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同企業は受刑者の社会復帰を支援するためのテクノロジー、教育システム開発を手掛けるアメリカの企業。この分野ではリーディングカンパニーの1つに数えられている。
VR体験を通じて受刑者の更正を目指すプログラムは、既にVirtual Rehabが試験的に運用を開始している。
こうした取り組みが今後増加していけば、アメリカにおいてはVR体験を通じた社会復帰プログラムの設計が一般化していく……かもしれない。
VRヘッドセットと、学習管理システム、そして教育コンテンツによって構成されたシステムで、監獄や刑務所内にいる受刑者にリアルな実社会経験を積ませることを目的としている。
しかしVRをプログラム内でどのように活用しているのか、そもそもプログラム自体がどのような内容なのか。GTLは具体的内容をほとんど明らかにしていないので、その効果の程を推測することは難しい。
しかし例えば関係者のコメントはその内容を知る上で若干の手がかりをもたらしてくれるかもしれない。
GTL教育サービス上級副社長であるTurner Nashe博士は次のように語る。
「私はこのテクノロジーにおける最も重要な使い方とは、受刑者にとっては達成が困難な状況、つまり自分自身(の意志や努力)によって働かなければならないという状況を、セーフティーネットの中にいる間にシミュレーションしてみるということだと信じています」
さらに
「怒りを抱える受刑者は、感情を上手く取り扱わなければならない状況に身を置かれるでしょう。もし受刑者の怒りが制御不能になったとしても、状況を管理可能な諸種コントロールが存在しています。受刑者が自身の反応をコントロールできるようになるまで、彼らの抱える課題に継続的に取り組むことになるでしょう」
とも語っている。
どうやらGTLの提供するVR更正プログラムを経ることで、受刑者は実社会での働き方や、自身の感情を場面に応じて適切に制御する術を学ぶことが出来るようだ。
この言葉を信じるならばプログラムの適用によって、出所後に「カッとなって」再犯を犯し、出戻ってくる受刑者を減らすことが可能となるかもしれない。そしてその自信が同氏にはあるようだ。
また、GTLは同社のVRコンテンツの使用用途としていくつかの例を列挙している。
■没入型の、魅力的な教育コンテンツを提供する。
■孤独に監禁されている受刑者に対して、その孤立感を緩和させることに役立たせる。
■「コントロール嫌悪症」、あるいはPTSDといったような条件を抱える受刑者をサポートする。
■配管修理や大工といった職業のスキルを教える。
■世界中に点在する場所を仮想的に旅行する。
■実生活で遭遇するいくつかのシナリオ(例えば家族ゲンカといったような)を安全な環境下でシミュレーションすることが出来る。
■退屈感を紛らわし、またゲームやほかのエンターテイメントの選択肢を提供することによって安全な施設環境を促進する。
やはり詳細は記載されていないため、いずれの具体的内容は分からない。
しかし「ゲーム」についての記載がある点には興味を惹かれる。ゲームを通じて更正を目指す……というではなく、どうやら目的は退屈感を紛らわすことにあるようだ。
刑務所内でのエンターテイメント提供役としてもVRが役立てられるのかも知れない。
再犯率の低下にVR体験がどれほど役に立つのか、実際に試してみるまでは全くの未知数だ。
しかし、VR体験がユーザーの現実の生活に心理的影響力を及ぼすことなどは既に幾らかの実験例によって明らかにされている。
たとえばVR空間内でプレイしていたアバターの行動や性格といった特性は、ゲームを終了した後もユーザーの現実世界での行動に影響力を及ぼすことが知られている。
ただし、そもそも受刑者の再犯率の高さは社会復帰後のセーフティーネットの希薄さに起因する側面もある。
もちろん受刑者が心から反省し、罪を償い、きっちりと更正プログラムを修了することは大前提だが、社会の側でも受刑者を受け入れるシステムが構築されていかなければならないだろう。
参照URL:
GTL:”GTL Releases Virtual Reality Platform for Corrections”
http://www.gtl.net/news/gtl-releases-virtual-reality-platform-for-corrections-industry/
VR focus
https://www.vrfocus.com/2017/07/vr-brings-real-world-experiences-to-prison-inmates/
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