Qualcommは、次世代画像処理技術である拡張版「Qualcomm Spectra Module Program」を発表した。



モバイル端末によるSLAMアルゴリズムを実現するQualcomm


同社は、同社が製造するモバイル端末向けハイエンドCPUシリーズ「Snapdragon」で実行可能な次世代画像処理技術を発表した。


発表された技術は、同社が昨年から開発している画像処理技術である「Qualcomm Spectra Module Program」を拡張したもの、という位置づけがなされている。同技術の中核をなすのは、ISP(Image Signal Processor:画像信号プロセッサ)とよばれるプロセッサである。同プロセッサがSnapdragonにおいて実行されることによって、高精細な画像処理、画像認識、およびカメラによるトラッキングが可能となる。


以上のようなプロセッサをモバイル機器に実装することで、何が可能となるのか。この疑問については、同社のプレスリリースページに記載された以下の記述をあたるとわかる。


省電力かつハイ・パフォーマンスなモーショントラッキングを可能とするQualcomm Spectra Module Programの新型ISPを使うことで、光学的SLAMアルゴリズム(Simultaneous Localization And Mapping:同時位置測定マッピング)を追加することができます。


SLAMアルゴリズムは、このアルゴリズムの実行が不可欠な拡張されたXR体験をサポートするために設計されたものです。


以上の記述にあるSLAMアルゴリズムが実現する「拡張されたXR体験」とは、簡単に言うと、スマホカメラをトラッキングセンサーとして活用するVR・AR体験のことを指している。


スマホカメラをトラッキングセンサーに活用したAR体験とは、ちょうどGoogleが開発したARテクノロジー「Tango」が実現するような体験に相当する。本記事のトップ画像は、こうしたスマホカメラによって空間認識したAR体験を表している。同画像では、タブレット端末のカメラをキーボードを演奏しているヒトの手に向けている。そして、手に向けられたカメラに内蔵されたトラッキングセンサーが手の位置情報を取得し、その位置情報からバーチャルな手を合成しているのがわかる。その合成された手は、画像の右下に表示されている。


スマホカメラをトラッキングセンサーとして活用したVR体験とは、inside-outなトラッキングが実現したVR体験に相当する。「inside-outなトラッキング」とは、VRヘッドセット本体に内蔵されたトラッキングセンサーを活用したトラッキングのことを意味する。ちなみにVIVEとOculusRiftのようにVRヘッドセットのほかにトラッキングセンサーを設置するのは、「outside-inなトラッキング」と呼ばれる。


「inside-outなトラッキングによるVR体験」とは、あまり聞くことがない体験である。この体験に相当するのは、本メディアが過去に紹介したuSensが公開したデモ動画だ。このデモ動画には、SLAMアルゴリズムが使われているという説明がされた。



以上のようなSLAMアルゴリズムを実行できる次世代画像処理技術を開発することによって、Qualcomm社が目指しているのは何か?それは、VR体験とAR体験の両方に対応したスタンドアロン型VRヘッドセットを開発することになるのではなかろうか。


実際、同社はHTC社と技術提携してスタンドアロン型VRヘッドセットを開発することを発表しているのだ。


QualcommとHTCによる「Vive Standalone」



本メディア2017年7月28日付の記事では、HTCがスタンドアロン型VRヘッドセット「Vive Standalone」を開発していることを報じた。


同VRヘッドセットはHTCとクアルコムが提携して開発したもので、ハイエンドプロセッサSnapdragon 835を搭載している。そして、位置トラッキングにも対応しており、ハイエンド機種である本デバイスは、HTCのVRコンテンツ配信プラットフォーム「Viveport」上のアプリを起動することもできる。


同VRヘッドセットのトラッキングを実現するために、「WorldSense」というGoogleが開発したインサイド・アウトのトラッキングシステムを搭載されている。この「WorldSense」は機械学習やコンピュータービジョン、SLAM技術などを融合したものであり、精度の高い位置トラッキングを可能にする、と説明されている。


本記事で紹介したQaulcomm社の次世代画像処理技術は、以上の「WorldSense」の実行に最適化されたモバイルプロセッサに該当する、という推測が成り立つのではなかろうか。


以上の推論が正しければ、「Vive Standalone」は空間認識が可能なVR・ARの両方に対応したデバイスになるかも知れない。


次世代画像処理技術である拡張版「Qualcomm Spectra Module Program」を発表したQualcommのプレスリリースページ

https://www.qualcomm.com/news/releases/2017/08/15/qualcomm-first-announce-depth-sensing-camera-technology-designed-android


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情報提供元: VR Inside
記事名:「 Qaulcomm、次世代画像処理技術を発表。VR・ARに対応したスタンドアロン型VRヘッドセット開発への布石か