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2016年に発表されたこのプロジェクトには、VR関連メディアから度々強い関心が寄せられており、詳細なリリース日などの情報公開が待望されていた。
しかしIntelのパートナー企業がヘッドセット開発に関心を失ったことなどが原因で、プロジェクトの続行を断念せざるを得なくなってしまったようだ。
IntelがAlloyに関するアナウンスを初めておこなったのは、2016年8月の開発者会議だった。
当時の発表によると、Alloyはスマートフォンを使わないモバイルタイプのヘッドセットとして構想されており、ハイエンドPC等と接続せずともユーザーは高クオリティのVR体験を味わう事が可能だとされていた。
また付属の専用コントローラーと合わせて使用する。ヘッドセット内外にはトラッキング機能と、6DoFコントロール機能が搭載される予定だった。描画処理性能は「ノートPC」と同等クラスとされていたが、それでもモバイルタイプのヘッドセットとしては高性能端末として仕上がるはずだった。
またAlloyヘッドセット内蔵センサーによる「ハンドジェスチャー・コントロール」も大きな特徴だとされていた。
動画を見ると分かる通り、ヘッドセット装着者はコントローラーなどを一切持っていないにもかかわらず、ディスプレイには現実空間における手や腕の動きがリアルに補足され、反映されている。既存のヘッドセットには無い機能だ。
こうした数々の特徴を備えたAlloyを、Intelは「2017年度Q4」に発売予定だとアナウンスしており、関係者の間では発売時期に向けて製品への期待感が高まっていた。
それにもかかわらず「Project Alloy」を放棄せざるを得なくなったのはなぜなのか。
IntelはRoad to VRに宛てた文中では明確な形で答えを示しておらず、「パートナー企業がヘッドセット製造に興味を失ってしまったからだ」と記述した程度に留まっている。また「パートナー」が具体的に誰なのかも明らかにはされていない。
しかしRoad to VRはその要因について憶測を立てることは可能だとして、その内のいくつかを紹介している。
先ず考えられるのは、Alloyの設計段階であまりに製造コストがかさむことが判明し、コンシューマ用ヘッドセットとして常識的な範囲での価格帯に収めることができなくなってしまった可能性だ。
Alloyは、VRヘッドセット用PCが本来代替するはずの処理能力を代替するヘッドセットとして設計されていたが、これは言ってしまえば、要するにノートPCをヘッドセット内に詰め込むのとほぼ同義だ。
さらにモバイル端末であるがゆえに、安価でありながら長時間持つようなバッテリー開発も求められていたはずだ。
これらの開発が進行する中で、当初のコンセプト通りにAlloyを完成させることが非現実的だと判断されたのかもしれない。
またIntelが提携していたパートナーが、Alloyの発売予定時期である2017年Q4に他社から発売予定のWindows対応型VRヘッドセットへと、投資資金を振り分けてしまった可能性もある。
たとえば主要なPCメーカーであるAcerやDell、HP、Lenovoはいずれも2017年Q4でのVRヘッドセット発売を予定、もしくは既に発売済みだ。
これらの強力な競合者へと、パートナーが関心を移してしまった可能性もあるのだ。
しかしIntelはプロジェクトを放棄したが、AR・VR関連技術開発への関心自体は失っていない様子だ。
たとえば3D深度計測センサーである「Intel RealSense」や、ワイヤレスVR体験を可能にする「WiGig」の開発と市場展開は継続しておこなっていくと、Road to VRに寄せた回答文の中で述べている。
Alloy開発に用いられた技術も、いずれは何らかのかたちで日の目を見ることがあるかも知れない。
参考URL:
RoadtoVR
https://www.roadtovr.com/intel-scraps-plans-to-launch-project-alloy-reference-headset-pursuing-other-vrar-rd/
VRfocus
https://www.vrfocus.com/2017/09/intel-cancels-all-in-one-vr-headset/
https://www.vrfocus.com/2016/08/intel-announces-all-in-one-vr-headset-during-intel-developer-forum/
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