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「VRの未来を創るビジネスメディア」を標榜する当メディアだからこそ、あえてそうした闇の部分にもスポットライトを当て、取り上げることでよりよいVRの使い方を模索していきたい。
だからこそ、この記事ではそうしたVRの負の側面について取り上げていく。
予め断っておきたいのは、犯罪を含めて「悪用される可能性」というのは、あらゆる技術、あらゆる道具に存在している。
たとえば、「電話」は離れたところと通話できるというメリットを持った便利な道具だ。
その一方、相手に姿を見せず会話ができることで、「オレオレ詐欺」などの犯罪に使われてしまうというデメリットも持っている。
結局のところ、フツーに使って便利なものは、何に使っても便利、犯罪に使う時だけ不便…というわけにはいかないということだ。
だからこそ、利用者の側が意識して、犯罪行為に引っかかったり加担しないよう、リテラシーを高める必要がある。
VRの持っている最大のメリットは、架空の出来事を現実のように感じさせる「没入感」だ。
この「没入感」をプラスの方に作用させることで、PTSDを克服するためのカウンセリングコンテンツなどの研究が進んでいる。
一方、逆に考えれば、“あえて”PTSDを刺激するように使うことで、意図的に人の精神の弱い分を刺激することも可能だ。
また、VRが教育プログラムに活かされるという事例も多くなってきたが、そもそも教育とはある知識なりある価値観なりを、他人に植え付けるということ。
このため、効率的に教育できるということは、効率的に洗脳できるという危険性もはらんでいる。
したがって、VRコンテンツを体験する前に、そのコンテンツがどんな内容なのか?
VRコンテンツ鑑賞を進めてくる人物なり組織などは“本当に”信用に足る存在なのか?を確認する必要があるだろう。
また、信頼に足る存在かどうか確認するという点は、VRコンテンツを端末にインストールするという行為についてもいえる。
VRコンテンツも、WEBサイトやスマホアプリと同様、なんらかの目的を持った人間の手によって作られたプログラムだ。
WEBサイトにフィッシングサイトが存在していたり、スマホアプリに個人情報を抜くようなタイプの悪質アプリがあるのと同様、VRコンテンツもまた、作ろうと思えばいくらでも悪質VRコンテンツを作ることが可能だ。
Playstation StoreやSteamなどの大手配信サービスが配信しているものは、一定の審査の上配信されているため基本的に信頼できるが、インターネットから直接ダウンロードするようなタイプのモノは必ずしも信頼できるとは限らない。
VRコンテンツの配信元、開発元は本当に信頼できるのか、しっかり確認するクセをつけた方がいいだろう。
また、自宅でVRデバイスを使用する際には問題にならないが、外でVRデバイスを使用する際には、置き引き、痴漢行為などの行為に注意しよう。
VRデバイスを装着しした際は、ヘッドマウントディスプレイとヘッドフォンによって「視覚」、「聴覚」が塞がれてしまう。
さらにVR空間は、本当の現実ではないかと錯覚するレベルに協力で、人によってはちょっと触られたぐらいでは、現実世界で触られたのか、仮想空間の映像を錯覚しているだけなのわからないほど。
このため、周囲に誰もいない状況であれば、VR体験者の荷物を置き引きすることや、体に触れようとすることは容易だ。
とはいえ、VRアトラクションなどでは係員がついていて、置き引きや痴漢行為などができないように管理されている。
ただ、今後VRが当たり前の存在として普及していく中で、体験ブースなどによっては係員がいない…という万が一のケースがないとは限らない。
体験する際にはそういうリスクがあるのだということは、しっかり認識しておいた方がいいだろう。
現在はVRといえばVR動画やVRゲームが主流だが、いくつかVRを使ったSNSというのもリリースされ始めている。
こうしたVR-SNSでは、現在のSNSと同様、アバターを使って仮想世界の存在として、他の体験者とコミュニケーションすることが可能だ。
このため、既存のSNSと同様の犯罪が起こせると考えてよい。
ただし、VRの場合は既存のSNSと異なり、現実に同じ仮想空間を共有し、目の前で相手が話しているかのように感じることができる。
それも、自分の本当の表情を全く見せずに。
なので、悪意を持って人をだまそうとする場合、より容易にだますことが可能だ。
既存のSNS以上に、素性のしれない人間の口車にはカンタンに乗らないだとか、個人情報にあたる情報は公開しない…といった注意をした方がいいといえる。
よりよいVRの未来のために警鐘を鳴らす意味で、あえてVRのネガティブな面について触れてきた。
しかし、繰り返しになるが、どんな道具もどんな技術も、基本的には使い方次第で強力なメリットを生み出す。
犯罪に使われる人間が出てくるかもしれない一方で、VRは既に裁判や犯罪者の社会復帰にも使われているのだ。
James GoodnowとMarc Lamberの二人が主導する弁護士集団、Lamber Goodnow法律チームは裁判にVRを活用している。
VRであれば、事件・事故の状況、被告人や被害者といった事件・事故の当事者の視点を再現することができる。
このため、これまでの証拠品の提示方法と比べて、より事件の本質に迫ることができるというわけだ。
「Virtual Rehab」プログラムは、VRを活用して出所後の日常生活をバーチャル体験したり、職業訓練を行うことで、受刑者の社会復帰をサポートするというプログラム。
VRの強い「没入感」を受刑者の意識改善に用い、再犯予防に結びつけようという試みだ。
プレイステーションVR(PSVR)は定期的に店舗へと供給されているものの、まだまだ品不足が続いている。
日本ではPSVRがVR市場をけん引しているため、PSVRが伸びている以上は、今後もVR市場の発展は確実といっていいだろう。
そして、市場が大きくなって消費者が増えれば、犯罪を犯す人間にとってのリターンが大きくなるため、犯罪発生率は上がる。
このため、現時点からVRのメリットとリスクについて押さえておき、被害に遭わないよう活用していくということが重要だろう。
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