ゲームや動画といったエンターテインメント以外にも、様々な場で使われはじめているVR/AR技術。


日本でも既に教育や医療、不動産といった現場には導入が進んでいる。


一方、日本以外に目を向けると、警察の犯罪捜査や法廷の証拠提示といった、「司法」においても導入が検討されはじめているという。


この記事ではそんな、警察や司法の場で検討が進むVR/ARについてご紹介したい。


 


情報伝達システムとしてVR/ARを見ると、ビジネスソリューションとしての可能性がわかる




単にVRを「仮想世界を現実のように認識できる技術」としてとらえたり、ARを「現実の世界に情報をオーバーラップさせるもの」としてとらえると、「なんで警察や司法機関がVR/ARを導入する必要があるんだろう…」と疑問に思ってしまう。


しかし、VR/ARをまとめて新たな情報伝達システムと考えると、なぜ警察・司法だけでなく様々な分野で導入が進むのか理解できる


情報伝達システムとしてとらえるというのは、インターネット、スマートフォンなどと同列で考えるということ。


インターネットやスマートフォンは今やたいていのビジネスジャンルにおいて、業務に取り入れられている。


テキスト・画像・音声といった多くの要素を複合した情報を、早く、正確に送受信できるからだ。


そして、VR/ARはこれまでの技術では実現できなかった、「臨場感」「360°の周辺情報」までも情報に含めて、さらにスピーディーに送受信できる


このため、さまざまなビジネスにおいて、ソリューションとしての価値を持っているのだ。


 


警察官と専門家を連携させる、オランダの警察のARシステム



VR/ARによって「臨場感」「360°の周辺情報」をよりスピーディーに送受信できると、どんな恩恵があるか?


これを端的に示しているのが、オランダの警察が導入した最新ARシステムだ。


このシステムは、現場で捜査を行っている警察官がスマートグラスで撮影した映像を、専門家に送信し、専門家のチェックをリアルタイムにあおぐことが可能。


現場の警察官は捜査の専門家であっても、医学や薬学などの専門家ではない。


このため、捜査の際に専門家の支持をあおぐ必要がある場合、これまでであれば証拠品を持ち帰って専門家に鑑定してもらったり、改めて専門家に同行してもらうという必要があった。


しかしこのシステムであれば、専門家の見識が必要なタイミングで即座に専門家の支持を仰ぐことが可能


捜査中に発生するタイムラグを抑え、捜査のさらなる迅速化・効率化が可能になる。


 


AIで犯罪を予測するシステム「PredPol」



続いては「PredPol」という犯罪予測システムについてご紹介。


「PredPol」はAI(人工知能)によって、車上荒らしや強盗、暴行といった事件が、これからどこで発生するか予測し、地図上に表示するというシステム


警官はパトロール時にこの情報をパトカーに詰まれたPCや、iPadなどで確認してパトロールを行う。


現実の風景に情報がオーバーラップするわけではないものの、犯罪を予知するという人間の感覚を拡張する意味では、これもARのひとつといえるだろう。


このシステムによって犯罪発生率は2年間で17%減少したという。


いずれは「PredPol」の情報が、Googleグラスのようなデバイスで、現実の風景にオーバーラップさせAR表示される日がくるかもしれない…。


 


より事件の本質に近づくために!裁判で活用されるVR



James GoodnowとMarc Lamberの二人が主導する弁護士集団、Lamber Goodnow法律チームは裁判にVRを活用している。


VRを活用しているのは、裁判の証拠提示


これまで証言や物的証拠、写真や映像といった形で提示されきた証拠を、VRで提示しようというわけだ。


VRによって、事件・事故の状況、被告人や被害者といった事件・事故の当事者の視点を再現することができ、それによって事件の真実に近づける…という考えで行っているという。


実際、人間は完璧でないからこそ事件や事故を犯してしまうし、同様に完璧でないからこそ、どんなに万全を期したとしても100%完璧な判決などあり得ない。


だからこそ、人の人生を左右する裁判のような場では、少しでも完璧に近づくため、こうした活用が進むのは望ましいことといえるだろう。


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裁判での証拠提出にVRを利用!事故や事件の状況を分かりやすく提供


 


日常復帰をサポートし再犯を予防する「Virtual Rehab 」



「Virtual Rehab」は、犯罪によって囚人となった人に対し、VRによって教育や職業訓練を行うことで社会復帰をサポートするというシステム。


一度犯罪によって囚人となった人に対して、たとえ刑期を終えた後だとしても、社会の風当たりは冷たい。


これを「自業自得」と思う人は少なくないだろうが、刑期を終えたということはまさにその「自分の業」を果たしたということ


実際、犯罪者が社会復帰しやすい環境では、再犯率が下がるといわれている。


ただ、理屈の上でそうだからといって、被害者感情や犯罪者に関する不安感もある。


なので、VRによって社会復帰しやすくなるというのは犯罪者のみならず社会にとってもメリットが大きそうだ。


 


社会システムを変えていくVR/AR


筆者が高校生のころ、最も親しかった友人は他の高校に通っていたが、放課後は毎日のようにゲーセンで格ゲーをプレイしていた。


現在なら「それが何?」というレベルの話だが、当時はスマートフォンはもちろん、ガラケーやPHSすら普及しておらず、流行中のポケベルも持っていなかった


そんな状態でどうやって遊ぶ約束をしていたのか、今となっては思い出せない。


個人のちっぽけな例だが、それだけ今と昔では技術によって社会のシステムが変わっているのだ。


VR/ARもまた、警察の捜査のあり方、司法の判断のし方など、多くのものを変えていきそうだ。


それによってこの社会がよりよくなっていくことを願いたい。


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情報提供元: VR Inside
記事名:「 VR/ARがとうとう犯罪捜査に導入!?進化する警察・司法