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同メディアによると、アメリカ海軍の兵器開発を担当する部署であるMR戦闘域活用ラボ( Battlespace Exploitation of Mixed Reality Lab:略してBEMR)は、ARヘルメットを活用した艦砲射撃支援システム「GunnAR」を開発し、同システムをテストした洋上軍事演習動画を公開した。
同システムの基本的な仕組みは、射撃連絡員がタブレット端末を使って入力した艦砲射撃指令の内容が、砲兵が装備しているARヘルメットに表示される、というもの。ARヘルメットには、射撃指令から算出された射撃対象に対する照準も表示される。
従来の艦砲射撃では、射撃連絡員からの指令が砲兵に無線で伝えられていた。しかしこの方法では、指令が射撃音によってかき消されることがあった。射撃指令を視覚的に伝達できる同システムは、従来の指令系統における欠点を見事に克服した。
同システムの開発には、工事現場で実用化されているARヘルメットを開発するメーカーDAQRIの商品を流用した。こうした民生品の流用によって、同システムの開発コストは大幅に削減することができたのだ。
実のところ、民間で開発されたVR・ARテクノロジーが軍用システムに流用されるのは、最近のトレンドともなっている。このトレンドに関して、かつてBEMRを率いていたエンジニアのArne Odland氏は以下のようにコメントしている。
数十年前に使われていた軍のVRシステムは、軍事シミュレーション・システムとして使われていました。このシステムによって、リアリティのある軍事訓練ができたのですが、とてもなく高価で危険でもありました。
しかし、ゲームとエンターテインメント分野においてVR・ARが発展したことによって、以前のような軍事VR・ARシステムを最小のハードウェアで組み立てることができるようになって、コストをかつての100分の1にすることができたのです。
GunnARに活用されたARヘルメットを開発しているDAQRIについては、本メディアで以前に報じていたことがある。
DAQRIが開発したスマートヘルメットには、工業生産の現場、特に建設・建築の現場で使用することを想定したAR機能が搭載されている。
このスマートヘルメットを使えば、建物の構造情報モデルを「装着可能な形で」工事の現場に持ち込むことが可能となる。ARによって設計の空間的な理解を容易にし、設計上の誤りの早期発見を助けてくれる。平面図よりも直感的に理解できる情報は、迅速な判断を可能とする。
こうした性質が上手く発揮されれば、建築に当たってのコスト削減や作業効率の向上が期待されるのだ。
VR・ARの軍事利用の事例に関しても、本メディアではたびたび報じている。
ノルウェー軍がVR戦車システムでは「OculusRift」を使用することで、戦車周囲の視界をVRで体感することができる。
現代の戦車は様々なセンサーと戦車同士のネットワーク連携システムによって周囲の情報を獲得している。しかし、運転のための視界の狭さは克服できていない。
この視界の狭さをVRによって克服しようという試みだ。VRを使うことで戦車の周囲360°をまるまる自分の視界として認識できるようになる。
アメリカ軍の「Dismounted Soldier Training System」とは、VRヘッドセットを用いることで、トレーニングにおいて実際の作戦に近い体験をさせるというもの。
エンターテインメント分野におけるVR-FPSゲームと近いものといえるが、兵士の一挙手一投足が極めて正確にトラッキングされるとのことで、当然のことだが軍事訓練を想定した仕様になっている。
ウクライナ軍が導入を検討しているARヘルメットは、HoloLensをヘルメットに実装するような設計となっている。
ARヘルメットを装備した兵士はHoloLensを通して戦車や車両から周囲360度の光学/サーマル情報を取得することができる。またカメラは戦車に取り付けることで、車両にいながら周囲の状況を把握することが可能になる、とのこと。
以上のようなVR・ARの軍事利用は、一過性のものではなく不可避的なものと考えるべきであろう。
AR艦砲射撃支援システム「GunnAR」を紹介したRoadtoVRの記事
https://www.roadtovr.com/gunnar-live-fire-test-shows-ar-can-revolutionize-decades-old-combat-procedures/
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