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同メディアが報じたAmazonの特許は、簡単に言えば「手ぶらで使える家庭用ARプロジェクター」だ。
2016年7月5日付で特許を取得した同社の特許文書の要約文には、以下のような記述が掲載されている。
任意の場面において様々な表面に画像を投影することによって、AR環境を生成するARシステムである。
プロジェクション・アクセサリー・ディスプレイ・デバイス(projection accessory display device:画像を投影する装置。略してPADD)は、既存の文字を投影し、PADDが投影する画像の生成および管理を簡略化するように構成されている。
PADDには、AR環境内においてユーザーから入力を受けるデバイスも実装されている。
要約文に記述されているPADDの外見として、同特許文書には本記事トップ画像が掲載されている。この画像によると、PADDには画像を投影するプロジェクターと、AR環境を制御するセンサー内蔵のカメラが実装されている。
また特許文書には、PADDの具体的な利用シーンとして室内のテーブル上に画像を投影している模式図も掲載されている(下の画像参照)。
以上の記述から、Amazonが特許を取得したARシステムとは、プロジェクターを使ってAR画像を表示・操作するもの、と考えられる。こうしたARシステムは、すでに類似のものが開発中であり、本メディアでも例えば「Desktopgraphy」を紹介した。
以上の特許を報じたVRFocusは、AmazonはARプロジェクターを使って同社運営のオンラインストアの主力製品である電子書籍をはじめとして、動画、ゲームを提供することを考えているのではないか、と指摘している。
プロジェクターを活用したARシステムは、屋内での利用に限るのであれば、ARバイザー等のデバイスを装着することなくAR体験ができるという大きなメリットがある。こうした「ARプロジェクター」は、既存のPCを代替するポテンシャルを秘めているので、家庭に普及するARデバイスの有力候補のひとつである。
以上の特許のほかにも、AmazonとVR・ARに関して、本メディアにはすでに報じた記事が多数ある。
本メディア2017年3月28日の記事では、同社がVR・ARを活用したリアル店舗の出店を計画中であることを報じた。
計画中のリアル店舗は、主に家電と家具を販売し、ストア・コンセプトはアップル・ストアのようなものを構想している。つまり、アップルストアのようにAmazonの大きなロゴが入り、スタッフはひと目でわかるユニフォームを着ることになるだろう。
さらにストア内でVR・ARを活用したディスプレイも計画している。詳細は不明だが、例えば家具を購入する時に、ARテクノロジーを使って部屋に置いた時のイメージを見てみたり、VRを活用して家電の使用をシミュレーションしてみる、といったことが想定される。
同社は、VRコンテンツ開発に対応したゲームエンジン「Lumberyard」も提供している。
同ゲームエンジンはCryTecのCryEngineをベースとしており、ソースコードを含めて全て無料で提供されている。オープンソースではないので改変したソースコードの再配布や販売はできないが、独自のカスタマイズは許されている。
同ゲームエンジンの強みは、AmazonのAWSで提供される他の機能との連携することである。それゆえ、マルチプレイヤーゲームの制作に適しているとされる。また、今年のGDCでは同エンジンのアンチエイリアスと透過の処理が紹介された。アンチエイリアスおよび透過処理とは、わかりやすく言えば、オブジェクトをより自然に描画するための処理だ。同ゲームエンジンの描画処理のレベルは、上に引用したデモ動画を見るとわかる。
なお、同ゲームエンジンは、HTC Vive、OculusRift、OSVR用のコンテンツ作成に対応している。
今のところ、AmazonはVR・ARデバイスをリリースしていない。しかし、世界最大のコンテンツ・プラットフォーマーである同社が、次世代のデジタル・インタラクションを担うことが期待されるVR・ARに注目し、ひそかにVR・ARデバイスを開発していても驚くには値しない。もしかしたら、Amazon echoに話しかけるとARプロジェクターが起動する、という未来が到来するかも知れない。
AmazonのARの特許を紹介したVRFocusの記事
https://www.vrfocus.com/2017/07/amazon-patents-technology-for-at-home-augmented-reality/
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