を利用できるiOS端末は94%と多い。ARKit対応端末に比べて機能は制限されるとしても、将来的には対応機種が広がる可能性もある。


他プラットフォームへの対応


具体的な計画が発表されているわけではないが、Vuforiaはアプリを利用できるプラットフォームを拡大したいと考えている。AndroidデバイスやMicrosoft HoloLensへの対応も考えられているようだ。


Androidでは新しくARプラットフォームARCoreの開発が進められているので、ARKitの代わりにこのプラットフォームが受け皿となるだろう。ARKitよりもさらに対応端末の台数は少ないとされているが、Google Tangoと異なり比較的多くの端末が対応可能なプラットフォームだ。


また、マイクロソフトのHoloLensやWindows Mixed Realityに対応する他社のヘッドセットでは、ヘッドセットに内蔵されたセンサーを使うインサイドアウトのトラッキングが可能だ。このセンサーを利用すれば、ARKit以上に正確に周辺のスキャンを行えるだろう。


新機能


Vuforia Chalkアプリは、現在のところ無料でApp Storeからダウンロードできる。将来的には、有料のプレミアム機能が追加されることも考えられる。


考えられるのは、指示の記録と再生が可能になるオプションだ。ARを使った従業員のトレーニングにこのアプリが利用されるようになるかもしれない。


 


参照元サイト:Vuforia Chalk

参照元サイト:Tom’s Guide


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情報提供元: VR Inside
記事名:「 ARで「書き込み」できるVuforia ChalkアプリがiOS11用に提供開始