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カタールに拠点を持つ衛星テレビ局アルジャジーラは、ミャンマーのムスリム系少数派ロヒンギャをテーマとしたVRドキュメンタリー「I Am Rohingya」を制作したことを発表した。
ミャンマー軍による弾圧など、ロヒンギャをめぐる人権問題は現在メディアを通じて各国から注目を集めており、日本でもニュースで目にしない日はないほどだ。
「I Am Rohingya」は問題の当事者であるロヒンギャの人々の生活を伝え、そしてその途中途中でロヒンギャ問題についての基礎的な知識についての解説をするという内容のムービーに仕上げられている。
「I Am Rohingya」は約8分間のショートムービー。アルジャジーラ・メディア・ネットワークが立ち上げたイマーシブコンテンツ制作スタジオ「ContrastVR」と共に制作した。制作チームには国際人権団体であるアムネスティ・インターナショナルも加わっている。
アルジャジーラが今後シリーズ化する予定である、オリジナルVRドキュメンタリーの第1弾として撮影された。
凄惨な民族浄化を受けているロヒンギャをテーマに、現在彼らがどのような事態を経験しているのかをレポートすることを目的に制作されている。
Contrast VRの編集リーダーを務めているZahra Rasool氏は「I Am Rohingya」について以下のように語っている。
「私たちはこのビデオを視聴することで、ロヒンギャ難民の窮状、そして彼らが置かれた状況の緊急性について、より多くの人に知ってもらえるように願っています。私たちは、このエスカレートしていく人道上の危機を鑑みて、いち早く映像を公開しようと決めました」
「I Am Rohingya」における主役は、ロヒンギャであるJamalida Begumさんとその2人の子供達だ。彼女たちは現在、他のロヒンギャとともにバングラディッシュの難民キャンプで生活を送っている。
Begumさんはキャンプへと逃れる過程で、住居も村の仲間も、夫までも亡くしたロヒンギャの一人だ。彼女はミャンマー軍から受けた銃撃や、その途中で父親がどのようになくなったかも詳細に語っている。
「I Am Rohingya」は苦難を生きる彼女が自らの状況を、どの様に感じ、どのようなことを望んでいるのかを、コンパクトながらも十分に伝える内容に仕上がっていると言えるだろう。
「I Am Rohingya」のようなイマーシブ・ジャーナリズムの強みは、視聴者がVRコンテンツへの没入感を覚えることで、映像の内容に対してより共感しやすくなるという点だ。
今回のように凄惨な内容を伝える場合、視聴者はBegumに通常の2Dドキュメンタリーよりも感情移入をしやすくなり、ロヒンギャ問題に関心を持ちやすくなることが予想される。
もちろんイマーシブジャーナリズムは「I Am Rohingya」の他にも多数登場している。
以下ではいくつかの事例を紹介していこう。
通信社SMART News Agencyが提供する「Nobel’s Nightmare」はシリア内戦で崩壊した建築物や、怯え逃げ惑う人たちの様子を記録したドキュメンタリーだ。
映像はYouTubeに投稿されており誰でも閲覧可能となっている。シリアの惨状は日本でもニュースで伝えられているが、イマーシブコンテンツとして体験することで内戦の悲惨さをより直感的に理解しやすくなるという効果が期待できるのではないだろうか。
「Nobel’s Nightmare」と同じくシリア内戦をテーマとしているものの、「Holograms from Syria」はHoloLensを活用して「日常生活の中に戦争を再現する」という実験的なMRコンテンツとなっている。
制作者はパキスタン出身のAsad J. Malik氏。同氏はアメリカの多くの大学生が戦争の惨状を実際に目の当たりにしたことがないことに気づき、日常の多くの部分に戦争が潜んでいるシリアの状況を体験してもらおうとして開発したという。
体験者にとっては大学のソファーなどに子供の遺体が横たわっている様子がショックなものに感じられたようで、しばらくは「Holograms from Syria」を体験した場所に近づけないと語る学生もいたという。
参考URL:
アルジャジーラ
http://www.aljazeera.com/
ContrastVR
http://contrastvr.com/
VRSCOUT
https://vrscout.com/news/al-jazeera-vr-documentary-i-am-rohingya/
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